BOSS-PAN
act.1
act.2
act.3
act.4
act.5
act.6
top
ぴよぴよ
その3
-変態値-
高橋啓介 ★★★☆☆☆☆☆☆☆【やや……】
藤原拓海 ★★★★☆☆☆☆☆☆【ほどほど】
高橋涼介 ★★★★★★★★★★【コンプリート!】
「え?その気にならない相手を、誘惑する方法?」
ぴよは頷いた。
ぴよは悩んでいた。
そして、彼は自分の生みの親である涼介を頼った。
常々、啓介から「アニキには近付くな!」と忠告は受けていたのだが、その啓介本人が、何か分からないことがあるとすぐに涼介に聞くことを、ぴよは見ていて知っていた。
だから涼介ならばきっと良い方法を教えてくれるだろう、とぴよは思ったのだ。
「…そうか。誘惑ね…相手はフッ…聞くまでもないか」
ぴよはオリジナル拓海とそっくりに、ポッと頬を赤く染めた。それを見た涼介の心に…悪魔が!
「おれね。けーすけにたくみみたいにすきされたいの。なのにけいすけ、いっぱいいってもほっぺにちゅうしかしてくんないの」
「…そうか。啓介は胸の大きな年上美人が好みだったからな。ぴよでは確かに難しいかも知れん…」
涼介のその言葉を聞き、背後に「ガーン!」と言うセリフが見えそうなほどショックを受けるぴよ。
「…いや、もちろん啓介はぴよの事が好きだろう。だが…やはりぴよはまだ子供だからな。色気が足りないんだよ」
「いろけ?」
「ああ。拓海見ていれば分かるだろう?あれは天然で色気を放出させている。あの漂うような色気に触れた途端、男は皆、我を忘れて本能のままに行動してしまうんだ…」
うっとり。どこか目線が遠くをさまよってしまった涼介。それを冷ややかな目でぴよは見つめた。
「けーすけが、それ、あにきだけだっていってたよ?」
フッ、とほくそ笑む涼介。
「当たり前だ。他の男共まで拓海に欲情されては敵わないからな。他の男共には俺が無言の圧力と言うのをかけて牽制しているんだ」
…だからぴよには啓介は欲情しているだろう?フフ…。それを言ってやればいいのに、悪魔が住み着いた涼介はそれをあえて言わない。
「よくじょー…むごんのあつりょく…けんせい…」
涼介は人間的にはどうしようも無い人物だが、ぴよにとっては難しそうな言葉をたくさん言う賢い人だとの認識がある。そこはオリジナルである拓海の影響であろうか?胡散臭さはもちろん持っているが、オリジナル同様賢い人には無条件降伏をしてしまうのだ。
「じゃ、おれ、たくみみたいにいろけだしたら、けーすけよくじょうしてくれるかな?」
「…そうだな。拓海のようになれればな」
「あにきー、どうしたらいろけってだせるのー?」
ぽやぽやと首を傾げながら、座る涼介の膝に手を乗せ懇願するぴよ。
涼介にとってぴよは、まんまミニチュア拓海だ。そんな拓海の仕草で、しかも無垢なままの存在にそんな事をされたら、悪魔が咆哮を上げて暴れだす。
涼介の心に住み着いた悪魔。
その名前は「浮気心」。
拓海はもちろん愛している。
しかし、このミニチュア拓海も、まだ幼児だった拓海に悪さを教えているようで、それはそれでまたそそるのだ。
うーん、と考え込む振りをしながら、にやりと心の中でほくそ笑む涼介。
そして彼は言った。
「…色気を覚えるには…やはり実践でしか身に付かないだろう。大丈夫、安心しろ。あの拓海の色気も、俺があいつに教えたものだ。いわば俺はフェロモンマイスターだ。この俺にかかれば、ぴよもきっと色気満載で、啓介ぐらい余裕で誘惑できるようになるだろう」
