勘違い狂想曲
act.EXTRA(R18)
※大人表現有。18歳未満の閲覧禁止※
過去の経験から、押し倒されることも騎乗位も初めてではない。
むしろ、回数としては多いほうだとも思う。
欲望を吐き出すだけの行為に、自分から奉仕すると言う優しさなど持ち合わせていなかったから。
だが、拓海に関しては違った。
彼を、自分の指で、舌で、全てで弄り、撫で回し、舐めねぶり、喘ぐ姿にたまらなく興奮した。
だが何もかも自分との行為が初めてだという拓海は、セックスに関してはどこか遠慮がちで、涼介もあまり思うままに扱うことも出来なかったのだが…。
互いの股間をすり合わせ、硬化するそれに、拓海が耐え切れず「ハァ」と甘い息を吐く。
熱を感じる指が、涼介の下肢のファスナーを下ろし、中に隠されたものを握る。
「…涼介さん…これ…欲しい…」
惚れた相手に涙目で、見上げるように囁かれ、奮起しない男はいないだろう。
涼介の欲望も、素直に拓海の手の中で隆々としたものに形を変えた。
ゴクリ、と拓海の咽喉が鳴り、好物を前にした獣のように舌で唇を何度も舐める。
「…拓海が…してくれるんだろう?自分で…挿れてごらん」
彼の前では、年齢のこともあるが常に冷静なままでいたかった。
だが、こんなに美味そうなものを前にして、余裕を保っていられるほど涼介は枯れていない。
ゴクリと溢れてくる唾液を飲み込み、掠れる声で囁くと、頬をピンクに染めた拓海が涼介を見上げながら躊躇いながらも小さく頷いた。
握っていた指をそのままに、涼介の身体を跨ぎ、角度を合わせ蕾の中に誘い入れようとする。
だが、いったん閉じたそこは、先ほど涼介のものを受けいれていたと言うのに拒む。
ぬるぬると、入り口をなぞるばかりで入ろうとしない。
「…やぁ、涼介さぁん、何でぇ…?」
舌っ足らずになりながら、潤んでいただけだった眦に涙を浮かばせ、縋るように涼介を見つめる。
その腰に手を当て、支えながらも涼介は拓海の懇願を突っぱねた。
「俺をメロメロにするんだろう?だったら…自分でしないとな」
そう言うと、涙で溶け落ちそうだった瞳に力がこもる。
気迫めいたものが宿り、強い意志で涼介を見つめる。
「……する」
ぎゅ、っと唇を噛み締め、ハァ、と深く息を吐き力を抜く。
パクパクとひくつくそこに硬化した肉欲を当て、息を吐いた瞬間に…腰を押し付けるように無理やりもぐりこませる。ヌルリと、先端が入り、一番太い部分を越えると、後は誘い込まれるようにズルズルと奥まで到達した。
敏感な粘膜に近い皮膚に、涼介の下肢の硬い毛が当たる。
だが、その微妙な痛みが、今はとてつもなく快感を与えるらしく、拓海は身を捩りその感触を味わっていた。
ザリザリと、毛が擦れあう感触が二人の間でする。
「…ずいぶん…っ、気持ち良さそうじゃないか。そんなに俺のは美味いか?」
女とは比べ物にならないくらいに強く締め付けながら、けれど奥の方で吸い付くように扇動する粘膜。
医学部であるため、身体の仕組みは理屈として理解してはいるが、そんな知識では知りえないような領域がここにある。
「…ぅん、りょう、すけさ、ん…すごい、良いよぅ…ジンジン、する…」
腰をくねらせ、肉欲を味わう拓海の姿は、涼介の欲情をさらに煽る。
ぐっと力を込め彼の腰を掴み、下から突き上げるように腰を動かすと、拓海は悲鳴に似た声を上げた。
「…ひぃ、だめ、それ…ぅぅん…」
拓海の、エプロンの裾が持ち上がっている。
彼の足の付け根の部分が膨らんでいるからだ。
涼介は手を伸ばし、それに指を這わせる。
ぎゅぅ、と絞り込むように内が締まり、ビクビクと拓海の背中が扇動した。
「ひ、ぁぁ!」
「……ぅ…」
強すぎる快感に、涼介もまた呻く。
布地の下のそれが、漏らしたみたいに粘液を溢れさせ、薄ピンクだったエプロンを濃いピンクのそれに変化させる。
じっとりと濡れたそこに、涼介はまた咽喉を鳴らす。
掴み、扱き、舐めたい。
だがそれはまた次の楽しみだ。
今は、自分の身体の上で腰を激しく動かせ始めた拓海に集中する。
「や、やぁ…止まんない…ウズウズする…」
ぺチン、ペチンと、穏やかだった腰の動きが激しいものに変化し、二人の間でぶつかり合う素肌が立てる音が響く。
