Dirty Magic

拓海とイツキの通話全記録


「あ、でもさ、拓海…まさか…やっちゃったって…お前が、その…高橋涼介を?」
 どうしてもこれは気になる。
 恐ろしいものが待っていると知りながらもイツキは聞かずにはいられなかった。
『え、どういう意味だよ?』
「ど、どういうって…その、お、女役とか…」
『ああ。涼介さんがネコやったのかってことか?』
 …ネコって何ですか?
 いきなり専門用語で語られ、かなりドン引きになってしまったイツキ。だが拓海は止まらない。
『涼介さんはタチだよ。俺がネコ。本当はどっちでも良いんだけどさー、涼介さんあんまり素質ないみたいで…』
 …素質…って何のだよっ?!
『尻の穴ん中に前立腺ってあるだろ?そこ刺激されてイける奴とイけない奴がいるみたいでさー、俺はすっげぇ気持ち良いなーとか思うんだけど、涼介さん、そこを指で刺激してもイけないみたいだからさー』
 …お、俺は今、恐ろしい事を聞いてしまっている…。
 イツキはすでに真っ白。だんだん足元からサラサラと砂になっていくようだ。
『だから涼介さんの無理やり勃たせて、上に乗っかってみたんだ』
 そんな何でもないことみたいに言うなよっ!!
『そしたら涼介さん、挿れた途端にイっちゃって…。やっぱ童貞だったからかなぁ。すっげぇ早かったんだ』
 ………え?童貞??道程じゃなくて?
『けどそのおかげで中がすごい滑り良くなって。俺も最初キツかったんだけど、そのせいですごい気持ち良くなってきてさぁ。涼介さんもすぐに回復してくれたから、そのままずっと挿れっぱなしで五回くらいやっちゃったんだ』
 ……今、俺はとても重要な事を聞いたよな…確かに聞いた。
『でも涼介さん、早漏なのかなぁ…。俺が五回イくまでに、涼介さん俺ん中で十三回イってるんだよ。最後、気絶しちゃったし…。体力もあんまないみたいだし、ほどほどにしといたほうがいいんかなぁ?』
 ……早漏…早漏っつったよな、今…。
 いやいや、それより…十三回…苦しいぜ、俺もかつて、オナニーの自己新記録を樹立しようと、励んだ記憶はあるけど、あの時は七回で挫折した。
 さすがカリスマ。十三回か…質より量だな…。
 この時点で、確実にもうイツキは壊れていた。
「しょっぱなから十三回はキツいぜ、拓海。せいぜい五回くらいで勘弁してやれよ。高橋涼介ってもう23歳だろ?俺らみたいなピチピチの十代じゃないんだしさ、体力も落ちかけてると思うんだよ」
『そっか…。五歳も年の差あるんだもんな…』
「そうだよ。お前は一回か二回で我慢しとけよ。あんまりがっつくと、嫌われるぞ?」
『え、それは嫌だ…。でも、一回か…俺、我慢できるかな?』
「挿れるまでに、お前、自分で三回ぐらい空振っときゃいいじゃん。そしたらいいんじゃねぇ?」
『…あ、そっか。涼介さんにも口とかでやってもらえばいいんだ』
「……(俺の意図したところと違うんだけど)そうだな…」
『ありがとう、イツキ。俺、今度はもうちょっと頑張ってみる』
 …いや、あまり頑張りすぎないほうが…。
「ああ。頑張れよ」
 ガチャンと受話器を置いたイツキは、久々に見せる晴れやかな笑顔を浮かべた。
「あの高橋涼介が23歳まで童貞で、しかも早漏か…」
 現在進行形で童貞中のイツキは、そんな涼介に勇気を貰ったような気がした。
「俺も、23歳までに脱、童貞だ!!」
 そんな誓いをひっそり立てる、武内イツキは、紛れもなくあの藤原拓海の親友…。



…何か、色々ごめんなさい。
END
2005.10.13

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