耳年増




 ※下品です。下ネタ注意!!(R15)








 端的に事実だけを述べると、藤原拓海は「耳年増」である。
 女子高生なんて言うカテゴリーの中で三年も過ごしていると、余計な知識ばかりが増えていく。
 だがしかし、いくら知識と言うソフト面を最新アップデートしていても、ベースとなるハード面は愛車のハチロクと同じで、旧式のまま小学生の純粋な頃のままだったりする。
 予想して欲しい。知識はあるのに「無垢」のまま。
 親しくしている友人に、血縁ではない「パパ」がいる事に疑問を覚えず、またそのパパとのデート後にお金を貰ったりなど、おま・・・それ、どう見てもエンコー・・・な状態であっても、友人が「お小遣いをもらっただけ」と言われたら信じてしまう、そんな穢れを知らない純真な魂に、いかがわしい知識。
 これは非常に悪質な事態である。
 口に出すのを憚るようないかがわしい知識や言葉でさえ、彼女には躊躇いが無いのだ。
 友人が話す性的な内容を、疑問に思い素直に言葉にする。それで何度か周囲の人間に注意され、拓海もさすがに学び、よくわからないままに「しったかぶり」と言うスキルを学んだ。
 何となく友人の会話から、「そういうことかなぁ」と予想はしても、確信できないままに知識として積み上げている。
 そして高校を卒業し、邪悪を注ぎ込む友人と離れ、新たな人間関係を築くにあたり、拓海が一番苦労しているのが、実はこの面であった。
 彼女に性的な経験は無いが、知識だけはある。それも、金銭で性的行為を売買するようなビッチの知識である。
 だから、お酒に酔って、つい、出てしまった。
 以前から謎に思っている事を、つい、年上で頭も良くて包容力もありそうな、憧れの異性の男性に聞いてしまったのだ。
 それは拓海が高校を卒業し、参加したプロジェクトDの終了を祝う飲み会の席だった。
 一年の集大成、その場所は普段ハメを外すことの無い拓海や、真面目なメンバーたちの心も緩ませていた。
 皆、楽しそうに杯を重ね、プロジェクトのリーダーである高橋涼介から差し入れである高級肉を堪能している。
 常に張りつめ、滅多に笑顔を見せなかった涼介も、今日だけは雰囲気が和らぎ、穏やかな笑顔を見せていた。
 隣に座る拓海に、ニコニコと嬉しそうに焼けた肉を彼の弟から奪い与えてくれる。美味しいお肉をたくさんくれる涼介は良い人だ。拓海の頭の中に、かねてよりの憧れにプラスして優しいお兄さん認定がされる。
 そしてほわほわした気持ちの中で、拓海は優しい涼介さんならきっと教えてくれるだろうと、そう思ったのだろう。かねてより抱えていた疑問と、不満を彼に相談する事にした。
「りょぉすけさぁん」
 繰り返しになるかも知れないが、拓海は酔っていた。それだけは忘れないで欲しい。
 そして相談を受ける側の涼介は、愛車でこの場を訪れていたため一滴も飲んでいないため素面である。
「何だ、藤原。ほら、これも食えよ」
 そう言って、彼はちょうど焼きあがった肉を箸で摘み、拓海の皿に取り分けようとして・・・。
「ぱいずりってなんですかぁ?」
 肉がポトリと落ちた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
 厚顔無恥・・・ではなく、冷静沈着を常とする涼介が焦る事は滅多にない。だが、今の涼介は動揺を隠すことが出来なかった。
「ぱいずりってぇ、まえにぃ、ともだちが言っててぇ、何のことかおれ、よくわかんなくって」
「そ、そうか・・・。不必要な知識だから、あまり知る意味も無いかな・・・」
 涼介の答えに、拓海は不満そうに唇を尖らせる。
「でもぉ、よくわかんねぇけど、すっげ、バカにされたんですぅ」
 幸いな事に、この二人の会話を聞くメンバーはいなかった。周囲のメンバーはほぼ出来上がっており、二人から離れた場所で騒いでいる。
「馬鹿に?どう言う意味?」
 重ねて言う。涼介は動揺したままだった。彼の優秀な頭脳でも、拓海の斜め右方向から押し寄せる予測不可な行動に、すぐ反応するのは難しい。
「えっと、おれのヒンニューじゃぁ、はさむことできないからムリだってぇ、男の人をよろこばせることできないってぇ」
 繰り返し伝えておく。拓海は酔っている。従い、感情の振り幅が激しくなっている。涙腺のリミッターも切れやすくなっている。
 ぐすぐすと彼女の大きな瞳が潤ませ、ポロリと涙を零れ落としながら傍らの涼介を見上げた。
「だから、ぱいずりできないおれじゃあ涼介さんよろこばせられないんですぅ」
 落ち着こう、そう思っていた涼介の努力が天然により打ち壊される。
 彼は叫びたかった。
『ナニいっちゃってんの、オマエ!すげぇ喜ぶに決まってんじゃん!!』
 低音イケボイスで、峠一帯に響き渡るほどに叫びたかった。
「ぱいずりってぇ、どうするんですかぁ?おれじゃ、ぜったいにダメ?」
 うるうる、涙目で自分を見つめる、かねてより狙っていた年下の女の子。
 煩くなく、控えめなのに、車に関しては負けず嫌いで、こちらが驚くような天才的なドライビングを見せる、何もかも涼介の予想を超える魅力的な子。
プロジェクトに参加してもらい、一年かけてじっくり落としていこうと思った彼女からの、まさかの質問。
 思わず、拓海の胸を凝視する。確かに、彼女の肉の厚みではその行為は難しいだろう。いやいや、挟まれなくとも、その控えめな盛り上がりの谷間に擦り付けるだけでも十分、涼介的には大満足なのだが、いやいや・・・。
「パイズリとは、胸部の肉を寄せ集めて、その肉で男性器を擦る性的な行為の事だ」
 どう答えれば良いものか。素直に自分の感情を暴露すれば、とても変態的になってしまう。悩んだ末に、涼介は拓海の質問に真面目に応えることにした。
「え・・・・・・」
 涼介の答えに、拓海の顔に絶望が浮かぶ。
「お、おれのヒンニューじゃあ、ぜったいにダメなやつだ・・・。うぅ、おれ、やっぱ涼介さんによろこんでもらえない・・・」
 いや、だから喜ぶって!
