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小柏の野望(※一部R18)
群馬県高崎市。
夜。自室にいた涼介の携帯が鳴った。
着信の相手を確認し、涼介はかすかに眉間を寄せた。
「はい」
『あ、高橋サンですか、あの、俺…』
「コードネームを言え」
『………プチトマト…』
「よし。密偵ナンバー85か。何だ?拓海に何かあったか?」
『…あの、いい加減、そのコードネームってのを止めてほしいんですけど…』
「用件を言え」
『あ、ハイ。実は…大変なんです!』
涼介が密かに保持する拓海専用隠密、密偵ナンバー85こと渋川にお住まいのイツキ君からの報告に、涼介は驚愕の叫び声をあげた。
「…何だと?どういう事だ!」
同じ時間、同じ頃。
栃木県の某銀行にて仕事を終え帰宅途中だった男の携帯が鳴った。
「はい。須藤です」
電話を取った京一の耳に、先日ある取引をもちかけた男の声がする。
「ああ、これは拓海のバイト先の店長さんですね?どうしました?拓海に何か…えっ?」
電車から降り、歩いていた京一の歩みが止まる。
「…どう言うことです!小柏って、あの小柏健の息子ですかっ?!」
駅構内にいた彼の叫び声に、周囲にいた人々が皆振り返った。
彼等二人が聞いた内容は同じものだった。
それは………。
『拓海が小柏カイって奴の挑発に乗っちゃって、プロポーズを受けちゃったんです!』
『小柏健の息子がやって来て、拓海に結婚を申し出て、拓海はどうもそれを知らないで受けてしまったみたいなんだ…』
『拓海は普通にバトル申し込まれたって思ってるみたいなんスけど、どっからどう聞いても、あれはプロポーズって言うか…』
『俺のナビシートに座ってくれ。負けたら一生だ、ってな。俺はあの時血筋を感じたよ…。小柏健が、文太にも似たようなこと言ってたからな…』
『それで拓海は、何かわかんねーけど、別にいいよ、って…』
『…って言ったみたいなんだよ。あれは、全く分かってないんじゃないかな?』
「……そうか。よく分かった。ありがとう。いつも通り報酬は女の子の紹介権でいいのか?…ああ、そうか。手配しておくよ。安心しろ。粒揃いをそろえてある。年下の男を調教したいという女子大生、OLばかりだ。きっと気に入るだろう。以後また新たな進展があれば頼む。ああ、それじゃあ…」
「…そうですか。貴重な情報をありがとうございます。それでですね、ご相談を受けていた例の融資の件なんですが、僕のほうで融通が付きそうなんですよ。そちらの支店のほうに話を通しておきますんで、その件についてはご安心下さい。ただ、代わりと言っては何ですが…ええ。拓海のこと、何かありましたらお知らせ下さい。はい。お願いします。それでは失礼します…」
この瞬間、距離を越え、かつてライバルとして雌雄を競った二人は同時に怒りの炎を燃やした。
『『…ハイオク満タンも入れられないような男が、俺の拓海にプロポーズだとっ?!百年早いわ!』』
『…最初はハイオク20と言っていたのにすぐに15に変えただと?俺の弟にはショボすぎるぜ…』
『…ハイオクぐらい満タンに入れられないとはな…。経済力も無い男が、よくも図々しくプロポーズなんて出来たものだな。いいだろう、相手になってやろうじゃないか…フッ』
『『…死ぬよりも恐ろしい目に合わせてやる…』』
群馬と栃木。今この瞬間、白い悪魔と黒の鬼が目覚めようとしていた……。
翌朝。
そこは栃木県内は中禅寺湖近くのとある民家。
表札には小柏とある。
そこには朝からマイカーを洗車するマイホームパパの姿。それが小柏健。別名スネーク小柏と呼ばれた男の姿だった。かつてはその執念深い走りでスネークの異名を持った彼も早や四十の大台を越え、最近では高血圧の疑い有りと健康診断で注意されたばかりの中年だ。
