『俺が忘れられなくなっただろう?』
呪文のような涼介の声。
ふと一人になったとき、彼のその声が、言葉が蘇り、拓海の身体の内に火を飲み込んだような熱を生み出す。
あの指が俺に触った…。
服の上から乳首を撫でる。
…あの指が俺のここに。
固くなり始めた股間を握る。
尻を掴み、狭間をなぞり、そして彼の口の中に拓海のものが咥えられる。
あの舌で舐められ、扱かれ、達する。
脳を痺れさすような快感。全身にあの人の手が、舌が這わされたような気がする。
涼介の口の中に収まった自分のペニスを握り、擦る。
…あの人の口はこんな感じではなかった。
足りない。
おかしくなるくらいに拓海を狂わせる、あの人の指が欲しい。
涼介のことを想像するだけで、固くなったペニスは拓海の手では物足りないと、手に包まれたそれは固くなるどころか勢いがどんどん萎んでいく。
だが身体の内にこもる熱は消えない。
懊悩に自分の体をぎゅっと抱きしめた。
「…りょ…すけさん…」
唇から漏れたのは恋人である啓介の名前ではなく彼の名前。
そんな拓海の苦悩を察したのかのように不意に携帯が鳴った。
「も、もしもし…」
『藤原』
電話越しの鼓膜に響いたその声に、拓海の萎えかけていたペニスに力が宿る。
「りょ、すけさん?」
『ああ』
「な、何で…?あ、あの…何か用事でもあったんですか?」
電話の奥で、彼が「フッ」と笑う微かな呼吸音が聞こえた。
『…用事?ああ。あるな』
「…え?あの、何ですか?」
『藤原』
「はい」
『…俺が欲しくない?』
「………」
『俺を思い出さなかった?』
「………」
『俺は藤原が欲しいよ』
「……りょ、すけさ…」
『だからここにおいで』
「…え?」
『外だ。今すぐ来るんだ』
カーテンを開け、窓の外を眺めれば、そこには月明かりに照らされる、携帯を手にした涼介の姿があった。
窓の向こうから、見つめる拓海に向かって嫣然とした笑みを向ける。
『早くおいで。我慢できないだろう?』
この人には暗い夜の、月明かりが似合う…。
携帯を握り締め、拓海は小走りで外へ向かった。
そして微笑みながら拓海に向かい、両手を広げて待つ涼介の腕の中に飛び込んだ。
「…藤原、可愛いね」
勢いよく飛び込んだ拓海の髪を、涼介は愛撫するように撫でた。
ぞくり、と背中を駆け抜ける快感の燠火。
耳元に注がれるように囁かれる彼の声。
冷たい指先。
何も分からない。
ただ、無性に身体が熱い。
この熱を沈めてくれるなら、何でも良かった。
「涼介さん…」
「…うん?どうした?」
「俺…おかしい…」
涼介の身体に震える指でしがみつき、高ぶったままの股間を彼の足に摺り寄せた。
「…本当に藤原は可愛い…」
拓海をおかしくさせたあの指が、拓海の髪を優しく撫でた。
「…お願い…」
じっと見つめる彼の瞳は暗く、まるで夜の淵。
そこに吸い込まれ、捕らえられる自分を拓海は感じた。
「…助けて」
拓海の言葉に、涼介は微笑むだけで、答えはくれなかった。
ただ、冷たい指が愛しいように、優しく…優しく拓海の頬を撫でていた。
それからも涼介との関係は続いた。
だが今、拓海の身体を這う指は彼のものではない。
「…なぁ。何かお前のカラダ、感度上がってないか?」
緩やかなカーブを描く腰に指を這わせながら、擽るように臍を舐める舌。
その感触に、拓海は堪えきれず嬌声を上げる。
「すっげぇ敏感。ちょっと触っただけでドロドロじゃん」
熱を帯び、立ち上がるそこに軽く吐息を吹きかける。それだけで拓海のそこは、快感に震え、どろりとした液を溢れさせる。
「ここもさぁ、何かすげぇ柔らかくなってるし…」
腰を彷徨っていた手が、拓海の臀部に回りその狭間をなぞる。硬く閉ざされていた奥の秘腔は、啓介の指を阻むことなく、逆に誘い込むように滑り入れた。
