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ぴよぴよ
その6
-変態値-
高橋啓介 ★★★★★★★☆☆☆【かなり…】
藤原拓海 ★★★★☆☆☆☆☆☆【ほどほど】
高橋涼介 ★★★★★★★★★★【コンプリート!】
啓介は落ち込んでいた。
生まれ落ちて一番と言って過言ではないくらいに。
思い出すのはぴよの愛らしい笑顔。だがそれに重なるのはあの夜、不安そうに自分を見上げ、
「けーすけ…どうしたの…?」
縋るように名前を呼んだぴよの顔。
何故あの時、ぴよをもっと見てやらなかったのか…。
怒りに目がくらんでいた。言い訳ならそう言えるが、あの時それだけじゃなかった。啓介はあの時、ぴよを見てやる余裕がなかったのだ。
そんなぴよのことに加え、FDも動かない。
「…お前、今、どうしてんだよ…」
脳裏に浮かぶのは頬を染めて、恥ずかしそうに「けーすけ、だいすき」と言うぴよの姿。
「…ぴよ…」
じんわり、涙が浮かんでくる。しかしそれと同時に浮かんできたのは、先ほど兄が語った「もしも」の場合…。
…そ、そうだよな…あんな可愛い子がいたら、俺だって食うよな…か、監禁…いや、待てよ…一人とは限らねぇんじゃねぇか?もしや…ぴよ…。
『いやぁ、たすけてぇ、けーすけー』
『フン、叫んでも誰も来ないぜ。さあ、その可愛いお口で俺たちのを可愛がってもらおうか』
『お、おい、俺からだ』
『待てよ、俺だって』
『フフフ、焦るなよ。時間はたっぷりあるさ。みんなで、このお口を可愛がってやろうじゃねぇか、なぁ』
『ああ、そうだな』
『クソ、俺、もうたまんねぇ!』
『や、やだ、!けーすけぇ!』
…止めろぉ!俺のぴよが――!!
あふれ出る妄想に、ゴロゴロとのた打ち回る啓介。
はたから見なくても、立派な変態だ。
気もそぞろでバトルどころではない。
何より、愛車であるFDは走行不能だ。
急遽、以前のバトル相手のFDを借りることになったが、モチベーションは上がらない。
ギリギリと奥歯を噛み締め、行方の分からないぴよを思う。
しかし、徒に時間は過ぎ、夜半。
バトルの時間は迫ってくる。
卑怯な手を使った相手を許すことは出来ない。
バトルを止めると言う選択肢は、啓介にも、涼介にも無かった。
時間ギリギリまで愛する少年を探したのだが、見付からず焦燥ばかりが募る。
落ち着かず、ぴよの前では吸わなくなった煙草を何本も燻らせる。
「啓介さん」
そんな啓介に、拓海が声をかけた。
ほんのり、色疲れのようなものが見えるのは気のせいだろうか?
「ぴよのこと、心配なんですね。でも今はバトルに集中して下さい」
カッとなり、啓介は拓海の胸倉を掴む。
「……っ、お前は、心配じゃねぇのかよっ!」
拓海もまた強気な眼差しで、胸倉を掴む啓介の腕を振り払う。
「心配ですよ!けど…ぴよ言ってたんだもん!バトルしてる啓介さんがカッコいいって。自分のせいで啓介さんが腑抜けたバトルしたなんて知ったら、あの子もっと悲しみます!
だから今は、あの子のためにもカッコいい啓介さんでいて下さい!」
まるで双子のようなシンパシーを持つ、クローンとオリジナルであるからこそ説得力のある拓海の言葉に、啓介の怒りが治まる。
そして胸の中に抱えた気鬱は、全てバトルへの闘争心へと転化した。
「……あいつ、大丈夫かな」
負けられない。
そう思う。
ぴよが一大事だからこそ、ぴよのために負けられないのだ。
「…何となく、大丈夫な気がするんです」
ぴよが失踪してから、初めて拓海が笑顔を見せた。
ほんわりと、その笑顔はぴよに似ていて、啓介の心が甘くざわめく。
あの笑顔が恋しかった。
『けーすけぇ』
うっとり、頬を染め、自分の名前を呼ぶあの愛らしい子供を抱き締めたい。
「見た目よりも、図太いですよ?あの子。サバイバル術も教えたし、護身術も教えたし。そんじゃそこらの奴ら程度じゃ敵わないほど喧嘩も強いし。
何より、俺と涼介さんの子供だし…」
ぽぅっと頬を赤らめ、そう言う拓海に、啓介は、