「ゴ、ゴホン。いや、そうでもない。いわゆるそういった行為は、主に巨乳好きなどの人種が好む行為であって、俺の好むプレ・・・ゴホン、行為ではない」
 では何を好むのかと問い返されたら困る、非常に困る。まさか全身余すことなく舐め回して、自分の男性器をその肌に擦り付けて、ネチョネチョの体液だらけにしたあげく、全ての穴と言う穴の内側の粘膜まで暴きたいとか、そんなこと言えない。
「セックスで相手を喜ばせるのはテクニックじゃない。その気持ちが大事だと思うんだ。胸の大きさも人により好みが別れる。俺は正直、大きな胸は好きじゃない。柔らかい体は好きだが、あまり締まりのない身体だと気持ち悪くてね。だから藤原は俺の理想に近いんだ」
 コテン、と拓海の首が傾げられ、不思議そうに涼介を見つめたまま、その両手が自分の胸に置かれ、そしてぐにぐにと揉み始めた。
 自分で自分の胸を揉みしだく姿に、涼介の理性が限界を訴える。
「涼介さん、ヒンニュー好き?」
 ある意味間違いではないが、そうではないのだ。
「いや、藤原が好きだな」
 酔っ払いにも、ストレートな告白はきちんと伝わったようだ。拓海の顔が、一瞬で真っ赤に染まる。
「え、え、えええ、涼介さん、おれのこと、すきって、えええー」
 頬に手を当て、恥ずかしそうに身悶えるその姿はとても可愛らしかった。欲望に負けそうになっていた涼介の理性を復活させるほどに。
 こんな純真な子に、俺は恥知らずにも穴と言う穴を責めたいとか穢れた事を!スルにしても、段階を踏んで、ゆっくりと・・・、って。
「じゃあ、涼介さぁん、おれのちっさいけどもみます?」
 胸を逸らし、涼介に向かい胸を差し出す天然小悪魔。
 優しい大人の仮面が一瞬で壊れる。
 涼介の意志とは裏腹に、手が勝手に拓海の胸へ向かう。
「いいのか?」
 口が勝手に答えている。
「ん。さわって?」
 これで触らなかったら男ではない。
 フンフンと鼻息荒く、夢にまで見た拓海の胸に触れ、思う存分味わった。
 手のひらに包み込む肉の感触は、予想通り薄い。だがこれがいいのだ、これが。
 たぶん下着はスポーツブラなどのパットもない物なのだろう。布越しではあるが、固く尖ってきた乳首を手のひらで捏ね、その感触を楽しむ。
「どう?」
「ふぁん、ちょっと、いたいけど・・・へんなかんじですぅ」
 涼介の背筋に悪寒に似た快感が走る。それは感動だった。真っ白の雪を汚す背徳的な快感。俺がこの子を穢したのだ、その事実が涼介の興奮を煽る。
「ん、ぅんん、おればっかじゃ、ふこうへいだから、涼介さんもぉ」
 涼介も良い大人なので、十代の頃のようにすぐに勃起はしないが、さすがに好きな子の胸を触っていて勃起しないほど枯れてはいない。
 衣服の下で窮屈そうに膨れているそこに、いきなり拓海の手が伸びた。
「ふ、藤原っ!?」
「うわ・・・おっきぃ・・・おっきぃですよね、これ」
 拓海がそこを不思議そうに掴み、撫でる。
 ヤバい。非常にヤバい。涼介の頭の中でエマージェンシーコールが鳴り響いている。
「あ、ああ。俺のは平均より大きいと称されている」
 焦りすぎて、よくわからない答えを返してしまった。
「わぁ、やっぱりおっきぃんだぁ・・・。ともだちがぁ、チ○コおっきいのいたいからヤだっていってたなぁ」
 ああ、いつか・・・いつか、そのトモダチしめてやる。
 だが涼介のを手で弄る拓海は嬉しそうにフフフと笑った。
「おれのちっさくてダメだけど、りょうすけさんのはおっきくてダメなんですねぇ。ふふふ、おそろいー」
 一瞬、縮まりかけていた欲望が、ピコーンと雄々しく復活する。
「あ、もっとおっきくなった」
「そうだね、お揃いだ。俺たち、お似合いだと思わないか?」
「おにあい?でもぉ、涼介さん、カッコいいし・・・」
「でも俺の大きいから、人気ないんだ。お前に受け入れてもらえなかったら悲しいな。藤原なら受け入れてくれるだろ?」