「…あっ、やぁ、け、すけさん…」
「藤原、ここで感じるんだ?中がビクビクしてる…」
指を入れられ、拓海が最も感じるしこりに触れられた途端、勢いを増す高ぶりに、啓介の呼吸が荒くなる。
「なぁ?何でこんなカラダになってるんだよ?浮気でもしたのか?」
荒い啓介の呼吸。ハッして彼を見れば、そこには怒りや疑惑の色も無く、ただ欲望と楽しそうな彼の顔があった。きっと啓介は睦言の一つとして拓海をからかったのだろう。
一瞬おびえた自分に気付かれないように、拓海は唇を噛み締め、首を左右に振った。
「…ウソだよ。そんな辛そうな顔すんなよ」
啓介が笑い、宥めるように拓海の唇にキスを落とす。
拓海の中に、また澱みが広がる。
嘘吐きは自分…。
本当は何度もそこで涼介の指を受け入れた。
最初は一本だったものが二本なり、この前は四本まで受け入れられた。
『すごいな、藤原…フィストもいけるんじゃないか?』
楽しげに笑う彼の言葉の意味は分からなかったが、それがいやらしい行為なのだということは理解できた。
見たこともない毒々しい色の玩具を中に入れられ、後ろだけで達することも覚えさせられた。
『ここに前立腺ってのがあるんだ。ここを刺激すると男なら誰でも勃起する。ここにこれを入れたら…どうなると思う?』
ローターだと言う振動するそれで、頭がおかしくなるくらいに刺激され失神するまで達かされた。
拓海の身体は、どんどん涼介により壊されていく。
もう、以前の自分が思い出せないくらいに。
だけど。
いつもそうやって拓海を壊しながら、彼は服一つ脱ごうとしない。指で、玩具で拓海を達かせ、満足そうに微笑むだけ。
いつしか、それに物足りないと思うようになったのは、自分がおかしくなったからなんだろうか?
その足りない感覚を埋めるように、啓介とも抱き合う。
涼介と違い、彼は余すことなく肌身を晒す。そして拓海に大きくなった怒張を握らせ、時には咥えさせ、乱暴な手つきで拓海と同時に達しようとする。
「なぁ…もしかして、お前、自分でここ広げたのか?」
啓介の指が二本入るそこ。ぐちゅぐちゅと音を立て、広げるようにそこをかき回す。
答えれず、曖昧に拓海は頷いた。
「マジで?…な、それ、やって見せろよ?」
「…え?」
「藤原が自分のここを広げてるところ、見てみたいんだ」
拓海の手を掴み、さっきまで啓介の指が入っていたそこに導く。
しっとりと濡れたそこはヒクヒクと奮え、刺激してくれるものを待っている。
「なぁ。早く…」
啓介の腕が、拓海の両足を抱え、思い切り広げる。
啓介の眼前に、拓海の恥部を余すことなく晒され、羞恥から全身を朱に染めた。
『自分でして見せて…』
二日前に、涼介にも同じことをされた。
拓海の足を抱え、閉じられないようにしながらそう言った。
あの時のように…。
拓海は震える蕾に自分の指を這わす。
入り口を何度かなぞるように撫でながら、ゆっくりと進入してく自分の指。中が暖かい。涼介と知り合うまで、自分のこんな部分に触れる日がくるだなんて思いもしなかった。
「…すげぇ…」
ゴクリ、と啓介が唾を飲むこむ音がする。その音さえ、今の拓海には自分を煽るだけだった。
グチュグチュと音を立て、どんどん指を増やしていく。
「めちゃくちゃ感じてんじゃん。気持ち良さそうだな、藤原」
啓介の指が前を握る。
「や、やぁ・・・」
刺激に身体が震える。腰が勝手に動き出し、指を激しく出し入れしながら腰を揺らめかす。
「…クソっ、突っ込みてぇ…」
啓介の呟きに、拓海の指が止まる。
「大丈夫だって。お前の嫌な事はしねぇから。まだ恐いんだろ?」
…恐い?恐いのだろう。
コレが、ではなく。
…あの人が。
『啓介に後ろはさせるなよ?』
玩具で弄びながら、そう笑ったあの人の笑顔。
