Reversible「身勝手」続編

※R18指定
このお話は涼拓ですが、拓×涼Hな内容になっております。ご注意下さい



後編


「は…んは…ぅん…」
 恥ずかしいくらいに声が出る。
 もちろん、涼介さんのではない。俺のだ。
 涼介さんの胸に吸付きながら、俺の吐息とともに音が漏れる。
 ぷちゅ、くちゅ、と俺の唾液が涼介さんの乳首と混じり、濡れた水音を立てるたびに、痛いくらいに股間が疼く。
 ゆったりと、涼介さんはベッドヘッドに背中を預けながら、必死に吸付く俺の頭を撫でていた。
「ふふ…可愛いな。まるで赤ん坊のように俺の乳首に吸付いてるぜ」
 ああ、ダメだ。恥ずかしい。
 けれど、俺は吸付くことを止められなかった。
「そんなに必死になって。そんなに俺の乳首は美味いか?」
 聞かなくても知ってるくせに。
 ほんの少し恨めしくなって、俺は乳首に吸付いたまま涼介さんを上目遣いで見上げた。
 ふ、と甘く涼介さんが微笑む。
「藤原。吸付くだけじゃなく、俺の乳首も揉んでみろ。俺がするようにだ。分かるよな?」
 分かる。
 俺は空いた乳首を親指と人差し指で挟み、適度な力で捏ねてみた。
 ビクリと、涼介さんの身体が一瞬跳ねた。
「……ああ。そうだ。良いぞ」
 今度は、吸付いている乳首を歯で挟み、軽く甘噛みしてみる。
 また涼介さんの身体が跳ねる。
「…涼介さん、気持ち良い?」
 自分の愛撫で、涼介さんが気持ちよくなってくれる。
 その初めての体験に、俺はだんだん夢中になり始めてきていた。
 す、と指を乳首から下腹部へと撫で下ろす。
 そしてすっかり、天を向いている涼介さんのペニスへと指を這わす。
「…藤原…今日はそこはいい。奥を…頼む」
 奥?
 どう言う意味だろうかと思っていたら、涼介さんが俺の身体を離し、そしてくるりと背中を向けた。
 一瞬、拒絶されてしまったのだろうかと、不安に思ったのは一瞬だ。
 何故なら、体勢を変えた涼介さんは、すぐに…俺の目の前に四つんばいになって尻を高々と上げたからだ。
「お前の指で…慣らしてくれ」
 キュっと引き締まった涼介さんのお尻。
 その間の固く閉ざされた秘部。
 そんなところに、俺なんかが手を触れて良いのだろうか?
 そう感じる戸惑いとは裏腹に、俺の中に「触れたい」と叫ぶ衝動があった。
 おそるおそる、涼介さんの尻の割れ目に指を這わす。
 そこは固く閉ざされており、慣れて潤滑剤なしでも緩むようになった俺のそことは大違いだ。
 きゅっと窄まったそこに、俺は戸惑い悪戯に指で襞を撫でる。
「……ん、藤原」
 すると涼介さんの鼻にかかったような吐息が聞こえた。
 俺の下腹部が、ズクンと熱くなる。
 涼介さんも、あんな声を出すんだ…。
 ドクドクと心臓に血液が集中する。
 俺の顔は真っ赤だし、滾ったペニスの先からは先走りの液さえ漏れ始めている。
「あの……涼介さん、何か濡らすものは…」
 俺はいつも潤滑剤やゴムなどは涼介さん任せだ。
 だから今回も聞いてみる。
 涼介さんは四つんばいの姿勢で、顔だけを振り向かせた。
「俺の…コートのポケットに全部ある。だが…ゴムはしないで良い」
 中出しをされると後が辛い。
 また膀胱炎など、感染症を誘発する怖れもある。
 医師の卵としてそれを良く知っている涼介さんは、俺の中に中出しをする事は決してないし、また大抵の場合はゴムを装着している。
「お前を感じたい。俺の中にお前を注いで欲しいんだ」
 嫌か?
 と、哀願するような表情で言われると、俺に否は無い。
「わかり、ました」
 ゴクリと唾を飲み込み、ベッドの傍らの椅子に無造作に掛けてあった涼介さんのコートに手を伸ばす。
 そしてポケットの中から、使用されたことはあっても、自分が使用したことのない物を取り出した。
 チューブ上のそれから、五百円玉大くらいの量を取り出し、指に塗りこみ固い蕾に触れる。
 ヌルリ、と何度か襞を広げるように回転した指は、徐々に緩んできたそこに迎えられるように滑り込む。
 他人の尻穴に指を突っ込むなんて初めてだ。
 正直、自分のはある。
 涼介さんに開発され、どうしようもなく身体が疼いた夜など、普通の自慰だけでは収まらないのだ。
 自分の指を涼介さんのものだと、想像して自分を何度か慰めた。
 俺はその時の経験を頼りに、涼介さんの穴の中に侵入する。
 熱くて…狭い。
 この中に俺のが収まるのだろうか?不安だ。
「う…藤原…その…もうちょっと奥の方に…前立腺がある。…分かるか?」
 涼介さんが苦しそうに息を荒げる。
 辛いのだろう。俺だって、最初はとても辛かった。
 だけど、ある一点を涼介さんの指が刺激した瞬間から、快楽でいっぱいになった。
 俺がそうなったように、涼介さんにもそうなって欲しい。
 ズズ、とさらに指を奥へ突き入れる。「う…」と涼介さんのうめき声が聞こえる。
 けれど、心当たりのしこりはまだ届かない。
