なりきり拓海のD日記
act.2
昨日、初めてDの遠征に出かけた。
機材車だとかバンが三台も付いていた。凄かった。お金ってどこから出てるんだろうと思ったら、全部涼介さんが出してるみたいだった。
「涼介さんってお金持ちなんですねー」
と啓介さんに言ったら、なぜかすごく渋い顔をした。
「いや、アニキのあれは…」
と言ったきり黙ってしまった。
外報係だという史裕さんにも聞いてみたけど、
「い、いや、お金の出所なんて、俺は知らないなぁ…」
と、聞いてもいないのに、そんなことを震えながら言っていた。
涼介さんとお金には何か謎があるらしい。
松本さんにも聞いてみた。
松本さんは、笑いながら、
「ああ、お金のこと?知らないほうがいいよ。まぁ、涼介さんは金儲けがうまいんだよ。何しろ悪人だから」
と細い目で言っていた。面白かった。松本さんの冗談はいつも冴えてるなと思った。
コースを走りこんで、休んでいたら涼介さんが来た。
バナナを貰った。
「疲れてる時の栄養補給には、これが手軽で一番いいんだ」
と言っていた。よくわからないけどバナナは嫌いじゃないので食べた。
涼介さんは俺が食べるのをずっと見ていた。正直、あんまり見られるのは嫌だった。俺はこういう棒状のものを食べるのが苦手だ。どうしても汚い食べ方になってしまう。
やっと食べ終わったら、涼介さんの顔はなぜか赤くなっていた。
「…期待以上だったよ、藤原」
と、やたらと潤んだエロい目で言われた。照れた。でも何のことかなぁと思ったけど、よく考えたらさっきまで走りこんでいたコースのタイムの結果を言ってるのだろうと気付いた。
「ありがとうございます。涼介さんの期待に答えられるようがんばりますから」
と言ったら、感極まったらしい涼介さんに抱きしめられた。そして意外と外人くさいところがあるのか涼介さんにキスをされた。びっくりしたけど、この人はこういう人なんだなぁと納得した。
「バナナの味がする」
と言われた。俺は棒状のものの食べ方が汚いので、どうしても口の周りがベタベタになるのだ。そして涼介さんは俺の口の周りまで舐めてた。変な人だ。スキンシップが好きらしい。
俺も逃げても良かったんだけど、涼介さんのエロい目を間近で見ていたら、ぼうっとして逃げれなかった。逆に、ずっと見ていたいような気がしてぼんやりしてた。
俺の口の周りを舐めきった涼介さんは満腹の猫みたいな顔をして、
「これからもよろしく頼むな、藤原」
と微笑んだ。カッコいい人の笑顔は、ある意味武器だ。すごかった。
「こちらこそよろしくお願いします」
となんとか頭を下げたけど、顔は真っ赤になっていた。
その後も涼介さんはずっと俺と手を繋いでいたり、髪の毛に触っていたりした。
別に嫌じゃなかったので構わなかったけど、少し恥ずかしかった。顔は赤くなったままだと思う。それにやたらと涼介さんは、俺をエロい目で見るので、まともに涼介さんを見れなくて、俯いたり目をそらしたりばかりしていた。
そんな俺に、
「…お、お前らいつの間に…」
と史裕さんが青い顔をして言っていた。何のことだろう?と首を傾げたら、涼介さんが俺の頬にまたキスをした。びっくりしたけど、もう何回もされてるので慣れた。涼介さんを見たら、史裕さんを見て、とても楽しそうに笑っていた。どうやら史裕さんをからかっているらしい。そしたら俺も付き合わないといけないのかな、と思って、涼介さんに擦り寄ってみた。そしたら涼介さんも面白がって、俺の腰を抱きながら、何度も目だとか頬にキスされた。
史裕さんは青い顔をしてフラフラとどこか遠いところに行ってしまった。悪いことをしてしまったかな、と思ったけど、涼介さんのエロい目で微笑まれたら、まぁいいかと思った。
その後、松本さんに、
「藤原、涼介さんとラブラブだったね」
と言われた。びっくりした。そうか。傍目から見たらそう見えたのかと反省した。俺なんかと変な噂になったら、涼介さんに申し訳ないなと思った。
それを松本さんに言ったら、
「…いやぁ、涼介さんも凄い人なんだけどね。藤原もそれを上回るくらい凄いな。…涼介さん、苦労するなぁ」
と細い目をどこか遠くに彷徨わせていた。意味が分からなかった。今回の松本さんの冗談は、あまり面白くないと思った。
バトルが終わって、俺はどうやら涼介さんの望む走りが出来たみたいだった。
涼介さんは「よくやった」って俺の肩を叩いて、エロくない笑顔を浮かべていた。俺はエロい笑顔のほうが好きだけど、こういう晴れやかな笑いも悪くないなと思った。
帰る途中のSAで、涼介さんが俺にアイスをくれた。「ごほうびだ」と言っていた。アイスは好きだ。けれどそれはまた棒状のもので、俺は一生懸命アイスを舐めた。そうしないと、俺はトロいのか、すぐに溶けてしまうからだ。
涼介さんはまたあのエロい目で、俺が食べるのをずっと見ていた。そんな目で見られていたら恥ずかしくなって、俺は顔を赤くして、上目遣いで涼介さんを伺いながら、一生懸命アイスを舐めた。
食べ終わった後、涼介さんの機嫌はなぜか良かった。でもしばらくトイレに行ってなかなか帰って来なかった。
その間に啓介さんが来て、
「お前はわざとあんな食べ方をしているのか?」
と聞かれた。どうも俺のアイスの食べ方が汚いので注意されてるらしい。
「俺、棒状のものって食べるの苦手で、どうしても汚い食べ方になってしまうんです」
とヘコみながら言ったら、啓介さんはこの世の終わりを見たような顔をした。
そして俺の両肩に手を置いて、
「お前は絶対に、人前で棒状のものを食うな!いいな!ハレンチ罪で捕まるぞ?!…ただし、アニキの前でだけなら…いいんじゃないかなぁ…」
となぜか最後は気弱に注意された。そうか。俺の食べ方はハレンチ罪になってしまうくらい汚いんだ…。落ち込んだ。でもよく考えたら、ハレンチ罪なんて、笑える罪名はない。どうも俺は自分がからかわれたらしい事にやっと気が付いた。
Dのみんなは、俺が一番年下なのと、チームに慣れていないのとで気を使ってくれているのか、よく冗談を言ったりからかわれたりする。和ませようとしてくれているのだろうか。
それをこの前イツキに言ったら、
「…いや、拓海、お前それ違うんじゃ…いや…なんでもない…」
と冷や汗を流していたけど、Dの人たちはみんないい人ばかりだと思う。
今度、ちゃんとイツキにもそれを教えてやろうと思う。
2005.7.17