「……こわい…」
…嫌われるのが。
「分かってる。なぁ、四つん這いになれよ。そんで、俺のも限界。指はそのまま後ろ弄ったままさ、口でやってくれよ」
眼前に示された啓介の怒張は赤黒く、逞しく張り出し天を向いている。
手で何度か擦り、硬度を増したそれを拓海の口元に寄せた。
…頭がクラクラする…。
体勢を変え、四つん這いになった拓海の口に、啓介のものが突き入れられる。頭を掴み、ガンガンと激しく揺さぶられ、頭の靄はますます激しくなった。
「あ…あぁ、いいぜ、藤原…」
ハァハァと荒い息を吐く啓介の呼吸に合わせるように舌を絡め、後ろの指を動かす。カリの部分が上顎を擦り、咽喉の奥を突き、呼吸ができず嘔吐いた。
まるでこの口の中のもので後ろを犯されているような感覚。
どんどん頭がおかしくなっていく。
身体が痺れる。心でさえも痺れた。
「…藤原、イくぞ、いいか?」
きゅうっと口を窄め、啓介のものを締め上げる。
…もう何も考えたくない。
拓海は快感に身を任せ、そして二人、同時に絶頂を見た。
涼介と会うのは夜ばかりだ。
そこでいつも暗い夜の雰囲気を纏った彼に体中を弄られる。
夜。ミーティングの最中、
「藤原。ちょっと来てくれ」
と呼び出され、プロジェクトDの名前が入れられたワゴンの後部座席に二人で入った。その途端、彼はチームリーダーから、拓海を翻弄する一人の男に変わる。
これはもう何度もあったこと。
周囲にメンバーがいるのを意識しながら、だからこそ高くなる愉悦に声を潜め、快楽に耽る。
ギシリときしむシートに身体を押し付けられ、耳朶を嬲られ、唇をなぞる様に舐められた。
早くも甘い息を零し始めた拓海を嘲笑うように、するりと涼介は拓海の口の中から舌を引き出し、腕を伸ばして突き出し拓海の身体を遠ざけた。
「…りょ、すけさん…?」
悪戯に身体に熱を点らせ、いきなり遠ざかってしまった体。
それに戸惑い拓海が潤んだ眼差しで問いかければ、涼介は凍り付くような冷たい目で拓海を見つめ返してきた。
「…啓介と寝てるんだって?」
その端整な唇から漏れた言葉にぞっとする。
背中に氷が当てたれたように硬直し、身体が勝手に震えだす。
ぐい、と無造作に手の甲で、先ほどまで拓海を翻弄していた唇を、まるで汚いものに触れたかのように拭い、情欲の欠片もなく、冷たい眼差しで拓海を見る。
「酷いな、藤原は。俺だけじゃなく啓介ともするんだ?」
凍りついたような頭で、拓海はひたすら首を横に振り続けた。
「違うって?じゃあ、その項のキスマークは誰が付けたんだ?」
ハッ、と咄嗟に手で項を隠す。付けられた覚えは無かったが、意識のない間、啓介が拓海の身体を悪戯するのはよくある事だったから。
「藤原は誰が好きなんだ?俺?それとも啓介か?」
ブルブルと震え、拓海は断罪される者の気持ちで涼介の言葉を待つ。
「それとも…誰でもいいのか?気持ちよくしてくれれば」
必至に首を横に振る。
「違うのか?」
首を今度は縦に動かす。
「じゃあ、何で啓介と寝た?」
「だ、だって…」
「だって?」
「…りょ、涼介さんが…してくれない、から…」
拓海の答えに、涼介は噴出し嘲笑う。
「参ったな。とんだ淫乱だ。俺の代わりに啓介を使ったってのか?」
「ち、ちが…そうじゃなくて…」
「違わないだろう?お前は誰とでも気持ち良くなれるんだろうが、振り回される俺らはいい迷惑だ」
「…ちがう…ちが…」
「啓介に言って来い」
「え?」
「俺とも寝てるって。俺の腕の中で何回イったか分からないって」
「そ、そんな…」
「そして啓介に抱かれてこい」
「え?」
「まだ挿れてはないんだろう?啓介のを」
「う、うん…はい…」
「だったらさっさと啓介のを挿れてこいよ」
「だ、だって、涼介さんが…」
