人間考察Q&A
Q:「もしもトイレで用を足した後にトイレットペーパーが無かったら」
―――啓介編
ドンドンドン!
「お〜い、誰かいねぇのか!!」
「…うわっ、啓介さん?何か騒がしいと思ったら…」
「その声…藤原か?オイ、紙ねぇんだよ、紙!頼むから取ってくんねぇ?」
「…って、アンタ!姿がずっと見えないと思ってたら、こんなとこに隠れてたんですか…」
「隠れてたわけじゃねぇよ!峠って冷えるじゃねぇか。どうしても腹が冷えてくるんだよ!」
「…ま、いいですけど。上から投げればいいですか?」
「おう、別に俺の立派なのが見てぇんならカギ開けるけど」
「見たくねぇ!!」
ゴン!
「いってぇ!お前、上から投げんなよ、危ねぇだろうが!!」
A:「大声で助けを呼ぶ」
―――史裕編
カラン…。
――しまった!もう尽きていたのか!!
史裕の手の中にあるのはたった10cm程度のトイレットペーパー。
それだけで拭ききれると楽観するほど史裕は人生を嘗めていない。
――どうする?助けを呼ぶか…いや…。
そう考え、史裕はある可能性に気付き頭を横に振る。
――ダメだ…そんな事をしようものなら…。
そうだ。あのガキ大将がそのまま大人になったような男が声高に言うだろう。
『何だよ、史裕!お前、紙なくてトイレに篭ってたんだって?ンなとこでクソなんかしてっからだよ、バァカ!』
しかも絶対に可愛い女の子がいるようなファミレスなどで、わざとそう言うに違いない。
史裕の額からツゥと汗が滑り落ちる。
ではこのまま?
いや、それも無理だ。
どうする?どうすれば…!
悩む史裕の目にある物が映った。
――コレ、だ!!!!
嬉々として史裕は紙を失ったペーパーの茶色の芯を手に取った。
A:「ペーパーの芯で拭く」
―――涼介編
「あれ?アニキ。そのハンカチ捨てんの?」
「ああ。汚れたからな」
「もったいねぇじゃん。洗えば使えるんじゃねぇの?いつもアニキそういうの厳しいのに」
「そうだな…通常の汚れなら俺もまた使用するという事も考えないではないんだが…」
「普通の汚れじゃねぇってこと?!」
「なぁ、啓介」
「アあ?」
「そこのトイレの個室を使用しない方が良い」
「何で?」
「紙が無いから」
……ポトリ。
「アニキさ…まさか……」
「その汚れでは捨てるべきだと思うだろう、啓介?」
A:「手持ちの布で拭く」
―――拓海編
――あ、やっべ。
個室に入ったら紙が無かった。
そんな経験は初めてではない。
しかも大抵それに気付くのは用を足した後だったりする。
こんな時、学校や職場ならペーパーの芯などでその場をしのいだり、自宅なら父親を呼ぶ。
今の状況は屋外。
遠征に出た峠で入ったトイレでの出来事だったりする。
そして不幸にも、このトイレのペーパーは所謂「芯無しロール」であったらしく、頼みの芯も無い。
悩む拓海の耳にその時、トイレに誰かが入ってくる物音がした。
――からかわれるだろうけど、仕方ない。
「あの、すいません!」
ピタリと足音が止まる。
「その声…藤原か?」
――ゲッ!涼介さん?!
たらりと拓海の額に汗が流れた。
よりによって尊敬する人物に、トイレの個室に入っているのを知られてしまうとは…。
しかし背に腹は変えられない。
「あの、紙取ってもらえますか?何か、ここ紙無くって…」
「ああ。そうか。分かった」
――まぁ、でも啓介さんあたりに知られるよかマシかな。あの人絶対からかいそうだもん。でも涼介さんならそんな事しないよな。
ただ自分が恥ずかしいだけで。
ホッとした拓海だったが、返事をしたはずの涼介からの紙がいつまで経ってもやって来ない。
「あの…涼介さん…?」
「つまりは…俺は今藤原の弱みを握っていると言う事か…」
「………は?」
「助けて欲しいか、藤原」
「は、はぁ…まぁ…」
「だったら俺にも見返りが欲しい」
――ミカエリって…何?
「俺がこの紙を藤原に渡す代わりに、俺が欲しい藤原のものを一つだけ貰えないか」
「りょ、涼介さんが欲しい俺のものって…」
「どうする?そうしないと俺はこの紙をお前に渡さないぜ?」
――どうしよ?でも、俺のもので涼介さんが欲しいもの…何か思い付かねーし、たぶんあげちゃっても大丈夫なモンだろ。
「分かりました!あげますから早く紙下さい!!」
「……了承したな、藤原」
今の拓海に涼介の顔は見えないが、見えていたらきっと了承など絶対にしなかっただろう。
「藤原」
「何ですか?」
「俺の欲しい藤原のもの、分かるか?」
「…いえ、分かんねーっす」
フッ、と確かにカリスマが微笑むのを拓海は聞いた。そして背中に悪寒。
「藤原の貞操」
「………………」
「さぁ、この紙を渡すから、この扉を開いてくれないか?」
コンコンと、軽やかなノックの音が響く。
悪寒。眩暈に脂汗。
――ピンチだ、俺!!!
A:「仕方なく助けを呼んだら更なるピンチに見舞われた」
2007.12.1