一見、どこにでもいる人の良さそうなおっさん。しかし彼の中身は、若かりし頃の悲願を胸に秘め、いざ成就せんと執念深く狙うスネークの異名のままだった。
そこに現れたのは彼と良く似た息子。この悲願のために、小さい頃から英才教育を施してきた彼の自慢の結晶だ。
「親父。オレ、昨日行ってきたよ、群馬」
小柏は振り向かなかった。すでに知っていた事実だ。まさかこの息子も、この洗車中の車に盗聴器と発信機が仕掛けられているとは夢にも思わない事だろう。
…映像が取れるのも取り付けておけば良かったな…そうすれば拓海君の姿が拝めたのだが…やはり声だけと言うのは寂しかったな。些かの反省点を振り返りつつ、小柏は息子を振り返った。
「ハチロクに勝つための作戦があるんだ。後で教える」
…まだまだ若造なこの息子では少し詰めが甘いところもあるからな…フフフ。
「…なんか、らしくねーよな、親父。俺が峠に入れ込むことにイイ顔してなかったくせによ、今度だけは妙に積極的じゃねえかよ」
不審そうな息子に、父は「そうか?」と口角を緩めた。
…峠に通うのはいいさ。だがな、お前の場合、イイ気になって手の内をさらけ出しすぎるんだよ。今度だけは、だと?今度のために、俺はお前を育ててきたようなもんだ。積極的にならんでどうする!
「……別に親バカのつもりはないが、文太の息子が相手とあっちゃ話は別だからな」
そう。あの文太の息子だ。文太のいい所と、そしてあの母親のいい所を全て併せ持ったような子供だ。特別に決まってるいじゃないか!!
「…親父。言っておくけど俺はさ、俺自身のために藤原拓海を手に入れるんだ。親父の昔の事とか、関係ないからな」
「わかってるよ、そんなことァ…」
いっちょまえに頬なんぞ染めてるがな。フフフ。俺がお前に刷り込んできた教育の成果なんだよ、それは。小さい頃からお前の枕の下に拓海君の写真を忍ばせておいたりとな。おかげでお前はしょっちゅう夢に出てくる彼を、運命の相手と誤解して…。フフ、まったくここまでうまく行くとは思わなかったよ…。
「俺は…負けないぜ親父…そして絶対に、藤原拓海を手に入れる!」
…勝ってもらわなくちゃあ困る。何しろ、これは全て、この俺が拓海君を手に入れるための、シナリオだからな…フフフ。
時は遡ること二十数年前。
小柏健は自分のホームコースとしている峠で恋に落ちた。
それが、単身他県の峠に乗り込んできた、当時群馬のみならず近県にまで名を馳せていた最速ダウンヒラー藤原文太だった。
まず彼の走りに惚れ、運転席から降りてきた彼の姿に二度惚れた。
初恋の甘いトキメキに、若かりし頃の小柏は、手管も裏工作も無しに、若さゆえの情熱の直球で勝負してしまった。
もちろん答えは否だ。
だがそこはスネーク小柏。懲りもせず文太をくどき続け、あげく彼の実家にまで押しかけ、商店街中の噂になるほど店先で愛の言葉を叫び続けた。
とうとう根負けした文太がある条件を小柏に出した。それはつまり、
『勝ったら俺をスッパリ諦めろ。その代わり俺が負けたら…しょうがねえ。お前の言う通りにしてやってもいい。だがな、俺は絶対に負けねえ。それだけは覚えておけ』
そして勝負の結果は、文太の宣言通り。後にそのバトルのギャラリーをしていた某GSの店長は、
『あの時の文太の走りには、神か悪魔が付いていた…。俺は今まであれほど鬼気迫る走りを、プロのレーサーの走りでも見たことが無かった』
と表現していたそうだ。
彼の言葉は正しかったのだろう。確かにその時の文太には神は神でも女神が付いていた。
…そう。拓海の母の存在だ。しかも文太は、自分の貞操をかけたバトルに出かけ、その場で彼女に出会ってプロポーズ。これで負けたら本当にシャレにならないところだった。
