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 涼介さんはムッツリだ。
 俺が好きだから、そうなっているんだと、そう思い込んでいた。
 けれどそれら全てが間違いなのかも知れない。
 その事実を突きつけられ、俺は迷子の子供のようになった。
「…ふ、え……」
 涙が出た。
 小さな子供のようにしゃくりあげる。
「た、拓海?!」
 俺の太ももを撫でさすっていた涼介さんが慌てて顔を上げる。
 そして立ち上がり俺の顔を覗き込み、泣いている俺に慌てふためく。
「どうした?辛かったか?それとも苛めすぎたか?…すまない、俺が悪かった!謝る!」
 グスグスと泣きじゃくる俺の身体を抱き起こし、ギュッと抱きしめ椅子の上の涼介さんの膝の上に乗せた。
 俺の頭と背中を、何度も宥めるようにやさしく撫でながら、心底困り果てた声で涼介さんが言った。
「なぁ…頼むよ。泣き止んでくれ。俺はお前に泣かれると、どうして良いか分からなくなる」
 やさしいやさしい涼介さんの手。
 でも、今はそれを無条件に信じられない。
「だ、って…」
「え?」
「…道具、って言った…涼介さん…」
「え?!」
 俺のボヤきに、一瞬困惑していた涼介さんだけど、すぐに思い当たり頷いた。
「あれは違う!そうじゃなくて…そうじゃ…なくてさ…」
 涼介さんの声が、どんどん小さくなっていく。
 コトリと、その顔が俺の肩に落ちる。
 ぎゅっと俺を抱きしめる腕の力が強まった。
「……我ながら、最低だと自覚はしてるんだ。俺がお前に酷い事をしてるって事くらい」
 …ゴメン、否定できない。確かにあんたは俺にとんでもないことばかりしてる。
「最初からそうだったろ?お前が性的快感に不慣れなのに付込んで、身体から陥落して俺の味を覚えさせた」
 …確かに。
「お前が普通の…女に興味のあるヤツだって知ってた。まだ高校生だしな。セックス慣れしてないようだったし、だから一回ヤっちまえばこっちのもんだって、そう思った」
 …最低だ、この人。
「お前が流されやすいヤツだって事も、すぐに分かった。身体から慣らして、女相手に勃たなくなるくらいに男同士の快感を刻めば…いつか全部俺のモンになるって…分かってたんだ」
 …否定できない。流されやすいのは…確かだ。けど…。
「さっき、さ。お前に初めて『好き』って言ってもらえて、本当に嬉しかったんだ。けど一緒に…何て言うか、罪悪感も感じたよ。ああ、とうとう騙されちまった、って」
 けど…あんた、間違ってる。
「俺はさ…自分の欲望のためにお前を騙して、そしてセックスの相手にしてる。お前の意思を曲げて、まるで…道具みたいに扱ってるなって…自己嫌悪してたんだ…」
 俺は涼介さんのネクタイを引っつかんだ。
 そして、顔を寄せ、噛み付くようにキスをする。
「ば〜か」
 バカだ、この人。
 本当に「俺」バカ。
「俺に意思はあるよ。そりゃ、流されやすいのは確かだけど、それはあんた限定だよ。他の奴になんて絶対流されない」
「でもそれは俺が付込んで…」
「好きでもない相手に触られても、気持ち悪いだけなんだよ」
 珍しい。涼介さんがキョトンとしてる。
 その態度から…この人の過去が何となく伺える。
 きっと、好きでもない相手とHが平気で出来てた人なんだろうな…悔しい。
 膝を抓ると涼介さんが顔をしかめた。
「女なら分かるけど、男相手なんだよ?俺、ホモじゃねぇし。それとも涼介さんは多少可愛いからって、男相手に触られてHな気分になるのかよ?」
 …あれ?この人ってホモだっけ?そしたら話は違うかも。
 涼介さんは暫く考え、そしてニッと微笑んだ。
「いいや。寒気が走るだけだな」
 良かった。ホモじゃないらしい。
 と言う事は、この人が男相手に反応するのは…俺限定ってことか。
 …参ったな。嬉しいじゃないか。
「しかし、局部に直接刺激を与えられれば、生理的な反応は示すが」
 暗に、それは俺がそうだったと言いたいんだろうか?
 ……これだけは言いたくなかったんだけどな…。
 でも、言わなきゃこの人の誤解は解けない。
 仕方が無い。男は度胸だ。後は山となれ。
「俺は…あんたに一目惚れだったんだよ!」
 涼介さんが目を見開いた。
 くそぅ…言っちまった。
「だから……触られたら勃ったし、あんたのも舐めたし、女みたいな事をされても許したんだ…」
 頭から湯気が出そう…。
 恥ずかしすぎて涼介さんの顔が見れない。
 けれど、突然後ろをなぞる指の感触に、思わず涼介さんの顔を見てしまった。