「挿れるなて言った?ああ。そうだったな。けど藤原。今は状況が違うだろう?お前は俺のと、啓介のをどっちが欲しいんだ?選びやすいように、試してこいって言ってるんだ」
「い、いや、です、俺は」
「嫌?藤原に拒否権はないんだ。やりやすいようにしてやるよ」
そう言い、拓海の腰を掴み、ジーンズを下着ごと脱がし、足を抱え尻を割り広げる。そしてその奥に隠されたまだ固く閉ざされた蕾に、ポケットから取り出したチューブ状の液剤を取り出し中にまで塗りこめる。
「…後はこれで栓をする」
取り出したのはもう見慣れたローター。ピンクのグロテスクな色合いのそれが拓海の中に押し込められる。
入れられた途端、ブゥンと振動するそれ。
その刺激だけでなく、冷たかった液剤が、どんどん熱を増し、例えようのないほどの痒みを中で起こさせた。
「痒いだろう?媚薬、みたいなものかな?こんなオモチャみたいのでは足りなくて、大きくて太いので、思いっきり中を擦られたいだろう?」
優しく、優しく囁きながら拓海の暴れだす腰にまた衣服を身に付けさせていく。
「さぁ、行っておいで。啓介にたっぷり可愛がられてきてごらん」
彼の声は毒だ。
何事もなかったかのように拓海のむき出しになっていた下半身に衣服を身に付けさせ、顔を赤くし、呼吸の荒いままの拓海を車の外へと連れ出した。
足が地面についた途端、拓海の足がもつれ、倒れそうになる。だが傍らにいた涼介の腕が拓海を支えた。
「大丈夫か、藤原?」
彼の顔はもう、チームリーダーのもの。拓海はふるふると首を横に振る。
「涼介。藤原、どうしたんだ?調子が悪そうだが」
「ああ、史裕。いきなり具合が悪くなったみたいでな。啓介にでも送らせようかと思うんだが」
「啓介と?でも、あいつもまだ調整が…」
「大丈夫だ。それは俺が何とかする。藤原がうちで一番親しくしているのは啓介だからな。あいつに送らせたほうが、藤原も気が楽だろう」
「まぁ、お前がそう言うなら…」
ドクドクと耳元で戦慄っている脈動。
…恐い。
…この人がこわい…。
ちらりと潤む目で涼介を見上げれば、彼もまた拓海を見て、そして微笑んだ。
その毒のような眼差しと、毒のような笑み。
雁字搦めに縛られて、身動きができなくなる。
「啓介。ちょっと来てくれ」
「何だよ、アニキ…って、藤原。どうしたんだ?」
「具合が悪くなったみたいでな。こいつのことを頼めるか?」
「………ああ。構わねぇけど」
「そうか。じゃあ、しっかり面倒見てやれよ」
たったそれだけの会話。
それだけで拓海を支えていた涼介の腕は離れ、代わりに熱い腕を持った人物が拓海の腕を取る。
「…藤原。来いよ」
啓介のFDに乗せられ、轟音を立てて車は走る。
拓海はカタカタ震える身体をぎゅっと抱きしめて、ひたすら身を縮めて項垂れていた。
体内には振動を続けるローター。内部の痒みと熱はどんどん増し、汗が体中に浮いて、呼吸はさらに荒く激しくなっていく。
暗い夜空。爆音を立てて走るFDの中はやけに静かで、拓海の荒い呼吸音だけが響いた。
無言のまま、十分ほど走っただろうか。FDが止められ、そして啓介は言った。
「…藤原。着いたぜ」
そう言われて外を見れば、そこは見慣れた自分の家の付近でも、町ですらなかった。
林に近い、壊れかけの頼りない街灯だけが辺りを照らす誰も通らないような峠の外れだ。
「…け、すけさん…?」
何故こんなところにいるのか。拓海はまだ状況を理解できないでいた。
「降りろよ」
すぐに運転席を降りた啓介は、助手席側から回ってドアを開け、拓海の腕を掴み、引っ張り出した。そして乱暴に拓海を引きずり、ボンネットの上に放り投げる。
ドン、と鈍い音がするそれにぶつかり、ハッとした拓海が慌てて正面を見れば、そこにはさっきの涼介と同じ、冷たい顔をした啓介がいた。
