FAMILY

運動の秋


 今日は学校でうんどう会がありました。
 お母さんは朝はやくからおべんとうを作って、とてもはりきっていたのですが、ぼくはとてもくらいきもちでいました。
 なぜなら、ぜんこうせいと1年から6年までのほごしゃまで、みんなが学校というかぎられたスペースの中でみっしゅうしてしまうからです。
 そんなおりのような場所にぼくのお母さん。
 けもののおりにいれられたのと同じです。
 さらにぼくのおうえんに、兄までくるのだとはりきっていました。
 ぼくはどうしてもがまんできず、お母さんに来なくていいよ、と言いました。
 すると、兄は、
「隆ちゃんは僕のことが嫌いなんだ!」
 とぼくをだきしめて大泣きするし、お母さんは本気のかおでおこってしまいました。
「家族なら行くのは当然じゃない。何でそんなに嫌がるの?!」
 とぼくのわがままをしかりました。
 お母さんはむかし、おじいちゃんやおばあちゃんに来てもらえなくて、とてもさびしい思いをしたので、自分の子どもにはそんな思いをさせたくなかったのだそうです。
 だからぼくのうんどう会には、ぼくがみんなにお母さんをじまんできるくらいにはりきっていたのです。
 ぼくはこまってしまいました。
 だってぼくがお母さんたちが来るのをいやがっていたのは、お母さんたちのかんがえとまったくの正反対。じまんすぎるからなのです。
 泣く兄と、おこるお母さんにはさまれてこまっているぼくを助けてくれたのはお父さんでした。
「…拓海、俺には隆介の気持ちが良く分かる!こいつはお前が来るのが嫌なんじゃない。お前が人のたくさんいるところに出かけて、変な奴らに目を付けられないかが心配なんだ!」
 まったくもって、お父さんの言うとおりです。
 けどてんねんなお母さんは、お父さんのことばに、
「そんなことあるわけないじゃないですか!涼介さんまで変なこと言って、ごまかさないで下さい!」
 とぼくといっしょにおこられてしまいました。
 てんねんなお母さんはかわいいのですが、こういったじかくのないところはこまったものです。
 でもぼくがお母さんに泣きながら、
「だって、お母さんもはるみちゃんもきれいなんだもん。きっとみんな、お母さんたちを見たらすぐに好きになっちゃうよ。ぼく、お母さんやはるみちゃんがとられちゃうの、いやだもん」
 と子供のふりでなきまねをしたら、お母さんのいかりはおさまり、兄のなみだはとまりました。
「そんなわけないじゃない。隆ちゃん、心配しすぎだよ?」
 兄がそういうので、ぼくはまだまだ子供のふりで、
「そんなことないもん。お母さんたちは世界一かわいいの。だからだれにも見せたくないの」
 と、後で自分でしっしょうしてしまいそうなくらいの、あまえたえんぎで言ってみました。
 ぼくのえんぎに、お母さんたちはすっかりだまされて、いかりをおさめてくれたのはいいのですが、けっきょくうんどう会にはくることになってしまいました。
 ぼくがなぜこんなにうんどう会に来ることをいやがっていたのかと言うと、じつは今日、お父さんは来れないからなのです。
 いつもならお母さんをどくせんできるチャンスだとよろこべるのですが、おおぜいの人の中でお母さんたちを守るには、悲しいことにぼくだけでは力ぶそくなのです。
 お父さんもしんぱいそうにしていましたが、じょうきょうは変わらず、さいごのしゅだんとしてお父さんは、
「無いよりましだろう…」
 と、けいすけおじさんをつれていくように指示しました。
 お母さんはその言葉にふしぎそうにしてましたが、
「啓介はああいうイベントが好きなんだ。未だに独り身の寂しい奴だ。連れてやってくれないか?」
 と、さもおじさんのためのように言って、お母さんをだましていました。うそもほうべんです。
 そういうわけで、うんどう会のかんきゃくに、お母さんと兄、そしておじさんが来ることになってしまいました。
 うんどう会などと言っても、しょせん子供のおゆうぎです。ぼくは自分で言うのもなんですが、べんきょうもできますが、スポーツも人よりすぐれています。
 とくに「玉いれ」などというきょうぎなど、あれは玉をなげる方向と、力かげんさえ気をつければだれでもかんたんにいれられるきょうぎなのに、クラスのみんなはやみくもになげるばかりで、まったくむだなこういばかりをしています。
 こんなのでどうやってがんばればいいのでしょうか?日本の学校きょういくというものに、ぎもんをかんじてしかたがありません。
 でもおうえんせきから、お母さんと兄に、「がんばって」とおうえんされるのはとても気分がよかったです。
 クラスのみんなにも、
「たかはしの母ちゃんと姉ちゃん、すっげぇかわいいな」
 と言われるのもそうわるい気分じゃなかったです。
 ぼくはクラスのみんなにちゃんと、
「へんなことしたら、一生こうかいするような目にあわせるよ?」
 とちゅうこくをしておきました。みんなは真っ青なかおになって、むごんでうなずいていました。ぼくはとくべつみんなにこわいことなどしているつもりはないのですが、なぜかかれらの間には、ぼくに逆らうとこわいことになる、と思いこんでいるふしがあるようです。
 ぼくはそんなかれらの思いこみをひていしません。
 じじつだからです。
 でもそんなことはどうでもいいのです。
 うんどう会でぼくをさいだいになやませたのは、お母さんや兄のみりょくなどではなく、おじさんのうるささでした。
 おあそびのようなきょうぎ、一つ一つに、おじさんはやけにこうふんして、
「隆介、負けたら承知しねぇぞ!!」
 とさけんでばかりです。しかも声まで大きいので、めだってしかたありませんでした。
「たかはしくんのお父さんって、あまりたかはしくんとふんいきにてないのね?」
 とクラスの女子が言いました。
 ぼくは、
「あんなのがお父さんだったら、お母さんや兄をつれてとっくに家出してるよ」
 といいました。
 ぼくはお父さんのあくまなせいかくにつねになやまされてはいますが、あれはあれで、おじさんよりはましだったのだなとじっかんしました。
 おじさんは、ふつうにあそぶにはさいてきな人なのでしょうが、あれがお父さんだなんてごめんだなと思います。
 そう思う理由は、きっとおじさんが大人げないからなのでしょう。
 ぼくがクラスたいこうのリレーのアンカーで、ビリからトップにおどりでるということがありました。ぼくがはしっている最中、ぼくはずっとおじさんのさけび声になやまされました。
 そして一着でゴールしたぼくのめのはしに、かんどうしたのか、お母さんと兄と大よろこびでだきあっているおじさんのすがたを見ました。
 ぼくは、おじさんに後でふくしゅうしようと思いました。
 そしてお父さんにもきっちり言っておこうと思い、それをじっこうしました。
 おかげでおじさんは、青いかおでさっきうちを出ていきました。
 おじさんはわるい人ではないのですが、もっと落ちついてくれないとこまるなと思います。
 でもおじさんのおかげで、ぼくはうんどう会がそこそこ楽しかったので、今度きたときはいっしょにあそんでやろうかなと思いました。



2005.10.16


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