「・・・・・俺は変態だが罪は犯さない」
地から這うような声が、涼介の口から洩れた。
それに、戸惑いながらも拓海は頷いた。
「・・・そっすね。涼介さん、何だかんだ紳士でしたね」
欲情はするが、無理に触れたり、欲望を押し付けるわけでもない。
だがそんな拓海の言葉を否定するように、涼介は唸った。
「だが俺は今、罪を犯そうとしている・・・」
まぁ、ある意味彼は歩く猥褻物陳列罪のようなものだが。
拓海が理解できず首を捻っていると、涼介の手が拓海へと伸ばされた。
そしてその細く長い指が、拓海の太ももに触れた瞬間、
「!!!」
涼介が豹変した。
気付けば、涼介の顔が太ももにうずめられている。
両手で拓海の太ももを両方抱え、その狭間に顔を埋めていた。
「お前・・・!何だこの太ももは!?白くて・・・適度な弾力・・・触れてはいけないと、必死に我慢していたというのに、見せびらかすようにこすり合わせたり、涙目で見上げたり・・・クソっ!襲ってくれと言うことなんだな!!」
ぐりぐりと太ももの間に顔を擦り付ける涼介は・・・紛れもなく変態だった。
ほっ、と拓海は安堵の息を吐いた。
何だ、さっきの冷たい態度はただのやせ我慢か。
「・・・藤原、頼む!お前のこの剥き出しの太ももに俺のペニスを擦り付けさせてくれ!!」
ハァハァと涼介の呼吸が荒い。
いつもの拓海なら、ここでドン引きするところなのだが、さっきの冷たい態度の反動だろうか。
そう言われる事が嬉しかった。
だから、
「え、でも涼介さん尻フェチですよね?じゃあ、こっちの方がいいんじゃないですか?」
ソファに上半身を預け、四つん這いで涼介に尻を向けた。
ほんのり、揺らめかせたのはオマケだ。
「・・・・・・・」
背後の涼介は無言だった。
あまりの静けさに、四つん這いのまま背後を振り返ると、彼は口を開けたまま硬直していた。
「え、と、涼介さん・・・ダメですか?」
ダメではないはずなのだが。現に、涼介の股間は服の上からでもMAXに勃起しているだろう事が見て取れる。
やはり脱がなければ駄目なのだろうか?
しかし、さすがに脱ぐのは難易度が高い。
じゃあ、せめて半ケツくらいなら・・・。
そう思い、拓海はホットパンツの前ボタンを外し、布地をずり下げた。
「こ、これでどうですか?!」
拓海は知らなかった。
それは尻フェチにとっての絶対領域。
腰部分から、尻の割れ目が見えるか見えないかの、上衣と下衣の間に見える奇跡の境目。
そう、絶対領域。
それに惹かれない尻フェチはいない。
・・・いや、今の光景は尻フェチでなくとも惹かれてしまうだろうが。
欲望を煽る光景を目の当たりにし、あまつさえ誘うような仕草と言動。
涼介は壊れた。
理性が決壊し、本能に忠実な獣となる。
一瞬で、涼介の下半身から衣服が消えた。
いや、脱ぎ捨て、放り投げられた。
拓海の視界に、飛んでいく涼介の服が見える。
「わぁ、早着替え・・・」
ちょっと違う。
人はあり得ないものを見ると、逆に冷静になってしまうものだ。
この時の拓海もそうだった。
危機感は一切無く、一瞬で下半身裸になった、変質者スタイルの涼介に純粋に驚いていた。
そして次に目に入ったのは、綺麗に割れた腹筋の、その下に続く、凶暴なまでの欲望の証。
拓海も立派な男子だ。
それに見覚えが無いとは言わない。他人のを見る機会は少ないが、皆無と言うほどではない。
ただやはり、勃起したものを見るのは初めてであるし、ましてや色と形がこんなに自分と違うと、恐れよりも感嘆が先に来る。
男性として憧れる大きさと形だろう。
思わずまじまじと見ていると、涼介が片手でそれを支えながら拓海に近寄ってきた。
「・・・・・・藤原。本当に良いんだな」
ゴクリと、涼介が唾を飲み込む音が聞こえた。
彼を中心に広がる緊張感。拓海もまた唾を飲み込み、頷いた。
「ど、どうぞ!」
ドキドキして、顔が真っ赤になっているのが自分でも分かった。
そして涼介が近寄り、無防備な拓海の項に彼の興奮した吐息が感じられる。
「・・・藤原」
名を呼ばれ、拓海はぎゅっと目を瞑った。
半尻になった肌の、ほんのりと見える割れ目に、彼の熱を感じた。
最初熱さしか感じなかったそれは、擦り付けられるたびに、どんどん滑りを帯びていく。
彼が何をしているのか、拓海には見なくても想像がついた。
――りょ、涼介さんのアレが俺の尻で扱かれてる・・・!
涼介の吐息がどんどん激しくなっていく。
拓海は童貞ではない。
過去、一度きりだが女の子と経験がある。
しかし経験豊富な女子が相手であったため、自分が頑張った記憶よりも、何が何やら分からないうちにイタダカれたと言った方が正しい初体験だった。
だから女子に性的興奮を覚えたと言うより、性的興奮を煽られての行為だった。
あの時から、拓海は性的なことに対し淡泊な自分を自覚していた。
女の子に対する興味も薄いし、自発的に性行為をしたいと言う気持ちにもなれない。
けれど今は。
拓海の下腹部に熱が溜まっていた。
刺激のない状態で、もう半分硬化している。
涼介の擦り付ける動きが激しくなると同時に、どんどん硬さが増していく。
拓海の目尻に、涙が浮いた。
――お、俺、涼介さんにされて、興奮してる?!