逃げようとしても逃げられない。ボンネットの上の拓海の身体の両脇に、啓介の腕が阻むように伸ばされている。
「…アニキに何をされた?」
ビクリ、と夜目にも拓海の激しい震えは見て取れた。
クッと顔を歪め、啓介は皮肉そうに笑い、そして同じ声音のままでさらに言う。
「俺が何も気付いてないと思ったのか?お前、アニキとも寝てただろ」
ボロボロと泣き出した拓海に、啓介はそのいつも暖かい指先で涙の零れ落ちていく頬をなぞる。
「別にいいんだ。お前は元々アニキが好きなんだからな。気にしちゃいねぇよ。だけどな…」
啓介の手のひらが、張り詰めていた拓海の股間を握った。
「あっ!あ、ハァ…ん…」
「もうガチガチじゃねぇか…。…こんなふうに、見せ付けるみてぇなことされるとさ、さすがに俺も傷付くぜ?」
「…あ、あぁ、やぁ、ん、け、すけさ…」
ぐにぐにと服の上から股間をもみしだく手。乱暴な手つきであるからこそ、痛みと隣り合わせの快感に、拓海の腰が震える。
「すっかりアニキに開発されちゃって。見ろよ。自分で腰動かしてさ。すっげぇ淫乱」
「やぁ、ちが、あぁ…」
「…お前、何か変な音してないか?…オイ、服脱げよ。下だけでいいから」
首を横に振る。そんなことは出来ない。無理だ。見られたくない、こんなの。
だが、
「…チッ。まどろこしいな、さっさと脱げよ!」
乱暴な手が、震える手で押さえる拓海のジーンズをむしり取った。
そして、
「すげぇ。こんなの入れてんだ…」
隠されていた布が取り払われ、モーター音は妨害する音がない夜の闇の中で、驚くほどに大きく響いた。
「中もベトベト。アニキ、すぐに出来るようにしてくれてたんだな」
ニヤリと、快活な笑顔しか見せなかった彼が、淫猥な笑みを浮かべる。
「藤原もこんなんじゃ我慢できねぇだろ?ほら、すぐに食わせてやるから俺のを大きくしな」
ぐい、と眼前に突き出すように示された啓介のペニス。
まだ硬さのないそれを目の前に出され、拓海はゴクリと唾を飲みこんだ。
…欲しい。
これが欲しい。
欲しくて欲しくて、気が狂いそうだ。
早くこの疼く中にあれを入れたい。
ぐちゃぐちゃにかき回して、思いっきり擦りあげて欲しい。
「ほら。早くしねぇと、自分でやっちまうぞ?」
啓介の手が、それを握り締め、拓海の目の前で煽るように緩く擦った。
むっとする男臭いニオイ。それに煽られ、拓海はもう夢中で啓介のペニスにむしゃぶりつき、舌で、指で何度もをそれを舐めあげた。
「あ。ああ、いいぜ、藤原…もっとだ。奥まで入れろ。そうだ」
何も分からない。
何も分からなくていい。
「…もういいぜ、藤原。…ほら。来いよ。自分でいれるんだ」
ボンネットの上の啓介の体。その身体の中心の、硬くそそり立つペニスにしか拓海の目はいかない。
あれが欲しい。
早く入れてほしい。
「…俺の上に乗るんだ」
体中が疼く。
ずるずると、啓介の指が自分の中から刺激を与えていたローターを取り出す。振動するそれが敏感な内壁の中を移動する時、堪えきれず拓海は嬌声を上げ股間から先走りの液を漏らした。
「すっげぇ、やらしい…藤原」
啓介の舌が、自分の唇を舐める。その仕草にも煽られ、拓海の飢餓感は強まっていく。
啓介の火傷しそうに熱いペニスに手を伸ばし、そろそろと啓介の体の上に自分の体を重ねる。
ハァハァと呼吸は上がりっぱなしだ。尻を自分で掴み、広げながら啓介の欲望をゆっくりと飲み込ませていく。
ぐぷ、ぐぷといやらしい音を立てて飲み込まれていく。
どんどん熱い塊が自分の中に進入してくるのが分かる。
「あ、あぁん、はぁ…あ、やぁ、あつ、い…」
「ああ。お前ん中、すげぇ熱いぜ…」
熱い楔を銜え込み、腰が勝手に動く。
もう何も考えたくない。
拓海は理性を捨て、快楽の渦の中に自分の身を任せた。