青い空 白い雲
イライラするな。
すっげイライラする。
「何怒ってんだよ」
何じゃねぇだろ。
「…どうせアンタに言ってもわかんねーよ」
ムッとした顔。
でもこっちの方が怒ってんだ。
「わかんねーって…言わなきゃもっとわかんねーだろうが」
「わかんねーもんはわかんねーんだよ」
啓介さんが舌打ちする。
目が潤む。けれどそれを堪えて睨みつける。
「…かわいくねぇヤツだな」
今更だ。そんなこと。
生まれてこの方、可愛かったことなんて一度もない。
口を尖らせそっぽを向く。
「どうせ俺はこうだよ」
ああ、泣きそうだ。
けど泣いてなんてやらない。
この人の前で弱い姿なんて絶対に見せてやらない。
そんな強がりを張る俺に、あの人がバカにするみたいに吹き出した。
「…何だよ」
悔しくて、睨む。
目の前のあの人の顔は楽しそうだ。
いつもそう。
俺ばっかりテンパってて、この人は気まぐれに俺を振り回すばかりだ。
「いや、何つーか…」
ムカつく。
ニヤニヤとしたその顔に怒りが増す。
なのに…嫌いになれない。
そんな自分が一番嫌いだ。
「お前、俺にわかんねーっつーけど、俺、分かっちまった」
フンと、またそっぽを向く。
分かるはずなんて無い。この大らかと言えば聞こえはいいが、つまりは鈍感で無神経な人が。
人を惹き付けるオーラに溢れて、いつも王様みたいなこの人に分かるはずなんて無い。
そう、思ってたのに。
「お前…俺のこと好きだろ」
そんな事ない!と、すぐに否定できればよかったのに、不器用な俺はごまかすことも出来なくて、固まったままポロリと涙を零した。
情けない。バカみたいだ。
「嫌いだ!」
思わず、叫んでいた。悔しくて。
「嘘付け」
「う、嘘じゃねぇよ!」
「嘘だろ?」
余裕綽々の顔。まるで遊ばれてるみたいでまた涙が滲む。
「俺も嘘付いたし」
何言ってんだよ。
「さっきの、かわいくねぇっつったの大嘘」
頭撫でんなよ。ガキじゃねぇんだから。
「俺の前で、かわいくねぇ態度するお前、すっげカワイイ」
びっくりして、目の前の顔を見上げる。
すると言葉の通りに、啓介さんの顔は可愛くて仕方ないものを見るような、蕩けた顔になっていた。
カァ、と一気に俺の顔が赤く染まる。
それを見た啓介さんの顔も、照れたように染まる。
「お前…俺のこと好きだろ?」
その言葉に、俺はもう否定しなかった。
真っ赤な顔で、小さく頷いた。
「じゃ、俺の勝ちだ」
自慢げなセリフに殊勝だった気持ちがまた消えて、ムッとして睨めば、自信満々な顔の啓介さんが俺に向かって言った。
「だって、俺の方が藤原のことスッゲェ好きだもん」
曇り空みたいだった気分が、眩い太陽に照らされ一気に青空。
「…バッカじゃねぇ、アンタ」
そう照れ隠しに詰ると、
「ウルセぇ」
真っ白な雲のような歯を見せ、晴れやかな顔で啓介さんが笑った。
2007.11.18