xxx 啓介編 -後編-


 部屋のドアを閉めるなり、啓介は自分を阻む衣服を、破るほどの勢いで脱ぎ去った。
 漸く圧迫から解放された欲望は、刺激など無くても期待感だけで熱を滾らせ天を向いている。
 一糸纏わぬ姿で、欲望を露にした啓介は、部屋の中央で佇む拓海の前に見せ付けるように立った。
「…お前も脱げよ」
 啓介の露な欲望に一瞬視線を向けた後、恥らうように顔を背けた奥手な彼女に、その行為が難しいと察しながらも命じる。
 震える指先でシャツの裾を握った彼女は、目を閉じ、ぎゅっと唇を噛み締め、覚悟を決めたようにガバリとその腕を上に持ち上げる。
 豪快にシャツを脱ぎ捨て、そして勢いで下のジーンズも引き降ろす。
 さっきまで恥らっていた少女とは思えない豪胆さに、啓介は感嘆しながらも彼女の前に立ち、まだ彼女の身体に残る布地を指差し、そして意地悪く笑った。
「ほら、これも」
 スゥ、と薄い布地に指先を滑らせる。
 カッと彼女の頬が羞恥だけではない赤に染まる。
 勝気な瞳が啓介を見返し、そして胸と、腰を覆う下着に手をかけようとした。
 だが、
「やっぱ、ヤメた」
 その腕を啓介が阻む。
「俺が脱がしてぇ」
 トン、と肩を押し、ベッドの上に押し倒す。
 不意を付かれて、彼女の身体はあっさりと倒れこんだ。
 その身体に圧し掛かりながら、啓介は布地の下に指を潜り込ませ、胸を強い力で揉み込む。
「や、ぁ…!」
 啓介の身体の下で、薄い身体が暴れる。
 けれど構うことなく、啓介は手のひらの中の肉を弄び、そして唇を寄せ、口で胸を覆う生地を引きずり上げた。
 時刻はもう夜になろうとしていた。
 春になり、日が沈むのが遅くなってきたとは言え、そろそろ部屋の中には暗闇が迫っている。
 啓介の部屋は、夜になると自動感知センサーで一定の留守期間の後に、人の侵入を感じると、勝手にライトが付くようになっていた。
 だから今も部屋の中は照明が煌々と照らし、拓海の白い肌を隠すことなく啓介の目に晒している。
 舌先に感じる、ピンク色の尖り。
 ちゅぅ、と吸付き、そして白い肌に唇を滑らせ、その周りにも赤い跡を残していく。
「や…啓介さ…はずかし…」
 涙目の彼女が、啓介を下から見上げる。
 恥ずかしい?
 今更だ。
 啓介は苦笑を浮かべ、自身の張り詰めた欲望を拓海の布で覆われた下腹部に擦り付けた。
「…なぁ、藤原…」
 喋る自分の呼吸も荒かった。
 執拗に、何度も布地の上から、それをこすり付けられ、彼女の顔が怯えたように歪んでいる。
「…怖い、か?」
 ちゅ、ちゅ、と彼女の肌に何度もキスを繰り返し、跡を残す。
 白い肌に、自分の印が刻まれていく。
 その度に、啓介の中の征服欲が満足感を覚える。
 けれど、まだまだ足りない。
 もっと、もっと彼女が欲しかった。
「…俺も…怖い…。お前に溺れそう…」
 何だよ、この肌。
 滑らかな陶磁器のように、しっとりと啓介に吸付いてくる。
 ぴったりと触れていると、その部分から溶け合って混ざるようだ。
 この肌の奥の内部に包まれたなら。
 自分はどうなってしまうのだろう?