涼介の胡散臭さしかない言葉に、「おお」とキラキラの目で感動し、頷くぴよ。
「はい。おねがいします、ふぇろもんまいすたー」
普段の言葉遣いは啓介の影響であまり宜しくはないが、性格はオリジナルの同様に素直でがんばりやな子なのだ。
涼介の言葉を疑いもせず、ぴよは頷いて、礼儀正しく頭を下げた。
「ではまず、レッスン1だ」
「はい。ふぇろもんまいすたー」
涼介はぴよの服に手をかけた。
ぴよの服は、『ずっとこんな娘が欲しかったのよ!!』と叫ぶ、ぴよを溺愛する高橋母によって買い与えられた愛らしい子供服を着用している。本当なら啓介は、ぴよにはもっとカジュアルなものを着せたかったのだが、高橋母の趣味で実はロリータ系のヒラヒラな服が多かったりするのだ。
そして今のぴよの服も、レースの付いたボタンシャツに、身体にぴったりとした黒の半ズボン。足にはリボンの付いたハイソックスと、さすがあの涼介の母!ならではの服装をしていたりする…。
「まずは、チラリズムだ。通常裸などは有効であったりするのだが、このチラリズムと言うのは、実は裸などよりも有効的な誘惑方法であったりするんだ。
…いいか。人は隠された部分にエロティシズムを感じる。つまりこう…ボタンを二つほど外してだな…そうだ。で、ズボンも、前のボタンは開けて、きわどいところまでファスナーを…そう、その辺だ。その加減は難しいが、基本はこうだ。見えそうで見えない。そんな風情に男は誘われるんだ」
「はい。ふぇろもんまいすたー」
「さあ、次はレッスン2だな。その格好のまま、俺を上目遣いに見上げてみろ?そうだな…跪いてごらん…で、手を、そう、俺の膝の上、ああ…そう。内腿部分に触れるように…そうだ。そのまま俺を上目遣いで…見る…良し!完璧だ!」
「…ふぇろもんまいすたー。なんかこかんふくらんでるー」
「それはお前のレッスンが成功している証だ。それがもっと膨らめば膨らむほど、お前の色気が溢れているという証拠なんだ。もっと膨らますように、頑張れ」
「はい。ふぇろもんまいすたー」
「ではレッスン2の続きだ。その上目遣いのまま、唇をゆっくり舌で舐めてごらん?そう。ゆっくりだ。ああ、うまいな、ぴよは。自分の指を咥えて見せるのもいいな。素晴らしいよ、ぴよ」
「はい。ふぇろもんまいすたー」
「さて、レッスン3だ。今度は俺の目を見つめたまま、ゆっくりと立ち上がって、俺の内腿に手は触れたままだ。そう。そのまま俺の膝の上に乗ってごらん?大きく足を開いて…跨るんだ」
「はい」
「…よし。乗ったら、股間部分をすり合わせるように…そう。いいな、ぴよ。もっとだ」
「こうですか、ふぇろもんまいすたー」
「そうだ。俺の股間部分が固くなっていってるだろう?それは成功の証だ。覚えておきなさい」
「はい」
すりすり。言われた通りにこすり合わせるぴよ。
「さあ、さらにレッスン4だ。その体勢のまま、いいか、ぴよ、こう言うんだ。
『お願い、僕を好きにして?もう、どうにかなっちゃいそう…』
…さあ、ハイ!」
「おねがい、ぼくをすきにして。もうどうにかなっちゃいそう」
棒読みで言い上げるぴよ。しかし涼介には満足であったらしく、股間の高ぶりはさらにヒートアップ。
「あ、かたくなりました、ふぇろもんまいすたー。おれ、じょうずですかー?」
「ああ。上手だ。さらに高等技術として、俺の顎を舐めたり、首筋を噛んだり…そうだ。うまいぞ、ぴよ。それで、俺の首に両手をかけてごらん?そして腰をすり合わせながら耳元で囁くようにこう言うんだ。