『…ぴよがアニキと藤原の子供だっつーんなら、俺、ぴよと結婚したらアニキの息子になるのかな?』
と、ほんの少しずれた事を考えていた。
バトルは、呆気ないほどに啓介の勝利に終わった。
しかし、その後が良くない。
どうやら相手は何やら強面を呼んだらしい事が伝わった。
「どうする…」
動揺するメンバーを余所に、啓介は怒りの捌け口が晴らせる相手がやって来たことに喜んだ。
闘争心満載で挑んだバトルは、相手の肩透かしみたいな減速で終了し、フラストレーションは溜まったままだ。
鉄パイプを抱え、相手側のリーダーの前に立った瞬間、また啓介は拍子抜けを味わうことになる。
目の前の男は、かつて自分がヤンチャしていた頃の、いわゆる舎弟と言うものだった。
呆気ないトラブルの幕切れに、啓介は溜息しか出ない。
しかし、最大のトラブルであるぴよはまだ見付からない。
啓介はダメ元で、目の前のかつての舎弟に問いかけた。
「…なぁ、お前ら。こんな…ちっさくて、目も髪も栗色で、すげぇ可愛い子供、見かけなかったか?」
すると目の前の強面は、ニカっと、爽やか…ではないけれど、愛嬌はギリギリあるだろう笑顔を浮かべた。
「ああ、やはり啓介さんのお知り合いでしたか」
その言葉に、啓介だけではなく、Dのメンバー皆の顔が変わる。
「知ってんのか?!」
強面がコクンと頷き、そして背後を振り返った。
すると彼らの車の一台の後部座席から、啓介が見紛うことのない愛しい姿が現れる。
「ぴよ!!」
勢いのまま、啓介は飛び出しぴよの元に駆けつけようとするが、けれど啓介と目が合った瞬間、ぴよはビクリと震え、強面の一団の背後に隠れる。
「…ぴよ?」
その不審な様子に、啓介の脳裏に最悪の事態が思い浮かぶ。
「お前、あいつに何した?!」
そこにいる啓介は、かつてのヤンチャ振りなど比べ物にならないほど、迫力に満ちた姿だった。
まるで鬼神のような様子に、かつての舎弟は震え上がりながら、「いいえ!」と否定した。
「何もしてません!ただ、こんな山の中をうろついているご様子だったので保護しただけです!!」
ふと、啓介は目の前の舎弟のペットを思い出す。
彼の溺愛するペットはハムスター。
この目の前の強面は、見た目とは裏腹に小動物に弱いのだ。
彼がぴよに無体をする事は無いだろう。
元より、女子供に対し乱暴するような奴を懐に入れはしない。
「じゃぁ、何であいつは…」
「分かりませんが…俺たちが保護したときにはずっと啓介さんの名前を呼んで怯えてました」
「怯えて…」
瞬間、啓介の顔が青褪める。
その時のぴよの恐怖を想像し、胸が痛む。
いったい何があったのか?
早く、早くぴよを自分の手で癒してやりたかった。
啓介は背後に隠れるぴよに向かい、名前を呼ぶ。
「ぴよ。もう怖くねぇぞ。ほら、俺んとこに来い」
優しく、呼びかける。
すると隠れていたぴよが、ひょこりと顔を出す。
「け、すけぇ…」
その顔が泣き出しそうに歪む。
けれど、啓介の元にはやって来ない。
啓介はしゃがみ、ぴよに向かい両手を広げた。
「ほら。恐かっただろ?もう大丈夫だぞ」
安心させるように微笑むと、しかしぴよは首を横に振ってやって来ようとしない。
「でもけーすけ…ぴよじゃまでしょ?」
ぴよの言葉に、啓介は衝撃で目の前が真っ暗になったような気がした。
「ジャマって…んなワケねぇじゃん」
「だって…けーすけ、おれのことみなかったもん。けーすけ、もうおれのこといらないんでしょ?」
啓介はおのれの行動を後悔した。
怒りに頭に血が上り、ぴよの事を構えなかった自分に、きっと傷付いたのだろう。
啓介は眉を顰め、違う、と首を横に振った。
「いらなくなんてねぇよ!俺は…お前がいないとダメなんだ」
「けー…すけ?」
「戻って来いよ、ぴよ。それとも…もう俺のことなんて嫌いになったか?」
ぴよは涙目で首を何度も横に振る。
「ちがぅもん」
「じゃあ、来いよ。ほら!」
「…やくびょうがみでもいいの?」
誰だ、そんな事言ったやつは?!