 顔を顰めながら、そう告げると、彼女が息を飲み、そして圧し掛かる啓介の首に腕を回し、ぎゅっとしがみ付いた。
「……んなの…」
 耳に直接、彼女の声が届く。
「…今さら…遅いよ…」
 彼女が、啓介の腰に、自分のそれをこすり付けてくる。
 驚き、彼女の顔を見つめると、その瞳は欲情し、キラキラと輝いていた。
 ああ。そうだ。
 確かにそうだ。
 もう、とっくに溺れている。もう手遅れなのだ。
 フッ、と微笑み、啓介は目の前の彼女の唇にキスを落とす。
 舌を絡め、口内を愛撫し、彼女の肉の感触を味わう。
 両の指先で、彼女の腰を覆う布地を掴む。
 そしてゆっくりと、その生地を引き下げていった。
 啓介のその動きを助けるように、拓海もまた少し腰を持ち上げる。
 露になっていく、無防備な彼女の姿。
 もう少し我慢しろ、と言い聞かせるように、啓介は己の分身を根元で強く掴み、そしてもう片手で彼女の太ももを割り開いた。
「…力、抜いてろよ」
 処女を相手にするのは初めてだ。
 友人知人の話から、面倒だとも聞いているし、最初は酷い痛みを感じるのだと言うことも。
 少しでも痛くないようにしてやりたいが、自分に加減が出来るほどの余裕はもう無かった。
「……無理」
 ガチガチに身体を強張らせたまま、彼女が言った。
 そうだよな。
 そりゃそうだ。
「じゃあ……謝っとく。ゴメン」
 ぐ、と彼女の開いた太ももの間に、腰を潜り込ませる。
 そして、ぬく、と滑る狭間に、張り詰めた欲望を押し付け、先端を押し入れた。
 キュウ、と締め付ける圧迫感。
「い、た、ぁ…!」
 甲高い悲鳴が彼女の唇から上げられる。
 痛いのだろう。
 目からポロポロ涙が零れ、背を海老のように反らせながら、強い力で啓介の頭を抱え込む。
 きつい締め付けに、進む事が困難だったが、啓介は臆すことなく無理に奥へと割入った。
 途中で止めるほうが、自分も、また彼女もきついと思ったからだ。
「…ぅ、くぅ…い、っつ…」
 子供のように彼女が泣きじゃくる。
「…ごめ…いてぇよな…藤原…ごめん…」
 ずずず、と奥へ進みながら、啓介は何度も拓海に謝罪した。
 すると彼女は痛いはずなのに、啓介に向かい首を横に振った。
「…いい。…け、すけさ…きて…」
 演技も、技巧も無いその言葉と心に、啓介の欲望は増す。
 みっともなく暴発しそうなのを堪え、さらにぐいと腰を進め、根元まで埋め込んだとき、二人の唇から同時に溜息が零れた。
「……ふじ、わら…奥まで入ったぜ?」
 熱く、燃えるような彼女の内部。
 キュウキュウに締め付けられ、啓介は堪えるように片目を顰めた。
 は、は、と荒い呼吸を繰り返しながら、拓海は頑是無い表情で頷いた。
「…ん。…何か…入ってる…」
「…俺の、分かる?」
 コクリと、拓海が頷く。
「……俺ん中…け、すけさ…はいってる…」
「動いて…いい?」
 じっとしていると辛い。
 このままでも気持ちいいが、もっと気持ち良くなりたいのだ。
 ゆっくりと腰をかき回すと、「ひぅん」と彼女は呻きながらも、けれどしっかりと頷いた。
「……いい」
 必死に自分に答えようとする彼女が愛しかった。
 痛みを堪え、自分を受け入れようとする彼女が可愛くて仕方なかった。
 喰らい尽くして、貪りたいほど、彼女が可愛くて、愛しい。
 緩やかに腰を動かせながら、啓介は「ああ…」と溜息を零しながら漸く気が付いた。
 俺は藤原拓海が好きなのだ。
 俺は藤原拓海に…溺れている。
 気付くと同時に、限界は早かった。
 ブルリと腰を震わせ、呆気ないほどに、愛しさが凝縮した欲望が彼女の太ももを塗らす。