『…早く、これちょうだい?』
…さあ、ハイ!」
「はやくこれちょうだい」
その瞬間、フェロモンマイスターと言う名のただの鬼畜の理性の糸がブツリと切れた。
「…拓海!!」
涼介の脳内ではぴよは幼少時の拓海の姿。
その拓海に大人な拓海でもしてくれないような誘惑方法で、誘われたのだ。これで勃たなきゃ男じゃねェぜ!!と、なってしまい、思わず涼介は本能のままにぴよをソファに押し倒し、その細い身体を抱きしめて、乱れていた服に手をかけ、その愛らしい唇にキスを…しようとしたその瞬間。
バサバサバサ。ドサ。
不意に聞こえた物音と、そして振り向くのが恐ろしいほどの、見なくても分かるほどの激しい怒りの空気。
硬直し、おそるおそる振り返った涼介の目に映ったのは…。
ドア前で、呆然と立ち尽くす啓介の姿と、怒りと悲しみに打ち震える拓海の姿。
「…!!!…ち、違う、拓海、これは、その…」
慌てて起き上がり、浮気男の常習、言い訳をしようとする涼介だが、いつも恥ずかしそうに、それでも愛おしそうに見つめてくれる恋人の視線はアラスカの風より冷ややかだ。
「…ナニが違うんですか、涼介さん?股間。それどう見ても勃ってるじゃないですか?」
「だ、だからこれは、ぴよに頼まれて…つい…」
「つい?!ついで子供を押し倒して、勃起させてたって言うんですか?!やっぱり涼介さん、俺なんかよりぴよのほうが良かったんだ!俺なんていらないんだったら、早く言ってくれれば良かったじゃないですか!本当は、ぴよだって自分が孵化したかったんでしょう?俺、知ってるんですから!涼介さん、ぴよの試作品とかいっぱい作って、ハーレム作るつもりだった、って!」
「た、拓海…なぜそれを…」
「緒美ちゃんが教えてくれました!涼介さんが、チビ拓ハーレム作るつもりだった、って!どうせ俺なんて、もう年食っちゃってるし、子供の若さには勝てませんよ!!」
「ま、待て拓海?!」
「聞きたくありません!」
ボカッ!!
拓海の左フックが炸裂!良い音が鳴り、涼介の頬が二倍に膨れ上がった。
「涼介さんのバカーっ!!」
バタバタと部屋を走り去っていく拓海。
涼介はそれを追いかけようとするが、先ほどまで絶好調だった股間の高ぶりが邪魔をした。
「ま、待ってくれ、拓海!!…っイテテ…」
股間を抑えながら、ヒョコヒョコと拓海の後を追いかけていく涼介。
そして部屋に残されたのは、ソファに沈み込む乱れたぴよと、啓介の二人だけ。
「……ぴーよー??!」
呆然としていた啓介が、ふつふつと怒りの炎を吹き上がらせていく。
その怒りを感じ取ったぴよは、びくりと身体を縮込ませ、啓介に見えないように顔を手で隠した。
「何でこんな事したんだ!アニキと拓海が恋人同士だってことは分かってんだろ?その二人を邪魔したかったのか?!」
「………」
「ぴよ!それともぴよは、アニキが好きなのか?だから邪魔したのか?!」
「…ち、ちがうもん!」
啓介の言葉に、伏せていた身体をぴよは起き上がらせた。
「…お、おれ、けーすけすきだもん!あにきすきじゃないもん!」
「じゃ、何でこんな事したんだ?!」
「…だって、おれ、けーすけにたくみみたいにすきされたかったもん…だからあにきにきいたの。そしたら、あにき、おれにいろけがたりないからって、おしえてくれるって、ふぇろもんまいすたーって…」
…フェロモンマイスター??