何故だ。
あの初体験のとき、女子に直接的な刺激を与えてもらわないと立ち上がらなかったものが、今は涼介の吐息と感触だけで先走りが滲むほど興奮している。
拓海はちらりと背後の涼介を振り返った。
目を伏せ、荒い呼吸で拓海の尻に欲望を擦り付ける涼介の顔。彼の欲望は体格に見合った立派なものだった。
それが、拓海の尻の狭間を往復している。
ほんのり頬を紅潮させ、額に汗が浮いている。
魅入られたようにその光景を見ていた拓海の視線に気づいたのか、伏せていた涼介の目が拓海を捕らえる。
熱を孕んだ眼差し。
トロリとした粘液上の艶と、熾火のような熱。
その身の内から沸き起こるような熱が、拓海にも伝染し熱い欲望を生む。
「・・・・・・・っ!」
知らず、臀部に力が入っていた。
図らずとも、それは割れ目を堪能していた涼介の欲望を刺激する形となる。
「・・・っぅ、藤原!」
ピシャリと、拓海の尻に熱い飛沫がかかる。
それが何であるのか、同じ男である拓海には分かった。
瞬間、ゾクゾクとした愉悦が拓海の背筋を上る。
こらえ切れない衝動は、拓海の理性を決壊させ、堪えていた欲望を解放させる。
「ふぁ、ん!」
耐え切れず、興奮しきっていた自分の股間に手を伸ばした。
開いたボタンの隙間から触れ、もどかしげに衣服の下から取り出し、上下に擦った。
「・・・藤原・・・興奮してるのか?」
背後からの涼介の声に、一瞬我に返り、羞恥に身を捩るが、衝動には勝てなかった。
「りょうすけさ・・・おれ・・・ぁあ、ん・・・」
女のように声が出る。
彼を求めるように尻を捩り、誘うように目で懇願した。
ゴクリと、またも涼介が唾を飲み込む音がし、萎えていた彼の欲望が再び立ち上がるのが見えた。
「・・・・・・いいのか?」
掠れた彼の声には、欲望が絡んでいた。
拓海は涙目で頷いた。
もう。
滅茶苦茶にしてほしかった。
身体中が熱くて仕方ない。
涼介の手がそっと拓海の腰に触れ、半分露出した状態でとどまっていたホットパンツを引きずりおろした。
「下も・・・いいか?」
それにも拓海は頷いた。
股間を扱いていた手を止め、彼の手の動きを助けるように腰を突き出す。
太ももの辺りで布地を絡ませ、露わになった尻に、涼介の感嘆のため息が聞こえた。
「・・・やはり・・・お前の尻は美しいな・・・。いや、尻だけじゃない。この太ももも・・・」
やんわりと尻を撫でていた指先が太ももに向かう。
その微かな感触に、拓海の欲望がますます煽られ、堪え切れない息を漏らす。
ちゅ、と尻に涼介の唇を感じた。そのまま舐めあげられ、耐え切れず拓海の目から涙が零れた。
「・・・尻だけじゃないな。藤原は・・・どこもかしこも俺の欲望を煽る・・・」
涼介の指が、とうとう前に回り、熱を孕んだ拓海の欲望に触れた。
それと同時に、合わせた太ももの間に、涼介の硬い熱が差し込まれた。
「俺は尻フェチだが・・・フッ、どうやら藤原フェチの方が正しいかもな」
太ももに挟まれた彼の欲望が、股間の狭間をなぞるように上下する。
そして拓海の欲望も、リズムも合わせるように涼介の手で扱かれる。
「お前の表情、目、唇、このペニスにも煽られるよ」
見た目通り器用な指に煽られ、拓海の欲望がますます増していく。
項に何度もキスが降る。
ゾクゾクが止まらず、身もだえた拓海の顎を涼介が捉え、今度は唇にキスを降らせる。
最初ついばむようだったそれは、やがて口内に舌を潜り込ませ、蹂躙するように拓海の唇を貪った。
初体験時にも味わえなかった強烈な快楽に、拓海は目の前が霞むのを感じていた。
まるで全身で感電しているかのようだ。
頭の中も痺れて、何も考えられない。
「拓海・・・好きだよ」
瞬間、お腹の中で爆発が起こったかと思った。
涙腺が一気に緩み、目から涙が溢れ、歓喜の感情が胸を締め付け、と同時に拓海の欲望を解放させた。
涼介の手のひらを、べったりと拓海の情欲の名残が濡らす。
ふにゃりと弛緩した拓海の体を抱きしめながら、涼介は溜まらない愉悦を感じていた。
自分の言葉で達した拓海に、涼介の欲望も煽られる。
股の間を擦り付けていた動きを速め、自分の下腹部を拓海の尻に音を立てて叩き付ける。
白い尻が、その衝撃でほんのりピンクに染まっていく。
尻肉に手をかけ、両手で広げ狭間を露わにする。
割れ目の奥の、小さな窄まりが涼介の動きに合わせるように微かに収縮しているのが見えた。
素直な体。
愛おしさに涼介は拓海の体に縋り付いた。
ふと、今まで関心の無かった上半身に意識を向ける。
そっと手を滑らせ、胸部の小さな突起に触れ、指でなぶると拓海の感極まった声が漏れた。
今まで乳首はノーマークだったが、これはこれで良いものだ。
後でペニスを擦り付けよう。
そう思いながらも欲望を解放するべく腰を速めた。
先ほど達したはずの拓海の欲望もまた、涼介と同じように限界を訴えている。
二本の竿を合わせるようにこすり合わせ、手のひらで握りしめる。
男女の関係のような挿入は無いが、
「・・・んぁっ!」
「・・・・・・っく」
通常の交わり異常の快楽をお互いにもたらしていた。