勘違い狂想曲
act.6(※R18)
※大人表現有。18歳未満の閲覧禁止※
首筋に痛いほどに吸い付かれる。
胸元を這っていた指は一つ一つ、涼介のシャツのボタンを外し素肌へと触れてくる。
温かい指。
それが涼介の身体のラインをなぞるように這い、自分で意識することも無かった小さな突起に触れる。
いつもは、涼介が拓海のそこを嬲る。
けれど、今は拓海が涼介と全く同じ手並みで弄っている。
つまみ、転がし、そして意地悪するように抓る。
「……っ…」
思わず、微かな呻き声を漏らすと、顔を上げた拓海が涼介を見上げながら、ニィ、と微笑んだ。
雄の、獣を思わせる笑みに、涼介の胸が妖しくざわめく。
かつて、手馴れた女を相手にそこを弄られたことはあったが、こんなにも興奮したことは無い。
拓海、だからなのだ、きっと。
「…涼介さん…気持ちいい?」
拓海が胸に顔を寄せ、頬ずりしながら突起を唇に含む。舐め転がされ、歯を立てられ、また呻き声が漏れる。
「…あ、…ああ。気持ちいいよ」
答えた声は掠れていた。
それに、また満足そうに拓海が微笑む。
…堪らない。
好きな相手に求められるのは悪い気分ではない。それがどんな形であろうとも。
だが、やられっぱなしと言うのも涼介の性格から合わず、さすがに手も出るのだが。
自分の身体に覆いかぶさる、そのまろやかな臀部に手を伸ばす。触れると、しっとりとした感触と女には無い硬さがある。
その狭間が、どんなに甘くキツく、涼介の欲望を締め付けるのか、嫌と言うほど知っている。
涼介は舌なめずりをしながら臀部を揉み込み狭間に指を這わせる。
硬く閉ざされた蕾。そこを指でなぞり、閉じたそこを寛がせる。
ゴクリ、と唾を飲みこみ咽喉が鳴る。
「…ん、…ぁ…」
涼介の乳首を弄っていた、拓海の唇から吐息が漏れる。
うっすら、頬が高潮し堪らない色香が滲み出している。
潤んだ大きな瞳が、ひたりと涼介の目と合う。
「……涼介さん」
「何?」
お互いの呼吸は荒い。
自然と触れ合った腰から、二人とも興奮していることは窺える。スリ、と腰を触れ合い捩らせるそんな拓海の些細なしぐさにも、爆発しそうな自分がいた。
「…俺が…欲しい?」
熱を孕みながらも、不安そうに問いかける声。
なぜ、そんなに不安そうなのか?
こんなにも求めているのは、自分の浅ましい硬化した欲望からも顕著であるのに。
だが、そんな顔をさせているのは自分なのだと、そんな自覚もある。
固い表情の拓海の頬に指を這わせ、精一杯の感情を込め囁く。
「…欲しいよ。とても。拓海の全てが」
彼の笑顔が見られると思った。
なのに、拓海は泣きそうに顔を歪め、もう何も聞きたくないとばかりに涼介の胸に顔を埋めた。
顔を隠し、腰を擦り合わせながら拓海が小さな声で何かを呟いた。
「……嘘吐き」
その言葉は、股間を握る拓海の指が与える刺激に邪魔され、涼介の耳には届かなかった。
ぐるぐると色んな感情が渦巻いている。
欲しい、と言う心。
悲しい、と思う心。
そして悔しい、と感じる心。
喜びは無い。あったのかも知れないが、他の感情が邪魔して拓海の表にまで現れてこない。
苛立ちに似た感情のままに、顔を涼介の下肢に移し、服の上から膨らんだそこを握り刺激を与えながらファスナーを下ろす。
いつも、手探りか暗闇の中でしか感じたことのない、それ。
明るい照明の下で、眼前に初めて見る。
隆々としたそれに指を絡め、扱く。
「…っ、くぅ…」
掠れ声が涼介の唇から漏れる。
感じているのだ、彼は。
きっと過去、何度も他の女や、もしかして男にもされてきたのだろう。快楽に慣れている。…涼介しか知らない、自分とは違って。
悔しかった。
無性に。
勢いのままに、やった事も、された事もないのに先端を口に含む。大きな質量と火傷しそうなほどの熱。それを舌先に感じる。
「ま、待て、拓海…ぅ…」