「………ハァ」
よくは分からないが、どうも兄が全面的に悪いような事だけは分かった。
たぶんあの兄の事だ。悩むぴよをうまく口で言い含めて、悪戯されたってのが真相なのだろう。
啓介は溜息を吐き、ぴよの乱れた服を調えさせ、両腕で抱え上げぎゅっと抱きしめた。
「…アニキには近付くなって、言ってあったろう?俺が好きなら俺に言えば良かったじゃねぇか。何でアニキに教わろうなんて思ったんだよ?」
「…ふ…えぐ…だって…けーすけ、おれにいつもほっぺにちゅうだけなんだもん…おれ、けーすけにもっといっぱいされたいもん…」
啓介の腕の中で、べそをかき始めたぴよ。啓介は愛おしさから抱きしめる腕に力を込めたが、発言した内容に、一瞬、腕の中のぴよを落としそうになった。
「ぴぴぴ、ぴよ!そ、そんな事は大人になってからだ!」
「や!!おれ、いますぐされたいもん!」
じゅわ。
…今、何か…股間のほうに熱いものが…。
少し前かがみになる啓介。
「…え、ええとだな、ぴよ…大人にはルールってものがあってな…その中には子供にはイヤラシイことをしてはいけないってものが…あって…オイ、ぴよ!!」
かぷ。
ぴよが啓介の首筋を噛んだ。そしてその噛み跡を舐め上げる。
さらに顎にも舌が這う。
「けーすけぇ…おねがい、ぼくをすきにして?もう、どうにかなっちゃいそう…」
レッスン時の棒読みが嘘のように、情感たっぷりに言うぴよ。どうやら彼は本番に強いらしい。
「…ぴ、ぴよ、さん?あの…や、お前…」
さらにぴよは攻撃をしかける。
「…はやく…これちょうだい?」
しかもアドリブ。ぴよは腰をすり合わせると言う基本技から、手で直接高ぶりに触れながら言うという高等技術を披露した。
「…ぴ、ぴ、ぴよ…いいのか…」
「うん…けーすけぇ…すき…」
「ぴよ!!」
啓介は先ほどの涼介のように、ぴよをソファに押し倒した。
……だが。
「…でもけーすけぇ…これからどうすんのー?」
「………は?」
慌しく自分のジーンズのファスナーに指をかけていた啓介は、とぼけたぴよの言葉に、ぴたりと動きを止めた。
「おれ、これいじょうわかんねーの。あにきとたくみも、これからさきみせてくれないじゃん。ねー、けいすけぇ、このあとってなにがあるのー?」
…そうでした!!
実はぴよは何度も涼介たちの濡れ場を目撃したことはあるのだが、いつもそれは触り部分で啓介などにより避難されてしまっているため、本番というものを見たことがないのだ。
一瞬、興奮状態から我に返った啓介。
そして自分が組み敷いているものを見れば…子供。
本番も知らない子供なのだ!
…お、俺は何てことを…。
股間に集まった熱が、しおしおと引いていくのが分かった。
「あ、けーすけ、こかんちっちゃくなってく!どーして?!おれがいろけないから?!」
…お前、アニキに何を教わりやがった?!!
「…い、いや、そうじゃなくてだな、やっぱりこういうことは、ちゃんと大人になってからだな…」
「…けーすけ、おれのこときらい?」
「…好きだけどよ」
「じゃ、いいじゃん」
良くねぇよ!!
「だって、けーすけ、おれほっぺにちゅうだけじゃやだ。もっとしてほしいもん!」
ゴホゴホと咳き込みながら、冷静を保とうと努力する啓介。
「…じゃ、じゃあ、ぴよ。分かった。アニキと拓海たちみたいにどうして欲しいんだ?」
「んーと、おくちでちゅうするのー。ながいやつー」
「…分かった。口にチュウするんだな。してやる。それでいいだろ?」
「ほんと?!けーすけ、おくちでちゅうしてくれる?!ちゃんとながいやつだよ?」
「ああ。分かった」
「じゃ、いまして」
…こいつ子悪魔だー!!
「…う…」
「けーすけぇ、はやくぅ」
「…………」
この日、啓介は少しずつ変態への道を歩み始めて行く自分をはっきりと自覚した。
「…けーすけ。またしてね」
再び熱を持った股間を、どう治めようかと苦悩する高橋啓介21歳であった。
――啓介の変態値が2ポイント上がった。
back
top
next