 エロ悪魔。

 何なんだよ、その世界は我が物みたいなデレデレのエロい顔は。
 だから…言いたくなかったんだ。
「…へぇ。じゃあ、俺がお前のここに指を突っ込んでグショグショにしても…」
「あ…ん…」
 ああ、すっげヤバい。
「俺のこのデカいのでお前のここをドロドロにしても…」
 俺の蕾に固くて熱いものが当たる。
「…いいんだな?」
 悔しい。けど、……クソ、欲しい。
 俺は涼介さんの首にしがみつき、そして耳元に唇を寄せ、囁いた。
「………俺の中…涼介さんの熱いのでいっぱいに…して?」
 太ももに当たる涼介さんの固いのがビクリと跳ねた。
 ふふん、どうだ。
 俺だって馬鹿みたいに流されてたわけじゃないんだ。
 涼介さんの萌えポイントくらい、しっかり学んでるんだ。
 けれどそんな俺の小さな逆襲に、涼介さんは倍返し。
 …するんじゃなかった。
 俺の身体を持ち上げ、机の上にうつぶせて尻だけを抱える。
 無防備な体制に、身を竦ませる俺の耳に、キュポンという蓋を開ける音がした。
 …覚えがある、その音。
 ローションだ!!
 案の定、俺の狭間に冷たく濡れたものが触れてくる。
「傷つけないようにいっぱい濡らしてあげるよ」
 そのウキウキの声…。
 というか、ローション用意してたって事は…やっぱヤル気満々だったんじゃねぇか。
「あ、んふぅ…う…」
 ああ、でもやっぱ涼介さんの指は器用で気持ち良い。
 そこの快楽を知り、前を擦るオナニーでは物足りず、実は一人でするときそこを弄る時がある。
 でも自分の指ではこんな風に気持ちよくなんてならない。
 いつも不完全燃焼で、涼介さんの指ばかりを思い出し、悶々とするだけだ。
 快楽を素直に受け入れる俺の尻は、しっかりと物覚えの良い生徒宜しくすぐに緩む。
 内部から腸液がにじみ出てくるのでさえ感じる。
「…フ、すぐにでもイきそうだな」
 …うん。だから早く欲しい。
 誘うように尻を振れば……ムム?ゴムの音?
「学校だからな。さすがに痕跡は残せないだろ?」
 そう言いながら、俺の前にもゴムを嵌める。
 ……すっげぇ計画的じゃないか、この人?
「ほら、今拓海のお待ちかねのものをあげるよ」
 …萎えるよ、そのセリフ。
 でもそれで萎えない俺は…もう涼介さん同様のムッツリだ。
 ぐい、と先端が割り込むように押し入る。
 内部に塗り込められたローションが、開いた口から漏れ出て、クチュリと淫猥な音を立てる。
「…あ…あぁ……」
 開かれる。
 本当はそんな用途にないその場所が、涼介さんの形に。
 グイグイと無理に押し入ってくる乱暴で凶悪なそれ。
 なのに俺のそこは拒絶せずに、逆に受け入れるように収縮し誘い込む。
「…ああ、相変わらず拓海のここは欲張りだな」
 涼介さんがクスっと笑いながら俺の背中にキスをする。
「ぅん……」
 女みたいなうめき声が漏れる。
 ビクビクと背中から痙攣が走り、全身を熱で埋める。
「……気持ち良い?」
 ズクリと、内部で大きなものが蠢く。
 聞くなよ、ホント。
 言わなくても煽動する俺の内部が、その答えを出してるってのに。
「ほら。言わないと動いてやらないよ」
 …意地悪だ。
 ムカつく。
「ほら、どうした、拓海?」
「………」
 俺は頑として口を閉ざした。
「良いのか、動かなくて?いつまで経ってもイけないぞ?」
 俺の態度に、ちょっと涼介さんの焦りが見えてくる。
 ふふん。
 俺だっていつまでもガキじゃないんだ。
 涼介さんを……煽ってやる。
「…いい、よ…」
「え?」
 俺は振り返り、自分では精一杯のエロい顔を意識し、涼介さんを見上げた。
「そしたら…ずっと涼介さんとこのまま、でしょ?」
 ふふん。膨らんだ。
「涼介さん…ずっと…中に欲しいもん…」
 …もん、ってオイ。自分で言いながら…サムい。
 けど涼介さんには絶大な効果を発揮した。
「拓海!!」
 俺をひっくり返し、仰向けにした涼介さんは、肩に俺の両足を担ぎ、ガンガンと獣のように突いてきた。
 華奢な足しか持っていない机が、激しくギシギシと軋み、狭い机のせいで俺の身体はずり落ちそうになる。
「…や、やだ、涼介さん…落ちる!!」
「堕ちろよ、堕ちちまえ。…俺が拾ってやるから」
 その堕ち、じゃねぇんだけど…ヤベ、キュンと来た。
「あ、あぁ…!!!」
「ぅ、拓海…!」
 ギュウと俺の内部が蠢き、涼介さんを締め付ける。
 ズン、と最奥を激しく突かれ、まるで爆発が起こったかのように頭の中が真っ白になる。
 そして奥に、ゴム越しでも涼介さんの迸りが弾けたのが分かった。
 脱力し、机の上にぐったりとする俺の身体の上に、同じように息を切らせた涼介さんの身体が圧し掛かってくる。
 大きくて、重たい。
 首筋から涼介さんの汗の匂いがした。
 俺はそれを感じながら、ぎゅっとその身体を大切なもののように抱きしめた。

 初の教室H。

 こんな風に、今まで一番の大満足なHだった。








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