 そういや、ゴムしてなかったなぁ。
 咄嗟に、中出しを防いだ自分を啓介は褒めてやりたかった。
 そして自分の欲望と、キスマークで彩られた彼女の白い身体を見下ろし、彼は満足そうに微笑み、そして薄く色づいた彼女の唇にキスを落とした。




 荒い呼吸を整えるように、ゴロリとベッドに横になる。
 本音を言うと、もう一度挑みかかりたいくらいだが、初めてだった彼女にこれ以上の無体は酷に思えた。
 傍らでぐったりと横たわる彼女は、与えられた過剰な刺激でもう息も絶え絶えだ。
 今日はこのぐらいで大人しくしてろよ。
 自身の分身とも呼べる器官に言い聞かせるように軽く握ると、手のひらに滑る感触があった。
 ふと手のひらを持ち上げ見ると、そこにうっすら赤い色が付いている。
 粘液と…そして赤い血。
 何で…と考え、その血の出所にすぐに気付く。
 隣の彼女の両足の付け根を見ると、やはりそこは粘液が混ざった赤に濡れていた。
 啓介は汚れていない方の手で口元を隠した。
 勝手に顔がニヤけてしまう。
 そっか…。初めてだもんな。
 俺が初めて…。
 嬉しくて、けれどどこか気恥ずかしい。
 未踏の雪原に足を踏み入れたかのような達成感と満足感。
 子供のように浮かれてしまいそうになる心を押し隠し、啓介は手早くベッドサイドのティッシュで下腹部の汚れを拭い、そしてジーンズを拾い上げ足を通した。
 起き上がった事でベッドが軋み、放心していた拓海の意識が啓介へと戻る。
「け、すけさ…」
 名を呼ぶ声が掠れていた。
 と、同時に、啓介の脳裏に甘く喘いでいた彼女の声が甦り、下腹部に熱が溜まりそうになる。
「…タオル取って来る。ちょっと休んでろ」
 風呂に運ぶ事も考えたが、時間帯を考え、家族…特に兄が帰ってくる可能性があった。
 もしも出くわしてしまったなら、啓介は良いが拓海は気まずいだろう。
 と言うより、兄に見つかると何を言われるのか分かったことじゃない。
 叱責…だけなら良いが、事ある毎にこの件で嫌味を言われそうだ。
 幸いなことに兄には出くわさなかった。
 タオルをお湯で湿らせ、ぐったりと力の抜けた拓海の身体を自分が拭いてやろうと、少し邪な気持ちを抱えながら部屋に戻った啓介は、ドアを開けた途端さっきまでの幸福感が消えるのを感じた。
「お前…何してんだよ…」
 そこには、着衣を整えた拓海の姿があった。
 キョトンと啓介を見返し、
「何って……帰るんですけど?」
 何事も無かったように、ベッドから立ち上がり、啓介が立つドアへと歩いてくる。
 その足取りは少しふらついていた。
 あっさりと出て行こうとする拓海の腕を、擦れ違い様に啓介は掴む。
「…帰るって…何でだよ」
「何でって…用事も済んだし居る意味ないでしょう?」
 用事って何だよ?
 カッとして、啓介は拓海の両肩を掴む。
「お前なぁ…!」
 けれど、真正面から見た彼女の表情に言葉を詰まらせる。
 涙を堪え、必死に虚勢を張ろうと張り詰めている彼女の表情を。
「……帰らせろよ。どうせ……なんだろ?」
 彼女の声は震えていた。
 啓介の視線から逃げるように俯きながら。
「どうせ…何だよ?」
「け、啓介さんは……遊びで、こう言うのを簡単に出来るだろうけど…俺は…」
 まぁ、遊びで女と寝た事が無いとは言わない。
 けれど、彼女に関しては紛れもない…恋情の産物だ。
「俺は…慣れてないから、こう言うの…だから、すぐに無かったこととか出来ないし…だから…今は帰らせろよ…」
 肩が震えている。
 俯く彼女の眦から今にも涙が零れ落ちそうだ。
 こいつは…俺に対してどんなイメージ持ってんだ?
 そんな節操無しに見えたのか?
