奇跡が起きるまで

ERECTRICL STORM番外 act.8


 俺は目を開けた。
 けれど、もうそこにいたのは「俺」ではない。
「啓介?」
「どうした、啓介?」
 大好きな、大好きなパパとママ。
「にゃあ」
 俺は鳴く。
 今の、猫の意識だけの心で。
「にゃぁ、にゃ」
 大好きなパパとママに伝えられるように、鳴く。
 ――あのね、けいすけはね、パパとママがだいすきだよ。
 もう一人の「啓介」も。猫の「啓介」も。
 だから、ずっと幸せなままでいてね。
 それが、「啓介」の願いだから。












「おはよう、拓海」
「おはようございます」
「…どうした?ああ、指輪?すぐに慣れるよ」
「ふふ、嬉しくって、つい触っちゃうんですよ。
 これで涼介さん、俺のものだって皆に堂々と自慢できますね」
「ああ、俺も拓海は俺のものだって堂々と宣言できるな」
「ねぇ、涼介さん…」
「何?」
「夢…見ませんでした?」
「……見たよ」
「啓介さん、出てきませんでした?」
「…出て…きたな。あいつ、全然変わってなかった」
「…うん。変わってなかった」
「ありがとう…って言ってたな」
「幸せになれ…って、言ってた…」
「幸せに…なろうな」
「…うん。啓介さんが応援してますもんね。ならなかったら、恨んで出てきそうだし」
「……だな」



 二人が笑う。幸せそうに。

 二人が幸せなら 俺は笑える。

 だからどうか、いつまでも幸せに。そして微笑んでいて下さい。







HAPPY END
and
Merry Christmas




2006.12.22


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