「や、だ…だめ…だめ、です…」
嘘だ。本当はだめなんかじゃない。
「聞けねぇよ…とにかく入れさせろ」
乱暴な言葉と同様の、急いた手つきで涼介が拓海の肌を弄る。
人気の無い早朝とは言え、朝の明るい開放的な空間の中で肌を晒すのは抵抗がある。
高まった熱を確かにどうにかして欲しいと思ったが、涼介の要求は時々拓海には付いていけない。
今も、車から外に引きずり出され、ボンネットに手を付いた状態の拓海の背後から涼介が覆いかぶさっていた。
ずり下げただけのジーンズ。太ももの辺りで下着とともにわだかまっている。
外の冷えた空気に晒され、むき出しにした肌がぶるりと震えると、暖かい涼介の指が腰を這い、そして脱がされていないシャツの下に潜り込み柔らかな胸を弄る。
服の下で、涼介の指が蠢いているのが分かる。
「ひ、…ぅん…」
モソモソと動く布の動き。それがやけに淫靡に感じた。
硬くしこった乳首を摘まれ、指先で弄られる。
背後で、涼介が微かな笑い声を漏れたのが聞こえた。
「…ここ、前よりいやらしくなって来たな。ちょっと触っただけですごい濡れてる」
「や、だ……」
クチュンと水音が響いた。
見なくても分かる。涼介の指が敏感な狭間をなぞった事など。
「すげぇな…ドロドロだ」
チュクチュクと指が入り口を撫でる。その緩やかな刺激に耐えられず、いつも欲するのは拓海からだ。
「だ、め…しないで…涼介さん、はや、く…」
腰を揺らめかせ彼の熱を欲する。
指だけではもう足りない。
あの熱く、大きな充足感を知ってしまった後では。
寒かったはずの身体が火照っている。
むき出しの肌の上に、じっとりと汗が滲み涼介を誘う。
「だって、拓海が言ったんだろう?こんなところじゃイヤだって」
意地悪だ。すごい意地悪。
そうやって拓海を焦らして、いつも反応を楽しんでいる。
自分はこんなにも必死なのに。
悔しくて、悲しくてポロポロと目から涙が零れた。
しゃくり上げ始めた拓海に、涼介もやり過ぎた自分を悟ったらしい。
ギュッと背後から拓海を抱きしめ、眦にキスを落とす。
「ごめん。拓海が可愛すぎて苛めすぎた」
自分ばかり余裕が無いようで悲しい。
もっと、もっと彼にも必死になって欲しいのに、拓海の経験値は涼介に対し低すぎる。
物慣れた彼の手つきや遣り取りに、焦燥ばかりが募る。
けれど。
「入れるよ?」
チリチリと涼介のファスナーが降りる音がした。
期待に、溢れる唾液を拓海は咽喉を鳴らして飲み込む。
ひたり、と滑った感触を狭間に感じる。
暫くズリズリと入り口を弄ぶように擦り、そして待ち望んだ先端が水音を立て拓海の内側に入り込む。
「ん…ふぅ…」
早く、早くと心が逸る。
「そんなに食いつくな。もう少し緩めてくれないと中々入らない」
首筋に感じる涼介の息が荒い。
「…拓海、ほら」
促され、深く息を吐き出す。と同時に、ズクンと奥まで涼介の肉が拓海を割り開いた。
「あ、あァ…!」
衝撃に背中が反り返る。尖った乳首に彼の指が触れた。
グニと揉まれ、腰を揺する。
早く。もっと乱暴なくらいに内を掻き回して欲しい。
「…ああ…凄いよ、拓海…吸付いてくる…」
ハァ、と感極まったような涼介の声と熱い吐息が首筋に触れる。
涼介も興奮している。拓海と同じくらいに。拓海の内側に包まれて。
ドクドクと脈打つ内部の彼の欲望からもそれは伝わる。
「りょ…すけさ…きもち、いい…?」
喘ぎながら言葉を紡ぐと、彼が拓海の背中に頬を寄せ、腰を深く突き刺す。
「いいよ…すごい、イイ…」
キュウと自然に内部を締め付ける。すると涼介のうめき声が背中から聞こえた。
「馬鹿…煽るな」
言葉と同時に、打ちつけられる腰の動きが早まる。
水音の他に、肌がぶつかる音が響く。
「ァ、あぁ…ぅ、ん…は、ぁ…」
むき出しになっているはずの素肌にもう寒さは感じない。
繋がったそこを中心に熱が広がる。
全身を焼き、フツフツと内側から高まり上昇していく熱。
「りょ、すけさ…涼介さ、ん…」
必死に名を呼び振り返ると、真剣な表情の彼が顔を寄せた。
「…何」
涼介の指が拓海の目じりの涙の粒を拭う。
「オレ…ちゃんと涼介さんに、付いていけてる?置いて、かれてない?」
経験値が低い拓海は、自分ばかりが感じさせられているようで不安になる。
ちゃんと、涼介も自分と同じ高みにいてくれたら良い。そう思う。
「いっしょ、がいい…涼介さ…置いてかないで…」
拓海の言葉に、涼介が息を飲み、激しく動いていた腰の動きが止まる。
「お前、な…」
けれどすぐに、ぐっと腰を掴み直し、さらに深く拓海の内を穿つ。
「分かれよ。こんな…場所も考えずにサカっちまうぐらいにお前にハマってるって言うのに…」
「あ、あ、あ…」
激しい動きに、拓海の意識がどんどん薄くなっていく。まるで嵐に揉まれた木の葉のように、成す術無く翻弄されている。
「本当なら!この後、お前の父親に会うんだから、もっと控えてって…そう思ってたんだよ俺は!なのに…クソ…絶対にバレるぜ、こんなの…チクショウ…最初ぐらい良い印象を与えたかったのに…」
頭がもうボウっとして、涼介の言葉が聞こえない。
「お嬢さんをキズモノにしてしまったので、責任を取らせて下さいって…挨拶するか。…ああ、そうだな。絶対に幸せにしますって、頭を下げようか…」
もう、ダメだ。
だめ。
破裂しそう…。
「拓海」
ズンと穿たれた奥に、熱い飛沫が散る。
それと同時に拓海の頭も真っ白になった。
クタリと、力の抜けた身体を抱きしめ、涼介はその滑らかな項に唇を落とす。
「…愛してるよ」
囁くと、意識の無い筈の拓海が、まだ身体の内に残る涼介を甘く締め付けた。