そしてバトル後。勝利の抱擁を交わす文太と彼女の姿に、小柏は確定した自分の失恋を知った。……が!そこでさらに大どんでん返し。小柏は失恋と同時に新たな恋にも落ちたのだ。…そう!それが拓海の母。文太の妻となる彼女にだった。
愛する二人が結婚…。通常なら、そんな二人が幸せになるなら…と潔く身を引くのが男気だが、そこはスネーク小柏。発想するところが違っていた。
『愛する二人の子供なら、きっと愛らしい子供に違いない!よし。俺は二人の子供を妻にしよう!!』
彼はまだ生まれてもいない二人の子供に夢を見た。
そしてその計画のため、まず彼はお見合い結婚をし、息子をもうけた。そしてその息子に車の英才教育。全ては来たるバトルのために。
まだ見ぬ子供に夢を馳せ、頑張る父の思惑も知らず、車に傾倒していく息子。そして妻は、彼の異常さに気付くのに十年かかったが、無事協議離婚。
未来の恋人を迎える準備は出来ている。
そして小柏の思惑通り、双眼鏡越しに見た彼らの子供の愛らしさ。一目で小柏は三度目の恋に落ちた自分を知った。
まだ若い彼に、自分のようなオジサンが愛を告白すれば警戒されることは必至。故に息子を使い、まず警戒を解いて家へ誘い込む。
『そこからがこの俺、スネーク小柏の本領発揮だぜ!』
まるでシャカリキ(死語?)だった十代の頃のような気持ちの小柏。しかし冷静に鏡を見れば、そこには中年のおっさんがいるだけなのだが。
ともあれ小柏の計画は中盤に差し掛かっている。
彼の計画。そう、名付けて、
『いけません、お義父さん…私は貴方の息子の妻なんです』計画だ!
*注意!*
…これ以降おっさんのドリーマーな妄想が始まります。
「キャッ、お義父さん?!」
お風呂場で身体を洗う拓海。そこで白々しくも腰にタオルを巻いた姿で現れる小柏。
「ああ、スマン。驚かせたかい?いやぁ、息子も留守なことだし、一つ拓海君の背中を流してやろうかと思ってね。ホラ、昔からよくあるだろう?背中を流して親睦を図ろうと思ったんだよ。拓海君はまだこの家に来たばかりだから、まだ緊張する事があるだろう?君に早く慣れてほしくてね」
「え、あ、すみません。でも、そうですね。俺も昔よく親父の背中流してましたし、じゃ、お願いしていいですか?」
「ああ、もちろん。喜んで文太の代わりをさせてもらおうかな?」
「フフフ、お義父さんったら…」
拓海は手にしていた泡の付いたスポンジを手渡した。それがどう言うことになるかも知らず…。
「どうだい?カイは。優しくしてくれるかい?」
「はい。えっと、色々気を使ってもらってます」
「そう?…おっとゴメン」
「…あ…」
わざとらしく、小柏の手の中のスポンジが拓海の赤く色付いた胸の突起を掠る。
「いやぁ、スマンスマン。手が滑って」
「い、いえ……」
「それにしても拓海君は肌がキレイだねえ。これも文太の豆腐のおかげかな?」
「そ、そうですか?」
「ああ、若さもあるんだろうけど、ホラ、スベスベだ」
「や、あ…」
スポンジの無い小柏の直の手が拓海の泡に濡れた背中を撫でた。
「…ほう、敏感だね。カイは幸せ者だ」
恥じらい、拓海の肌が桃色に染まる。
「…だが、こんなに敏感だったら、夜なんて大変じゃないか?特に今日なんて、カイがいないわけだからね。君ぐらいの若さだったら、毎日だってしてもいいぐらいじゃないの?そういう時はどうしているんだい?一人でするのかい?」
「お、お義父さん、やめて下さい…」
「いいじゃないか、知りたいんだよ」
「そんな、あ…駄目、そんなところ…」
小柏の手が腹部をなぞり、胸の突起へと這わされる。片方の手で突起を弄び、もう片方がどんどん下方に落ち、やがて茂みへと潜り込ませていく。