 モミモミと胸を揉みながら。
ぎゅっぎゅっと、股間を揉まれながら。
涼介は拓海の耳元に顔を寄せ、そんな事を囁く。
 アイドリングはもう済んだ。タコメーターは限界まで振り切っている。あとは加速するだけ。
「むねちっさくってぱいずりできなくてもぉ、いいんですかぁ?」
「胸なんぞいらん。脇でも肘でも膝でも挟めるだろ?口もあるしな」
「おれぇ、おとこみたいだし・・・」
「いや、可愛い女の子だろ?乳首もこんなにコリコリさせて・・・」
 ぎゅっと胸の先端を摘まむと、ひゃぁん、と愛らしい鳴き声が上がる。
「ほら、可愛い」
「ううう、いたいのやだぁ」
「痛くない、痛くないよ。痛くなくなるように、いっぱい舐めてあげる」
 相手が酔っ払いだとか、そんな事はもう涼介には関係なかった。
 煽ったのは拓海だ。無意識でバトルを仕掛けられ、自分はそれを受けただけ。
 ただ、バトルの主導は自分が最終的には頂いてしまうだけで。
「ここじゃあ、優しくできないから、場所を移そうか」
 涼介の優秀な頭脳は悪だくみでこそ本領を発揮する。
 素面になった拓海の態度だとか、色々考えらる事象を想定し、勝利へのシュミレーションをする。
 打ち上げで盛り上がるメンバーに気付かれないように、二人はその場を離れ、涼介の自宅へ移動した。
 そこで何があったかは割愛したい。(残念ながら)
 ただ、涼介は自室のベッドの上で、頭の中で思い描いていた妄想の通りに行動した事だけは確実である。
 未知の体験に途中意識を飛ばした拓海が、素面に戻ったのは翌朝の事だった。
「おはよう」
 なんて、耳元に囁かれ、一瞬で覚醒した拓海が慌てて身動きしようとしたが、下半身に走る鈍い痛みにまたベッドに戻り。
 さらに背後から抱き付く涼介の腕に阻まれ、お互いが素肌な事に気付き。
「な、ななな、な、な、なんでぇ!!」
 涙目で絶叫する拓海に、嬉しそうに涼介が伝えたのは、確かに嘘ではない昨日あった彼女が仕出かした事実。
「何でって、昨日拓海から誘ってきただろ?俺に胸を揉んでみるかって言って揉ませて。で、自分だけじゃ不公平だからって俺のぺ○スにも手を伸ばしてきて刺激して。それでセックスしないほど俺も鈍感じゃないからね。有難くお前からのお誘いを受けさせてもらったよ。
もちろん、拓海は俺の事が好きだからあんな事をしてきたんだろ?まぁ、俺もお前に以前から好意を抱いていたから嬉しかったけどね。
 拓海は酔っていたとは言え、好きでもない相手にそんな事できないだろう?奥手なお前に、自分から誘わせたのは俺の落ち度だよ。もう今後はそんな事ないようにするから。安心して襲われなさい」
 安心の意味をはき違えた言葉で流され、拓海は昨日の自分の行動に真っ青になりながらも涼介を受け入れた。
 つまり、安心(?)して襲われたわけだが、そこで涼介は初心者に仕出かすとは思えない、例のパイズリの代替とも言える行為を拓海に教え込んだ。
 今まで拓海は、経験もなく知識だけを積み重ねた「耳年増」であったわけなのだが、この二日間の出来事を経て、実体験を兼ね備え立派に耳年増を卒業するに至った。
 藤原拓海はかつて「耳年増」であった。
 だが、今は違う。
「や、やだぁ、涼介さん!何するんですか?!」
「何って、拓海が言ったんだろ?×××って何ですか、ってね」
「う、うそ、それって、そんな意味・・・!?ふにゃぁぁぁ」
 親切丁寧に、「実践」して教えてくれる相手が彼女の隣に存在する為に。
 今日も拓海は、日々、知らない知識を恋人より教えてもらう。彼のベッドの上で。
 そんな彼女の苗字が、藤原から高橋に変更したのは、耳年増を卒業した翌年の事であった。








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