Reversible「身勝手」続編
※R18指定
このお話は涼拓ですが、拓×涼Hな内容になっております。ご注意下さい
前編
最初は、質の悪い冗談を言っているのだと思った。
だが、それが本気だと知ったのは、いつもの如くラブホテルと評される施設に入館し、服を脱ぎ、汗を流し、湿った身体で大きなベッドの中に二人で潜り込んでからだった。
「……本気なんですか、涼介さん」
未だ信じられない気持ちで問いかけると、ゴロリとベッドの上に仰向けに横たわったままの彼がはっきりと頷いた。
「ああ、本気だ」
そして俺に向かって「さぁ」とばかりに両手を広げた。
「来い。今日は俺がお前に突っ込まれてやる」
「………」
平均身長でしかない自分よりも10センチは高い均整の取れた身体。
バランスの良い骨組みの上に、しっかりと覆う固く締まった筋肉。
その上の顔は、女性的ではないのに、綺麗としか表現できない端整なもの。
クイ、と形の良い眉毛が跳ね上がる。
「どうした?俺ではその気になれないか?」
…何でこうなっちゃったんだろう?
俺はただ、涼介さんが好きなだけだったのに。
だから、遊びでも、気まぐれでも良い。涼介さんに抱かれているのが嬉しかった。
けれど、自分の恋心など彼には重荷になるどころか、嫌悪の対象にさえなり得ると知り、必死にその想いを殺し続けた。
そんな報われぬ恋心が叶ったのはつい先日のこと。
諦め、別れを告げた自分の態度が、氷のようだった彼を揺り動かしたらしい。
あの電話の向こうから聞こえた彼の言葉。
本当は嘘じゃないかと、騙されているんじゃないかと、実は今でも疑っている。
だからか、俺は両思いになった今でも涼介さんに甘える事ができていない。
もう素直に甘えても良いのに、躊躇うたびに彼が咎める視線を寄越す。
でも、仕方が無いじゃないか。
ずっと今までそうしてきたんだから、今更素直に甘えろといわれても無理だ。
そんな俺に、このホテルに来る前に涼介さんは言ったのだ。
『分かった』
と。
俺が素直に甘えられない、その理由を述べた時に。
『藤原が俺を信じられないのも無理は無い。だから、手っ取り早い俺の愛情をお前に示そう』
最初、どんな意味か分からなかったのだが…。
その、涼介さんいわく手っ取り早い愛情表現が、今、目の前でベッドの上で据え膳として置かれる「これ」だ。
「俺にはアナルを弄られる趣味もないし、男相手に突っ込まれるのも真っ平だ。
だが、藤原に突っ込まれるなら吝かではない。むしろ、お前が俺の中に突っ込むのかと考えただけで、らしくなく下腹部が熱くなる」
言葉通りに、涼介さんの大人しかった股間が、ヒョコリと持ち上がった。
「お前に、俺の処女をやろう。それがお前に対する俺の揺ぎ無い愛の証だ」
見る見る、涼介さんの股間が固くなっていく。
俺はだんだんそれを直視できなくなって、頬を真っ赤に染めて目を逸らせた。
「で、でも、涼介さん…俺、そんなの出来ないです…」
涼介さんのしなやかな筋肉に覆われた身体。
冷たそうなのにその肌は熱く、俺に圧し掛かるたびに、いつも焼け焦げそうなくらいに俺を燃やす。
最初は滑らかだった肌に汗が浮かび、美しい筋肉を誇張するかのように、筋肉の線に沿って汗が流れ、俺の上に滴り落ちる。
いつも、俺の上でそうやって汗を落としてた涼介さんが、俺の下になる?
考えられなくて、俺は首を横に振り激しく否定した。
すると涼介さんは「フッ」と微笑み、「大丈夫だ」と俺の首に腕を回した。
「藤原は初めてなんだろう?大丈夫だ。俺がリードするから、安心して任せろ」
魅惑的に、俺を誘う涼介さん。
けれど、受け入れ難いものはどうしようもない。
「え、いえ…俺、別に初めてじゃないですけど、涼介さん相手になんて…」
困惑して、思わず言ってしまった言葉。
その瞬間、俺の下の涼介さんの顔がピシリと強張った。
「…初めてじゃない?」
脅すように、俺を睨みつける。
何か怒らせてしまったんだろうか?
俺は戸惑いながらも頷いた。
「は、はい…。えっと…涼介さんとこんな関係になる前に一度だけ…」
ビシリ、と涼介さんの額に青筋が浮いた。
どうしよう。もっと怒らせてしまったようだ。
「…その女とは今も関係があるのか?」
何を言ってくれるんだろうか。
「そんな事、あるわけないじゃないですか!俺には涼介さんだけです!!」
こんなに涼介さんのことが好きなのに、疑われるなんて心外だ。
強い口調で言い返すと、涼介さんはやっとニヤリと笑った。
そして。
「わぁ!」
俺の股間を、ぎゅ…と強めに握り締めた。
「だよな。これも、俺のもんだよな」
にぎにぎ、慣れた手つきで俺を嬲る。
もう、涼介さんに開発されてしまった俺の身体は、その指先一つで簡単に煽られる。
はぁ、と熱い吐息を零しながら、「…そうです」と答えると、ますます涼介さんの笑みが深くなる。
「だったら、これを俺の中に突っ込め」
快楽に流されそうになった俺の意識が、一瞬で引き戻される。
「な、何で!」
すると、涼介さんはまた俺をギラリと睨みつけた。
「当たり前だ。お前の後ろは勿論だが、前も俺のもんだ。お前のこれに、女の記憶が残ってるのかと思うだけで業腹だ。
全部、俺で塗り替えてやる…」
うっとりと、舌なめずりしながら囁く涼介さんに…俺の股間もズクンと熱く疼いた。
それは正にオスの衝動。
俺にだって、男としての本能が無いわけではない。
ましてや、誘惑してくるのは大好きな相手。
かつて、女相手にした行為を、涼介さん相手に置き換えトレースしてみる。
言葉よりも早く、俺の表情が、そして涼介さんの手の中の俺の股間が返事した。
ニヤリと、涼介さんが淫蕩に微笑む。
「その気になったようだな」
ゆったりと横たえていた身体を起こし、俺の肩を掴み、ベッドの上に押し倒す。
これはいつもの体勢。
だけど、今の涼介さんの顔はオスの顔ではなかった。
俺を魅惑して止まない…メスの顔。
「さぁ、藤原」
スゥ、と俺の腹を指でなぞり、臍をクルリと人差し指で弄る。
「まずは…俺の乳首を舐めてもらおうか」
涼介さんの身体が俺の上に圧し掛かる。
そして逞しい胸が、俺の眼前にやって来る。
艶やかな肌の上の、小さな肉芽。
口内に唾液があふれ出す。
やけに乾いた唇を、頻繁に舌で舐め潤わせながら、俺は目の前に差し出された小さな芽に舌を伸ばした。
ぐ、と涼介さんが俺の頭を抱え、自分の胸に押し付ける。
「ああ…藤原…」
感に堪えないと言った風情の涼介さんの声。
俺は夢中で、涼介さんの胸に吸付いた。
2008年12月11日