須藤京一は定期的に男相手に体を開く。
相手は誰でも良かった。
自分を嬲り、貶めてくれる相手なら、誰でも。
一番欲する相手は、自分に見向きもしない。
だから誰でも良いのだ。
あの後、涼介が手配した男の伝で嗜虐趣味の男を何人か紹介された。
甚振られ、涙を零すと、涼介に与えられえた惨めさと、紙一重の快楽を思い出す。
相手が複数であることもざらになった頃、ぱたりとそんな男たちからの誘いが急に途絶えた。
疼く体をもてあましながら、京一は涼介が興したチーム、プロジェクトDと接触することがあった。
かつて京一が所属したチームとの、バトルを観戦しに行ったのだ。
もう恋心が叶わないことなど知っている。
また涼介に惨めな思いにさせられないよう遠くから見ていたのだが、涼介には京一の行動などお見通しだったのだろう。
目を合わさないようにしても、目が勝手にあの男を追ってしまう。
そして、そんな京一に涼介が気付いた。
目が合った瞬間、涼介はニヤリと、あのホテルで見せたような悪魔的な笑みを浮かべた。
けれど。
傍らにいた藤原拓海には、穏やかな、優しげな笑みを浮かべてみせる。
わざと見せ付けるように、藤原の耳に何かを囁き、物影へと連れ込む。
そして涼介はまるで京一に付いて来い、とでも言いたげにチラリと視線を向けた。
まるで従順な犬のように。
彼は決して自分には優しくないと、傷つくだけだと知っているのに、京一はそんな涼介には逆らえない。
フラフラと、京一もまた物影へと移動する。
そこで見たのは、予想通りの光景だった。
「だ、め…です、涼介さん、こんなところで…」
「いいじゃないか。バトルも終わったし…誰も俺たちのことなんて見てないさ」
「でも…、んぅ…」
「かわいいな、藤原…」
甘く囁き、涼介が藤原拓海を抱きしめ、衣服の下に指を滑り込ませる。
京一には見せない表情。
京一には向けられない甘い言葉。
そして京一には決して与えられることのない…涼介の愛撫。
京一の視点からは、藤原の背中しか見えなかった。
けれど、彼を正面から抱き寄せ、首筋に唇を這わせる男とは目が合った。
ニヤリと、涼介が微笑む。
京一はギリ、と奥歯を噛み締めた。
見せ付けるように、涼介は藤原の首に吸い付いた。
遠目からでも、彼の首に跡が付いたのが見える。
涼介の白く長い指が、その跡を確認するように撫でる。
「…これは俺の印だ。お前が俺のものだということの。そして俺が…お前のものだと言うことのな」
藤原の白い首に付いた、赤い跡。
あれは京一が欲したもの。
決して、与えられないもの。
京一は理解していた。
あの囁きは、藤原に与えられたものではない。
自分に、思い知らせるために囁かれたものだということを。
そして同時に、全ては涼介の策略なのだと理解した。
男に嬲られることを覚えこませ、下種な女のように自分を貪欲に仕立てたこと。
その意味を。
きっと、男たちから誘いが途絶えたのも、あの男の仕業なのだろう。
自分を飢えさせるために。
全ては、自分の目の前で、藤原拓海が自分のものだと、そして涼介が藤原のものだと、思い知らせるために。
そうだ。
全て、あの時の復讐。
藤原拓海を泣かせ、傷付けた涼介のこれが復讐の完成なのだ。
京一は手のひらで目を覆う。
その指の隙間から涙が溢れ出す。
酷い男だ。
残酷な男だ。
だが、だからこそ惹かれて止まない。
ずるずると、座り込んだ京一のペニスは勃起していた。
きっと涼介には、あの行為で京一がさらに涼介に焦がれることも計算済みなのだろう。
だからこそ、快楽を覚えた自分の体を飢えさせた。
より、涼介に餓えるように。
あの悪魔のような頭脳の前では、京一など頼りなく哀れな裸の愚者にしか過ぎない。
「…ん、涼介さ…」
「藤原…」
甘く睦みあう二人の傍らで、京一はベルトを緩め、硬化した自身を慰める。
醜い自分。
綺麗な藤原。
夜目にも、あの涼介の跡ははっきりと見える。
ぽろりと溢れた涙が、ペニスの先端に落ち、先走りの液と混じる。
京一は思い知る。
自分の惨めさを。
そして自分の醜さを。
そして、
「……涼介」
どんなに酷い目にあっても、あの男に焦がれることを止められない愚かな自分を。
パタパタと、草の上に涙と、溢れ出した精液が散る。
京一は自嘲の笑みを浮かべながら、自身の首筋に、爪を立て傷付けた。
ギリ、と爪を立てた後には、藤原の首に浮いた跡と同じ赤く腫れたものが浮かんだ。
似ていながら、決して同じではない跡。
それを指でなぞりながら、京一は涙を零し、そして射精した。