 人差し指では無理だ。
 俺は指を慎重に引き抜き、今度は中指を浸入させてみた。
 ぐぐ、と奥まで突き刺す。
 すると、指先に確かに感じるしこり。
「ここ、ですか?」
 ぐ、と押すと、涼介さんの屹立から液が零れた。
「ぅあ、ふ、じわら…ぁ」
 涼介さんの甘い声。俺の胸がどんどんざわめいていく。
「ここ、がいいんですね?」
 あ、あ、と断続的に続く涼介さんの声。
 ゆらりと、指の動きに合わせて涼介さんの腰も揺れる。
「そう、だ…もっと、弄ってくれ…お前ので…もっと…」
 指を、二本に増やし、焦らすようにゆっくり、丁寧に中をかき回すと、さらに涼介さんの腰の揺れが激しくなった。
「…焦らさないでくれ。はや、く…藤原!」
 ハァハァと荒い呼吸が聞こえる。
 けれど、それはもう涼介さんのなのか、俺のものなのか、分からなくなっていた。
「涼介、さん!!」
 堪えきれず、埋め込んでいた指を抜き、俺は自分の屹立をヒクヒクと痙攣するそこに押し当てた。
 誰かの肉の内に、これを埋め込むのは初めてじゃない。
 けれど、女の柔らかく暖かいそことは違い、男の…いや、涼介さんのそこは、火の様に熱く、そして痛いくらいにきつかった。
 ぐぐぐ、と俺のが涼介さんの内側を切り開く。
「う、ぁあ!」
 苦しそうな涼介さんのうめき声。
 酷いことをしているな、と辛く思う気持ちと同時に、この人に、より激しい感覚で自分を刻み込んでいるような気がした。
 それは肉体的なものより、精神的に激しく深く感じた快感だった。
「涼介さん…」
 愛おしいと言う気持ちが俺の全身を支配する。
 掴んだ尻肉の固さ。
 掴む指に力を込め、そしてゆっくりと抜き、また深く突き刺した。
 そして最奥で、俺を刻むようにぐるりと回す。
「……くぅ、ふ、じわらぁ」
 好き。
 好きだ。大好きだ。
 この人の全部が、俺でいっぱいになればいいのに。
 ぐいぐいと、涼介さんの快楽を置き去りに腰を動かす。
 涼介さんの白い尻に、俺の濃いとは言えない濃い茶の陰毛が絡んで刺激する。
 その色彩のコントラストに、俺の興奮はさらに増す。
 最初は淡いピンクだった俺の屹立が、涼介さんの内部で刺激されうっすら赤に染まる。
 ぬらぬらと、ゼリーと先走りの液で濡れたそれは卑猥で、涼介さんの穴からも、泡だったそれらが混じった粘液が漏れ始めている。
「涼介さん…涼介さん…」
 馬鹿みたいに彼の名を何度も呼んだ。
 かつて、女の子と経験した性交がままごとに思えるくらいの強烈な快感。
「ふじ、わら…いいぞ…いけ」
 その言葉と同時に、涼介さんの内部がきつく締まった。
 瞬間、脳髄に電流が走り、俺の意思とは関係なしに下腹部に激流が流れ出す。
「あっ」と言う間もなかった。
 俺は涼介さんの内部に、濁った粘液を吐き出し、そして全身を痙攣させていた。
 全てを吐き出し、痙攣が治まった頃に、遅ればせながらに気が付いた。
 涼介さんの屹立が、まだ快楽の途中で立ち上がったままであることに。
 俺はさっさと自分だけイってしまったのだ。
 ズルリと、涼介さんの内部から萎えた俺のが抜け出る。
 抜け出た穴から、俺の吐き出した欲望がトロリと零れ落ちた。
「お、れ…ごめんなさい、自分だけ…」
 申し訳なくて、涼介さんに正座で頭を下げる。
 すると、四つんばいの姿勢から向き直った涼介さんは、俺に向き直り、そして「フッ」と甘く微笑んだ。
 今度は、オスの顔で。
「良かったよ。こんなに、感じるものだとは思わなかったな。だがやはり…」
 涼介さんが腕を伸ばしたと思った瞬間、俺の身体はベッドの上に押さえつけられ、涼介さんの身体が圧し掛かっていた。
「俺はやはりこっちの方が性に合うようだな。藤原も、こっちの方が好きだろう?」
 そして慣れた手つきで、涼介さんの指が俺の尻肉を割る。
 スルリと内部に入り込む指。
 俺の中は、それに合わせるように力を抜き、指を迎え入れた。
「ここでイカせてもらうぜ?」
 淫蕩に笑うその顔に、さっきまでのメスの色は無い。
 けれど。
「だが、たまにはあんな形も良いな。それに、見ろよ」
 と、涼介さんが示したそこに、内腿を伝う粘液。
「俺の内に、お前の精液を抱えたままでお前を抱く。そう言うのも倒錯的で悪くは無い」
 ニヤリと微笑み、俺の乳首に噛み付いた。
「より深く、お前と繋がっているようでな」
 ツキリと走った胸の痛み。
 けれどそれは紛れもなく快感だった。
 俺は、今度はメスの顔で微笑み、涼介さんの首に腕を回し引き寄せた。
「…いっぱい注いで。俺の中、涼介さんでいっぱいにして?」
 フ、と微笑み彼が俺の耳に囁いた。

「…愛してるよ、拓海」

 その瞬間、確信した。
 俺は愛されている。
 そして、俺は涼介さんを愛しているのだと。
 本当の意味で、この瞬間が俺たちが両想いになった時だった。




2008年12月12日