新妻は今日も大変

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 十八歳の時。
 五歳年上の同性から告白をされた。
 男なのにとても綺麗な人で、頭も良くてとても尊敬できる人だったけれど。
 自分の恋愛対象は異性に向いていたから断った。
「嫌いじゃないですけど・・・俺、やっぱ結婚したいから涼介さんの気持ち受け入れられないです」
 嫌いじゃない。
 むしろ、敬愛的な意味で好きだった。
 こんな平凡な自分に告白してくれたのが嬉しかった。
 つまらない自分に、キラキラした眼差しを向けられてくすぐったい気持ちにもなった。
 だから傷つけたくなくて、少しでも優しい言葉を探して、同性同士では決して叶えられない「結婚」と言う言葉を用いた。

 だけど。

「お前のために日本の法律を変えたよ。さぁ、藤原。俺と結婚しよう」
 俺が十九歳の時。
 結婚に関する法律が改定し、同性同士の婚姻も認められるようになった。
 それが、目の前の彼の仕業だと知り、俺は・・・。
 正直、怖かった。
 だから頷いた。
 彼のプロポーズに、頷くしかなかった。
 冬が空け、もうすぐ春になろうとしている十代最後の初春。
 俺は藤原拓海から、高橋拓海に名を変えた。





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