 いや、見えたのか、ではない。見えたんだ。
 啓介は強引だった自分の行動を反省しながら、目の前の小さく見える身体を抱き締めた。
「……遊びとかじゃねぇし」
「………」
 拓海は無言だったが、信じていないのは答えなくても分かった。
「気軽に手ェ出したわけでもねぇし。この一回切りで終わらせるつもりもねぇよ」
 ドン、と胸を拳で叩かれる。
「責任、感じてるなら…!」
「感じてねぇよ!」
 衝動的に叫んだ。
「いや、むしろ感じさせろ!一生責任取らせろよ、俺に!」
 ああ、そうだ。
 そんで、一生自分の横に立ってればいい。
「な、に言って…」
「わかんねぇのかよ!プロポーズだよ!」
 抵抗していた拓海の動きが止まり、俯いたままの顔が上げられ、ポカンと啓介を見つめる。
 そして徐々に、その顔が真っ赤に染まっていった。
「な、に、馬鹿なこと…」
「馬鹿じゃねぇよ。そんな覚悟も無くお前とセックスなんてしねぇ」
 ドン、とまた胸を叩かれた。
「い、勢いだったくせに!俺のこと好きでも何でもないくせに…!」
「勢いだったのは…認める。けど、しょうがねぇじゃん。お前、すっげ可愛いんだもんよ」
「な、な……」
 頭から湯気が出そうなほどに、拓海の顔が赤くなる。
「それに、好きじゃねぇなんて決め付けるなよ。俺は好きだぜ。お前のこと。すげぇ好き」
「う、嘘だ…!」
 啓介の言葉を否定するように、拓海が耳を押さえて首を何度も横に振る。
 けれど、その瞳にどこか哀願するものを啓介は感じていた。
 本当は、信じたい。けれど、自信が無いのだと、その瞳は伝えている。
「だって…啓介さんの好みって、巨乳で、色気がある大人の女って…!」
「ああ、そうだよ」
 大きな瞳の下の、ちょんと摘んだような鼻を指で摘む。
「そんな好みをすっ飛ばして、お前に欲情しちまったんだからしょうがねぇだろ?
 巨乳の女と、お前のマッパだと、俺は確実にお前のマッパに勃つね。勃つだけじゃねぇ。ギンギンにおっ勃てて、お前の足腰立たなくなるまでヤリ尽くしてやるよ。
 それでもお前、疑うっつーのか?!」
 ペシンと、鼻を摘む指を叩かれ弾かれる。
「け、啓介さんの変態!結局ヤりたいだけじゃん!!」
 む、とむくれながら啓介もまた言い返す。
「ああ。ヤりてぇよ。ヤりてぇに決まってんじゃん。お前、可愛いんだもんよ!」
「か、かわい…って…」
「可愛いんだよ!俺はお前みちまうと、もう条件反射的に欲情するんだよ!ヤられたくなかったら、俺の前で可愛いことすんな!」
「…か、かわいくねぇもん」
「可愛いつってんだろ?!声も、顔も、身体も、やべぇくらいにエロいんだよ。自覚しろ!」
「え、えろ……」
 カッカと彼女の頬が燃える様に熱くなる。
 そしてとうとう力が抜けたように、ふにゃんと啓介に寄りかかるように倒れこむ。
「…………啓介さんのバカ」
 啓介の肩に頬を預けながら、つん、と唇を尖らせ拗ねる。
 だから…そう言うところが可愛いっつーんだよ。
 自分に身を預ける少女の身体を嬉々として抱き締めながら、啓介は彼女に対し答えを察している疑問を投げかけた。
「それより、さ。お前は何でなんだよ?」
 え?と彼女がポヤンとした表情で啓介を見上げる。
「俺はお前が好きで、可愛いからセックスした。けど、お前は何でなんだ?」
 問うと、彼女の頬がまた朱色に染まる。
「え……」
「逃げる機会も、拒む機会もあったよな。けど、お前は逃げなかったし、逆に進んで俺を受け入れた」
 なぁ?と囁きながら、彼女の真っ赤な耳朶に軽く歯を立てる。
「何で?」
 腕の中の彼女の身体が微かに震えている。
