俺たちE.F.S.F
※ガンオタに捧ぐ…
涼介さんはとても頭が良い人だ。
でもちょっと困った人でもある。
プロジェクトDが始まって、俺はすぐにそれを実感した。
「藤原。これを着てくれないか」
渡されたのは制服だ。
どこからどう見ても、軍隊物アニメのキャラが着る様な、ピンク色の制服だった。
「……涼介さん。何ですか、これ?」
「制服だが?」
見れば分かる。
「…何の制服なんですか?」
すると涼介さんは「フ」と、すごい魅力的に笑った。
笑ったんだ。
「知らないのか、藤原。地球連邦軍の制服だよ」
「…はぁ…知らないです」
「藤原には特別にフラウのタイプを用意してみた。可愛いだろう?」
まさか…とは思っていたけれども。
「これ…女物ですよね…」
「まぁ、そうとも言う」
見覚えがある。これ。
某アニメのキャラの真似ばかりしてるお笑い芸人が、これと似た様な型の青色を着ていた。
「これ…ガンダムですか?」
ニコリと、涼介さんはまた笑った。
「ああ。プロジェクトDのDはGANDAMのDだよ」
…意味が分かりません。
涼介さんはすごい頭が良くて見た目もカッコいい。
けれど、ちょっと…いや、かなり…デンパだった。
結局制服は固辞したおかげで着ることは無くなった。
代わりに、プロDの制服と言われてTシャツが渡された。
シンプルなデザインで気に入っているけど、胸と腕のとこえろの「E.F.S.F」と言う意味が分からなかったので涼介さんではなく史裕さんに聞いてみた。
「Earth Federation Space Force……地球連邦軍の通称だよ…」
と、史裕さんは影のある顔で苦笑した。
涼介さんのデンパは全開だ。
そして涼介さんのデンパで困った事が一つある。
「次のバトルの相手は東堂塾だ」
そう告げられ、啓介さんが「東堂塾ってどんなヤツラなんだ?」と聞き返した。
涼介さんの緻密なデータが披露されるのかな?
そう期待したらいけない。
「東堂塾か…そうだな。例えると…」
これがいけない。
「ア・バオア・クーだ」
意味わかんねぇ…。
「藤原のバトルの相手である二宮 大輝は例えるならドズル・ザビだ。啓介の相手である酒井はギレン・ザビだな」
誰だよ、それ…。
「今回は奇しくも藤原がドズル・ザビの相手をする事になっているが、俺の中のスレッガー中尉は…お前だ、啓介」
ポンと、啓介さんの肩を叩くと、啓介さんが怒った。
「俺に討ち死にしろってか?!」
さすが涼介さんの弟だ。
啓介さんは涼介さんのデンパな発言を理解できるらしい。
俺がよく分からなくて、難しい顔をしていると、涼介さんがこっちを見た。
「不安か?藤原」
不安と言うか、このリーダーの下でやっていく自信が無いと言ったら傷付くだろうか。
「確かに相手は強敵だ。しかし、安心しろ」
ポン、と肩を叩く。
だんだん分かってきたぞ…涼介さんの肩ポンは前フリなんだ。
「ア・バオア・クーにシャアはいない」
自信満々に言う涼介さん。
そして、親指を立て、クイっと自分を指した。
「シャアは…俺だからな!」
俺はデンパじゃない。
デンパじゃないから涼介さんの言葉を理解したくなかった。
けど。
「あんた、だったら何で連邦軍にいるんだよ!」
そうだそうだ。シャアがリーダーの連邦軍なんて聞いた事が無い。
すると涼介さんはまた「フ」と笑った。
「今の俺はクワトロ・バジーナだ」
じゃあ、プロDはエゥーゴって事かよ。
涼介さんの「白い彗星」なんて仇名を、周りに勝手に付けられてかわいそうに…なんて思ってた。
けれど俺は確信している。
自分にそんな通称を付けたのは、間違いなく涼介さん本人だと。
「そこ!何やってんの?!」
涼介さんはシャアでクワトロ大尉で、そしてブライト艦長でもあるらしい。
最近涼介さんは俺を「アムロ」ではなく「ララァ」と呼ぶ。
その意味を知るのがちょっと怖い。
2008.5.2