啓介はぴよには笑顔を向けながら、心の中で沸々と怒りに燃える。
ぴよが失踪した理由に、自分のつれない態度だけでなく、第三者が加担していることを悟ったのだ。
「ばぁか。お前が疫病神なわけあるか。お前は…俺の天使だろ?」
啓介のその言葉に、赤面したのは聞いていた周りの面々だ。
涼介は弟のそんな恥ずかしい台詞に、「フッ」と微笑み、傍らの拓海を見る。
「あいつも中々言うようになってきたじゃないか」
「啓介さんって…やっぱり涼介さんの弟なんですねぇ」
兄夫婦?の会話を余所に、啓介とぴよは自分たちの世界を広げる。
「おれ、てんし?」
「ああ。天使で…そんでもって、俺のコイビト、だろ?」
うく、としゃくりあげ、ぴよの眦から大粒の涙が零れる。
「もぅ、うわきしない?」
「しねぇし。っつーかしてねぇし。そんなに心配なら、ずっと見張ってればいいだろ?俺の股間」
ぐは、と背後で何か噴出す音が連発しているようだが、啓介は気にしない。
「…べろちゅういっぱいしてくれる」
「ああ。俺の唾液いっぱい飲めよ」
げふ、と叫ぶ声が聞こえる。
「…けーすけと、おれのおまたスリスリしていい?」
「ああ。どんどんしろ」
ちょ、ちょっと…と誰かが止める声がするが、啓介は無視だ。
「……おれのおっぱい…おんなのひとみたいにちゅうちゅうしてくれる?」
だがその言葉に、さすがの啓介も言葉に詰まる。
「…やなの?おれ、おんなのひとみたいに、けーすけをよろこばせたいの?」
うるうると涙目で、啓介を見つめるその愛らしい仕草で、啓介の理性は消える。
「ああ、嘗めてやる。ちゅうちゅう吸付いて、お前のおっぱい女みてぇに腫れあがるくらいに吸付いてやる!!」
ドン、と宣言すると同時に、それを想像した啓介も、そして周りのメンバーたちも、股間に何か熱いものが溜まる。
そしてぴよは感極まって泣きながら啓介の腕の中に飛び込んできた。
「けーすけぇ!!」
「ぴよ!」
それは感動の瞬間だった。
しかし、傍観する人々の脳裏に、何か邪な妄想が加わってしまうのは仕方ないことだろう。
「けーすけ、けーすけぇ…ん、ふぅ…」
やっと再び手にした愛しい体に、啓介の理性が切れる方が早かった。
愛らしい少年の唇を、舌で塞ぎ、肉を絡め唾液を飲み込む。
「…ん、くぅ…ん…、はぁ…」
ぷちゅ、くちゅ、と夜の峠にいかがわしい音が響く。
「…フッ。見せ付けてくれるじゃないか。ほら、拓海…体が熱くなってきただろう?」
「や…涼介さん…」
「お前とぴよはシンクロしてるところがあるからな。…フフ、予想通りだ。もう硬くしてるじゃないか」
「だぁって…俺…」
「拓海は可愛いな。もっと可愛い姿、俺に見せて?」
弟に負けじと、兄まで峠に淫靡な音を漂わせる。
し、んと、水音だけが響く夜の峠の、静寂を破ったのは愛玩少年だった。
「け、ぇすけぇ…」
「どした、ぴよ?」
「おれ、ね…へん、だよ…」
「変?」
「からだ、あついのぉ…おちんちんがジンジンするよぅ…」
ゴクリと、啓介の唾を飲む音が聞こえる。
おそるおそる子供の下腹部に手をやった啓介の、顔が驚きと喜びが浮かぶ。
「お、前…」
「ジンジンするよぉ…けーすけ、たすけてぇ…」
子供の小さな膨らみ。
啓介は愛する子供が、もう「子供」と呼べなくなったことを悟った。
「……ああ。俺が何とかしてやる。ちょっと待ってろよ」
啓介はヒョイとぴよの体を抱き上げ、そして林の中へと消えていった。
かすかに聞こえる木立の音。
残された人々は、そこで何が行われているのか、想像しなくても分かる気がした。
「啓介め…先を越されたか。ほら、拓海。俺たちも行くか」
「だ、め…涼介さん…俺、歩けない…」
「フフ、可愛いな。ほら、俺の大事なお姫様。これでいいかい?」
弟と同じように、恋人を抱え上げる変質者がまた一人。
「や、恥ずかしぃ…」
「フッ。俺の前でもっと恥ずかしいこと、いつもしてるだろ?」
「それは…涼介さんが…!もう、バカ!」
「ああ、俺は拓海バカさ。もっと言ってくれ」
ガサガサと、もう一組も林の中へ消え、残された人々は思った。
「…俺、今すごく啓介と涼介が血の繋がった兄弟なんだって…理解したよ」
「ええ。俺もです。…兄弟ですねぇ」
「け、啓介さぁん!」
「……お前だろ、ぴよちゃんに余計なこと言ったの?もう今から逃げといた方がいいんじゃねぇのか?」
「そう…だな。あれは恐いな」
「涼介並に」
着々と、啓介の変態値が上がる。
コンプリートまであと一歩。
「あぁん、けーすけぇ」
「やぁん、涼介さぁん」
上がった甘い二種の声に、その場に居合わせた人々は聞かない振りをした。
それが身の為なのだと、彼らは本能で察していたからだ。
――啓介の変態値が3ポイント上がった…。
高橋啓介 ★★★★★★★★☆☆【やばい…】
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