そこは狭かった。
狭く、きつく、無遠慮に進入する涼介を排除しようと内部を閉ざす。
その閉ざされた入り口をこじ開けるように涼介の剛直が割り開く。
「…ひ、ィ……」
悲鳴のような少女の声が漏れても、頭に血が上った涼介を抑えることは出来なかった。
耳元で己の鼓動が激しく鳴り響く。
吐き出す呼吸が、火のように熱い。
「や、だ…い、いや…!」
暴れる足を強く掴み、腰を押し付ける。
まるで。
いや、まるで、などではない。
これは強姦だ。
暴れる少女の身体を無理やり押さえつけ、凶器となってしまった欲望を彼女に突き刺した。
少女の抵抗が涼介をさらに熱くさせる。
自分が何をしたのかと我に返れたのは、自身の全てを少女の内に収め切った時だった。
温かく、そして痛いくらいに締め付ける内部。
けれど柔らかく先導し、涼介の理性を焼き切る。
ビクビクと、震えているのか痙攣を続ける少女の両の腕を、暴れないように右手で拘束し、左手で固い突起と柔らかな肉を弄る。
顔を少女の唇に寄せ、舌を伸ばし食いしばる少女の唇を丁寧になぞると、唇がうっすら開き白い歯を覗かせる。
その隙を見計らうように、涼介は舌を少女の口内に潜り込ませる。
上からも、下からも。
己の肉を潜り込ませ、少女の内部を確かめる。
優しく、宥めるように、少女の肌を、口腔を愛撫する。
「……痛い?」
痛いに決まっている。それは少女の強張った身体が教えてくれる。
「う、く……や、だ…きもち、わる…」
ツゥ、と離れた互いの唇から唾液の線が零れる。涼介はそれを嘗め取り、涙の浮いた少女の眦にもキスを落とした。
「…力を抜いて」
「…や、だ…できない…」
息も絶え絶えな少女。
慣れていないその身体は涼介には魅力としか映らない。
優しくしてやりたい。
酷くしてやりたい。
だが何より…愛してやりたい。
涼介は少女の手を取り、己の頬に触れさせる。
「君の内に居るのは…この俺だ」
自分を確かめさせるように、掌で涼介の顔をなぞらせる。
「大丈夫。…俺なんだ」
少女の指先が唇を掠めたとき、涼介はその指に舌を這わせた。
歯で噛み、幼子がするように吸い付く。
「…あ……ァ…」
ビクビクとまた少女の身体が震える。
今度は怯えではなく、悦びに。
ジワリと、繋がっている下肢が潤む感触がした。
ゆっくりと、埋め込んだものを抜き、そしてぐるりと掻き回す様に突き入れると、少女の唇からは甘い吐息が漏れた。
「…は、ぁ……」
ダイレクトに感じる熱い熱。
その時になって漸く、涼介は避妊具を付けることを失念していた自分に気付いた。
本来なら、避妊というだけでなく、性病を予防する意味でも付けるべきものである。
特に、このような生業をする女性を相手にする場合は。
だが、この心地よい場所から抜け出ることを本能が拒否する。
離れがたくて、ずっとここにいたくて、涼介は焦れたように腰を動かすと、少女の甘い声が響いた。
「…あ、…ふ、ぅ、…あぁ…ぅ…」
それを聞いた瞬間、常の己なら絶対に犯さないであろう愚行を受け入れた。
――構うものか。
今の快楽だけが全てだった。後の事など考えれない。
「…俺を…」
少女の甘い声。甘い身体。
それに誘発されるように、慎重だった動きが激しくなる。獣のソレへと。
「…俺を…感じて」
呼吸が荒い。
全力疾走したかのような激しい呼吸音。息を整えることすら出来ない。
我を失ったように、少女の滑らかな肌に何度も吸付き赤い跡を残す。
それは所有欲の表れだった。
少女に、自身の痕跡を残そうとする涼介の。
今までそんな衝動を感じたことは無い。
跡など、残すのも残されるのにも嫌悪を感じた。
なのに――。
かつての経験が全て吹き飛ぶ。
まるで童貞の少年のようなガムシャラさで少女を貪った。
ヌチュヌチュと、繋がったそこから粘液が混ざる音がする。
激しく打ち付ける肌がぶつかる音が真っ暗な部屋に淫らに響く。
涼介の激しさに煽られるだけの、波間の頼りない小船のような少女にも、徐々に変化が訪れた。
「……や……やだ…こわい…へん…」
切れ切れの声とともに、少女の腕が涼介の背中に回る。
そしてギリ、と固い背中に爪痕を付けた。
痛みに、動きを止めた涼介を誘うように、拙い動きで少女の腰が揺らめく。
無意識で行っているのだろうその動きに、涼介の欲がまた膨らんだ。
「…変?…何が?」
聞き返す涼介の息も荒い。
この身体の前で、冷静でなどいられない。
少女が、涼介の胸に頬を寄せ縋り付く。
「…やだ…へ、ん……ウズウズする…」
愛おしい。
この腕の中の少女が愛おしくて堪らない。
胸の中に湧いた熱い感情は全身に回り、涼介を支配する。
愛しさのままに、少女の肌に馴染んだ身体を抱きしめ、深い奥へと突き入れる。
少女の甲高い悲鳴が唇から零れる。
「…ん、ぁ…やぁ…こ、わい…おちちゃう…」
もう呂律が回らないのだろう。
拙い声に涼介の欲は増す。
「…大丈夫」
少女の頤を掴み、自分に向けさせる。
闇に瞬く潤んだ瞳。
零れ落ちた涙を舌で嘗め取り、そしてハァハァと荒い呼吸を紡ぐ、濡れて煌めくその唇を塞いだ。
「大丈夫」
涼介の顎から、汗がポトリと少女の鎖骨に落ちる。
ああ。そうか。こんなにも自分は夢中になっているのかと、頭のどこかがそう感じている。
「……俺も一緒だ」
熱が高まる。
高まり、上昇を続ける精神は、己の身体を突き抜け、どこまでも高く上り続ける。
そして、ぐい、と一際強く腰を突き入れた瞬間に、プツリと糸が切れたように真っ逆さまに落下する。
腰を引き、中での開放を免れたのは、自分でも感嘆するほどのタイミングだ。
全身に感じる失墜感。
ああ、射精したのだなと気付いたのは、脱力した体に感じた少女の湿った肌の感触によってだった。
体重を乗せ覆いかぶさっている事実に気付き、力の抜けた体を浮かせ、少女の様子を窺えば、トロンとした眼差しで涼介の前に全てを晒す艶かしい存在がいた。
涼介の欲で穢され、快楽を教え込まれた身体は以前のような真っ白ではない。
火照った肌。
肌を彩る赤い跡。
何より、最初には無かったトロリと溶けるような色気が全身を覆っている。
それは涼介がこの無垢な存在に与えたもの。
じっと変化した少女の姿に見惚れていると、閉ざされていた少女の瞳が開き、涼介の姿を確認する。
目が合った瞬間にその唇がうっすら開き、艶かしい吐息を零し、そして笑みの形を造った。
誘われる、と言う表現は正しくない。
そう。引き合うように、涼介はその唇に己の唇を重ねた。
さっきまでの激しい貪りとは打って変わり、そのキスは互いの体温を確かめるような、そんな穏やかなものだった。