口に含む瞬間、涼介が慌てて拓海を制するが、構わず口に含めばまた快楽を含んだ声を漏らす。
男ってのは単純だ、と子猫のように彼の欲望に舌を這わせながら思う。
刺激を与えれば素直に欲が膨らむ。たとえ、好きでもない相手でも。
拓海だってそうだ。刺激されれば、きっとすぐに勃つし、感じることもある。
だけど、こんなに胸が痛くなるのは、涼介にだけだ。
じわり、と目に涙が滲む。
そんな事を知らないこの人が憎かった。
憎くて、悔しくて…でも堪らなく好きなのだ。
分を弁えず、独占したいと願ってしまうほど。
だけど、今この「遊び」の中では拓海だけのもの。
たとえこの瞬間が、僅かな時間だけのこととしても。
気が急いて、コポリと粘液を垂らし始めたそこから唇を離す。
そして身を起こし、欲望に手をかけたまま足を開き跨った。
「…くぅ…ま、て、拓海…無理だ」
先端を合わせ、尻の狭間にそれを迎え入れようとする。まだ硬く閉ざされたそこに、もちろんすんなり入るはずもなく、ヌルヌルと悪戯に狭間に欲望を擦り付けるだけとなる。
「…無理だ…解さないと…傷になる」
涼介の手が、拓海の腰を掴み引き戻そうとする。それを拒み、拓海は何度も首を横に振った。
「…拓海!」
涼介の声が、諌めるものに変貌する。不興を買ったのだと知り、ビクリと震えながらもけれど首を横に振り続ける。
「…だって……」
ヒックヒックと、しゃくりあげたような自分の声から、泣いていることに気付いた。
パタパタと零れ落ちた涙が、涼介の剥きだしの肌を濡らす。
「…だって…涼介さんが欲しいんだ…」
今すぐ、自分のものにしたい。この夢が覚めないうちに。
「だから…」
と続けた声は、けれど発することが出来なかった。
熱い舌にその先を奪われる。
「…ん、…ふぅ…」
熱く絡んできたそれが、涼介の舌で、眼前に彼の顔があることに気付いたのは暫く経ってからだ。
こなれていながらも、熱情を孕んだ激しい舌に翻弄され、下肢に溜まっていた熱が一気に集中する。
ダメだ、と言いたくても声が出せない。
嫌だ、と首を振りたくても、彼に顔を捕まれ身動ぎも出来ない。
…ダメだ、ダメだ、ダメだ。
頭が真っ白になる。
ブルリと腰が震え、パタパタと涼介の腹の上に白いものが散る。
それに気付き、涼介が漸く唇を離す。
「…キスだけでイったのか?」
笑みは無かった。
軽蔑や、侮蔑の眼差しも無い。
ただ、ギラギラと燃えるような獰猛な欲を孕んだ眼差しが拓海を射る。
それに怯え、拓海は身を竦ませる。
そんな拓海の怯えに気付いたのか、涼介が自嘲気味に眉間に皺を寄せ笑う。
「…俺が怖いか?」
首は、横には触れなかった。どう答えて良いのか分からず。
するとますます涼介の笑みは深くなる。どこか、痛々しさを抱えたままに。
「俺は…いつもお前を怖がらせているな」
そんなことは無いと、首を横に振りたかったのに、触れなかった。
「だが…すまない」
途端、ぐるりと世界が反転し、視線が天井へ向けられる。
気付けば、涼介を押し倒していた拓海が、今は涼介に押し倒されている。
のしかかり、拓海を見下ろす涼介の眼差しは…辛そうだった。
「止まらないんだ」
足を割り広げられ、高々と腰ごと持ち上げられる。
何をするのかと呆然と見ていれば、足の付け根に涼介の顔が沈んでいく。
彼の意図に気付き、バタバタと足を暴れさせてもその手は外れない。いや、ますます力は増し、痛いぐらいに捕まれる。
「……俺を許すな、拓海」
狭間の、自分では見たことのない奥。固く閉ざされた蕾に、涼介の吐息がかかる。
「…い、や…涼介さん…」
彼の返事は早かった。
「無理だ」
そして狭間に熱い舌の感触。
「…ひぃ、ぁあっ…!」
微かに、涼介の笑う声がした。
「俺は…いつでもこうしたかったんだ…」
その涼介の呟きは、衝撃に身を震わす拓海の耳には届かなかった。
2007.3.4