 うう、と呻き声のような音さえ漏れている。
「そ、そんなの…」
「そんなの?」
 ゆっくりと背中を撫でると、彼女の唇から吐息が漏れた。
 ああ、やっぱコイツすげぇ可愛い。
 露になった項に、唇を寄せようとしたその瞬間、首筋に痛みが走った。
 ガブリと、腕の中の存在が啓介の首に噛み付いている。
 そしてドン、と突き飛ばされた。
「…んなの、シタかったからに決まってんだろ!」
 驚いている隙を縫い、彼女が啓介の横をすり抜け部屋から飛び出す。
 バタバタと慌しく階段を駆け下りる音。
 すぐに我に返り、啓介はその足音を追った。
「…待てよ!」
 けれど、その表情に焦りは無い。
 ニヤニヤと、やに下がった顔で手荒いキスマークを付けられた首筋を押さえながら、きっと玄関で焦りのあまりもたついているだろう彼女を想像する。
「…本当に、可愛いヤツ…」
 呟きながら、啓介は玄関へと向かう。
 そして予想通り、靴が上手く履けずにもたついているその愛しい背中に手を伸ばした。
 もう一回、シテいい?
 そう尋ねたら、この晩生な少女はまた啓介に痛い印を残すだろうか?
 ほんのり期待を抱きながら、啓介は愛しい彼女を腕に抱き締めた。





 結論として、兄である涼介には二人の関係はすぐにバレた。
 と言うより、
『待てよ』
『帰る』
 と押し問答…もといイチャついている現場に、涼介が『ただいま』と帰宅してしまったわけなのだが。
 二人揃って、リビングのソファに座る涼介の前に正座しながら、兄の叱責を待つ。
 もうすぐDが始まると言うのに、浮ついていると叱られるだろうか?
 チーム内恋愛は禁止か?モチベーションが下がると言われてしまうか?
 けれど、ビクビクと断罪の言葉を待つ二人に浴びせられたのは、憂いを帯びたカリスマの溜息だけだった。
「仕方ないな…」
「え?」
 二人してソファの涼介を見上げる。
「出来てしまったものはしょうがない。ただし、バトルに影響を与えるような付き合いは厳禁だ。啓介、くれぐれも藤原の足腰が立たないくらいにヤりすぎるとかは…止めろよ」
「え、あ、…ああ」
 パチパチと瞬き、そして不思議そうに二人顔を見合わせる。
「何だ?」
 そんな息の合った二人に苦笑しながら、涼介が問いかけると、首をかしげながら啓介が問い返す。
「…いや、てっきりアニキに反対されるとばかり思ってたから…すんなり認めるのが不思議でさ。なぁ…マジいいのかよ?」
「反対されたかったのか?」
「いえ!」
「…そういうわけじゃねぇけど」
 ただ、なぁ。
 そう視線を合わす二人に、涼介はハァと息を吐いた。
「しょうがねぇだろ?散々俺が妨害工作してもくっついちまったんだ。逆に、俺の妨害を乗り越えてくっついちまったお前たちの互いの想いの深さに、俺は感動すらしてるよ」
 言葉の内容とは裏腹に、その口調は呆れ返ったものだった。
 そしてそれより、啓介に引っかかったのは『妨害工作』。
「……妨害工作って、アニキ…」
 ニィ、と意地の悪い笑顔で兄が微笑む。
「お前たちが惹かれ合ってるのには気付いてたからな。だから啓介には藤原を女として意識しないように、藤原には啓介の好みが自分とは真逆だと思い込ませ、くっ付くのをせめてDが終わってからにするようにしたつもりだったんだけどな…」
 だから、くっついちまったもんは仕方がない。
 堂々とそう告げられ、初心で純真な恋人たちは、自分たちがくっ付いたことを、神に感謝したい気持ちになった。







end -2009.05.14-


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