「駄目?本当に?ここはそう言っていないようだけどね…」
「お義父さん、駄目、カイさんが…あ…」
「大丈夫だよ。私はカイの代わりだと思えばいいんだ。これからカイも出張が多くなるからね。一人じゃ大変だろう?私が手伝ってあげるよ」
息子の出張をまさかこの義父が作るとは知らず、動揺する拓海。
「分かるよ。君の身体は一人じゃいられないものだ。大丈夫。カイには秘密だ。そう、君と私とのね。…ああ、いいね。素直になってきた、拓海…」
「あ、ああ…お義父さん…」
「お義父さんって言い方は無粋だね。…そうだね、これからは私のことをパパと呼びなさい」
「…パパ?」
「ああ、イイ子だ、拓海」
「…パパ、もっと触って…」
「ん?どうして欲しい?ちゃんと自分の口から言ってご覧?」
小柏の腕の中で白く身悶える身体。
拓海の細く白い腕が持ち上がり、小柏の首に絡まり引き寄せた。
耳元で囁かれる拓海のか細い声。間近で見る潤んだ大きな瞳。
「……お願い、パパ。拓海をもっといじめて?」
「……ックシュッ!」
「風邪か、拓海?」
チャプンと水音とともに伸ばされた腕が拓海の額へ向かう。触れ慣れた手のひらに拓海は額を預けた。
「熱はないようだが…大丈夫か?」
拓海は背後に座る人物に、顔を向け安心させるように微笑んだ。
「大丈夫ですよ。さっきは何か、いきなり寒気がして」
「そうか?大事を取って、今日は俺が拓海の身体を洗うだけにしようか?」
「えー、そんな…俺、涼介さんの身体、洗うの好きなのに…」
「…フフ、拓海は俺の身体が好きだな」
「…はい。だって…キレイだし…」
「そうか?拓海のほうがキレイだと思うが」
「そんなことないですよ?」
「そうか?」
「はい」
以上の甘々の会話から伺える通り、涼介と拓海の二人はお風呂場にいる。そして現在の状況は湯船に二人で一緒に浸かっているという状態だ。しかも拓海は涼介の膝の上に乗っていると言うラブに溢れたカップルならでは格好。この二人にとって、お風呂と言えばこのスタイルが定番となってしばらく経つ。最初は恥らって固まっていた拓海も、今では涼介の腕に頭を預けて摺り寄せてくるまでになっていた。それに至るまでの長く険しい道のりは、ひとえに涼介の努力と忍耐の賜物だ。そして今日はさらに、その次のステップに進もうと画策する涼介がいる。
「…そう言えば、明日はバトルだって?」
「え?誰から聞いたんですか?」
「…ひどいな。教えてくれないつもりだったのか?」
「え、だって、涼介さん忙しいから…」
「拓海のためなら忙しいのなんかどうでもいいよ。いつでも言ってるだろう?」
「すみません…」
「いいよ。今度からはちゃんと言ってくれよ?それより明日はバトルなんだったら、やはりさっきのくしゃみは心配だな。今日は暖かくして寝るか?」
「あたたかく?ぎゅってするんですか?」
「ああ。それもするけどね。それよりも暖かくなる方法があるんだよ」
「え、そうなんですか?ぎゅってしたらポカポカしますけど、それよりもポカポカするんですか?」
「…ああ。熱いくらいかもしれないな」
「…へえ…」
「してみる?」
「…えーっと…はい。興味あります」
その瞬間浮かんだニヤリと笑う涼介の顔を見たならば、多分拓海はすぐさまこの風呂場を逃げ出していたことだろう。しかし、涼介の前に座る彼はそれが見えず、そして不幸なことに、拓海は涼介に対して「絶対的な信頼」と言うものを持っていた。
だから……。
「…あの、涼介さん?…その、お尻に何か固いものが当るんですけど…」
「ああ、それか。心配ないよ。その暖かくするためにこれは必要なんだ」
「え、そうなんですか」
「ああ。だから今から準備しているんだよ?」
「…へえ、準備早いですね、涼介さん」