柔らかなクッションを効かせるソファは音を立てて軋み、部屋の中にギシギシとスプリングの音を響かせた。
布地の上からでも、拓海の乳首が尖っているのが見て分かる。
下肢の染みは、どんどん広がり涼介の上にまで滴り落ちている。
ギシギシと、ペチペチとだけ響いていた音の中に、ニチャニチャと粘液を粟立てる音が混ざる。
「…りょう、すけさん…涼介さん…」
舌をもつれさせながら、涙をびっしり瞳に浮かべた拓海が涼介を見下ろしている。
「…何?」
涼介も、もう舌が回らない。呼吸は荒く、拓海の動きに飲み込まれないよう踏ん張るだけで精一杯だ。
「…涼介さん……いい?」
「…え?」
ハァ、と深い吐息の後、拓海は再度言った。
「…涼介さん…気持ち、いい?」
本当にどうしてくれようか。
純情で、色っぽくて…なのに健気。
おまけに走らせたら誰よりも早く、こちらが驚くほどの強さを見せる。
あの夏の夜。
バトルしたあの日に、もう決まっていたのだ。
あの、激しい熱を孕んだ目にやられた。
普段はどこかぼうっとしているのに、強い、力を感じさせる、あの瞳。
それに射抜かれ、バトルにも負け、けれど彼はどこまでも謙虚で、おまけに…恥じらい俯くその頬と項に…欲情した。
暑い、夏の夜だった。
うだりそうな夜。
あの瞬間に恋に落ちたのだ。
惚れた方が負け、とはよく言ったものだ。
「……負けっぱなし…だな」
上で腰を振り、主導権を握られるのもまた心地好い。
「…え?」
だが、それよりもやはり。
拓海の腰を掴む手に力を込め、身体を反転させ上下を入れ替える。
ドサリと激しくソファのスプリングが軋み、涼介は拓海を身体の下に入れ替え押し倒した。
「気持ち良くて死にそうだ。だから今度は…」
両足を掴み、頭に届くまで折り曲げる。
そして上から、突き刺すように激しく腰を動かす。
「ひっ!…ぅあぁ…」
「…俺がお前を気持ち良くさせてやるよ」
ズン、と深く腰を穿つと、ブルブルと奥が震えた。
拓海の頬をポロリと涙が伝い、落ちる。
その頬に顔を寄せ、涙を舌で舐め採る。
ほんの少しだけ感じる、塩の味。
「…俺だって、お前をメロメロにさせたいんだ」
拓海の腕が、しばらく辺りを彷徨い、そして目が見えない人のように手探りで涼介の身体に触れ、背中へと回る。
「……すき…」
ぎゅ、と力を込め抱きつかれ、耳元に囁かれる。
欲望がぐんと膨らむ。
思わず舌打ちが漏れ、「俺を殺す気か…」と毒づく。
「…惚れてるんだよ、チクショウ…」
この共有する時間はまるで天国。
少しでも長くこの場に留まりたくて、引き伸ばそうと試みるが、けれど失墜は必ずやってくる。
「……うっ…」
「…ぁ、はぁ…、ん…」
高ぶっていた熱が一気に下降し、ぴったり一つの生き物のように熱を共有しあっていたのに、ゆっくりと薄皮を剥ぐように引き離されていく。
一つだったのに。
また別の「もの」へと変化する。
それに堪らない寂しさと、切なさを感じる。
けれど。
熱を吐き出し、深い溜息を吐いた後、目を開けば上気した拓海の顔があった。
快感に閉ざされていた瞳がゆっくりと開き、ひたりと涼介の目と合う。
瞬間、まるで華が綻ぶように柔らかな笑みを浮かべた。
「…涼介さん…」
涼介の存在を確かめるように、指を伸ばし涼介の頬に触れる。
顔を寄せ、唇を尖らせ涼介の口を塞ぐ。
そしてまた微笑む。
「……すげぇ好き」
毎日。その瞬間ごとに拓海に惚れ直している。
涼介も微笑み、負けじと拓海にキスを返す。
「…愛してるよ」
愛なんて、かつては鼻で笑っていた。
それに一喜一憂する輩を、軽蔑し頭の悪い人種の特性だとさえ思っていた。
だが今は、涼介もまたそんな頭の悪い人種の仲間入りをしている。
だが、……幸せなのだ、心から。
今の気持ちを「愛している」と言う言葉以外で表現する方法を涼介は持たない。
そう囁くと、拓海は感極まったように、涼介にしがみ付き、足を腰に絡めて擦り寄ってきた。
鎖骨の辺りに、感じる拓海のフワフワの猫っ毛。
まるで猫のように、咽喉を鳴らしてしがみ付き甘える姿に涼介の眦がまたデレっとやに下がる。
『…今度は猫耳もいいかも知れない』
そう心に秘めながら、涼介は拓海の顔を持ち上げ、唇を寄せた。
大きな瞳がゆっくりと閉じていき、瞳を覆う長い睫毛に乗った涙の粒がポロリと零れ落ちた。
2007.3.14