「ああ。待ちきれなくてね…」
「じゃ、すぐ上がりましょうか?」
「そうだな」
こんなことがあっても、全く涼介を疑わない。
そして、その夜の拓海の運命は………言わずもがな。
同日夜。
いろは坂に暗躍する幾つかの影。
「…なあ、史浩…俺たち何やってるんだろうな…」
「文句を言いたかったら涼介に言え」
「そうなんだけどさ、あのアニキに言えるわけねえじゃん」
「…そういや、明後日からは例の小柏って奴の父親に攻撃を加えていくらしいぞ」
「え?何でそいつの親父まで?」
「栃木県に潜り込ませている別の密偵に調査させたところ、どうも黒幕はその父親らしいんだ…」
「へえ…っつーか、アニキの密偵って何人いるんだ??」
「お前もそうだろうが」
「史浩もだろ?」
「お前のコードネーム何だっけ?」
「俺ぇ?あー…カレーパン。ナンバーは13BT。史浩は?」
「俺はひどいぞ。コードネームはがんもどきで、ナンバーは2316(フミヒロ)だ」
「うわぁ、アニキのセンスって…」
「言うな!それはレッドサンズの禁句だ!」
ごそごそと懐中電灯を照らしながら何かをかき集める二人。よく見れば他にも何人か同じ行動をしている。
その時、新たな懐中電灯の光が彼らを照らした。
「誰だ?」
誰何の声に顔を上げれば、そこには何だか見覚えのある顔が…。
「あ、お前、ランエボのちょんまげ!」
「…てめぇ、群馬の…こんな所で何してやがる?!」
そこに現れたのはここいろは坂をホームコースとするランエボ軍団の一人、ちょんまげこと岩城清次だ。
「何してるって…えーっと…」
説明しようと相手の手元を見れば、どうやら自分の手の中の袋と同じものが詰まっているようだ。そして相手もどうやらそれに気が付いた。
「…お前もか…」
「…あんたもか…」
「どうやら須藤も涼介と同じことを考えたらしいな…」
「それで、撒くところはあそこか?」
「ああ、あそこだ」
もはや彼らに言葉はいらない。これこそ以心伝心。かつて同じ走り屋仲間たちの間で、これだけの交流を交わした相手がいただろうか。いや、無い。彼らの間には共通するものがあったのだ。
「…京一もなぁ…あいつのことがなかったら、すげえ人なのに…」
「アニキもなぁ…あいつのことがなかったら、もうちっといつもはマシなのに…」
彼等は同時に同種類の溜息を吐いた。
翌日。同時間帯にバトルを行った、彼らが指し示すところの「あいつ」こと藤原拓海は、相手の奇襲に抜かれながらも、最後は「落ち葉」と言うイレギュラーなアイテムを以って逆転勝利を飾った。
その落ち葉がどこから吹かれてきたものか、知っているのはやけに身体に落ち葉を付けたレッドサンズの面々と、ランエボを愛するいろは坂の彼等だけであるらしい。
「ドタン場での一発勝負を左右するきまぐれな切り札になるのは…この葉っぱかも知れねえぞ」
白々しくもそう言った、いろは坂の皇帝と、それを聞きほくそ笑む彗星様を、葉っぱ塗れの人々は涙無しに見ることは出来なかったと言う。
そして後日。
某大手銀行経由で覚えの無い借金を作らされ、とある人物の陰謀で「男子高校生への淫行罪」で、小柏健が捕まったとか何とか。
それを聞いた文太は、
『京一だけでもとんでもなかったのに、あの白いニイちゃんまでおっそろしくおっかねえなぁ、オイ。番犬にするにはいいんだろうけどよ。小柏もうっとうしい奴だったが、こうなってみると気の毒なもんだなぁ。ま、でも自業自得か…』
と、かつて過去に騒動となった店先で、文太は目を細くさせ煙草の煙を空に向かって吐いたそうだ。
小柏の誤算は、白い悪魔と黒い鬼という存在を視野に入れなかったことにあるだろう。
しかしスネーク小柏は、絶望の淵からでも再び蘇ってくるかも…知れない…。