ぴよぴよ ぴよ3.5〜仲直り編〜
※R18です。ご注意下さい。
本当に大丈夫?!
永遠に一緒にいられるだなんて、そんな事を本当に信じていたわけじゃない。
いつか別れる時が来る。
いつだってそんな不安を抱いていた。
『愛してるよ』
『ずっと一緒にいよう』
滅多に笑顔なんて他人に見せない人が、自分にはいつだって優しい笑顔で、そう言ってくれるから、今だけだと思っていても、拓海はその言葉を信じて、大事にしてきた。
それなのに。
……あんな裏切りは最悪だ。
「涼介さんのバカー!!!」
キレると自分でも何をするか分からない。
昔からそうだった。
だから、いつも見るたび見惚れてしまう、イヤミなぐらいに整った彼の顔を思い切り拳で殴りつけた。
「待ってくれ、拓海!」
赤く顔を腫らして、追い縋る彼の声に振り向きもせず拓海はその場から立ち去った。
涙ながらにハチロクのイグニッションキーを回し、タコメーターのレッドラインを振り切らせて飛び出した。
きしむタイヤと唸るエンジン。
自分がどんな走りをしているか分からないけれど、車に無茶な走り方をさせているのだろう事は分かった。
フロントガラスが雨で滲む。
ワイパーを動かしても、滲んだ視界は一向に晴れない。
当たり前だ。
滲んでいるのは雨のせいではない。自分の目から零れ落ちる、この涙の粒のせい。
荒々しく拓海はハチロクを走らせ、走り慣れた秋名へと向かう。
そして着いた先は……秋名湖。
ここで…彼、涼介に愛を告白された。
『藤原のことを考えただけで、朝だろうが昼間だろうがいてもたってもいられなくなる。…これはきっと、恋だと思う。藤原、俺の気持ちは迷惑だろうか?』
信じられない言葉。
ただでさえ憧れて止まない存在。そしてさらに拓海は涼介に、同性同士ではあったが密かな恋心を抱いていた。自分がホモであったとは思わないが、涼介のあの切れ長の瞳で見つめられると、頬が赤くなり、胸がドキドキと戦慄きだす。これが恋であると気付いたのは、何となく、で始まった恋の真似事のようなものが、彼女の裏切りによって終わった時。
あの時、感じたのは怒りだけで傷つきはしなかった。
けれど、後に出かけた先の街中で、彼の姿を見た。
綺麗な、大人の女の人と一緒だった。
一対の絵のような完璧なカップル。
誰もが振り返る二人の姿に、拓海は言い知れないほどの嫉妬と、そして悲しみを覚えた。
彼の隣に立つあの女になりたいと、ベッドの中で涙を零し、自分が男以外にはなれないのだと、嫌でも思い知らせる股間の象徴を握り締め、彼に愛される女の姿を思い浮かべ何度も何度も擦り上げた。
苛立ちのままに行った自慰は、空しさしか残らなかった。
ベタつく自分の身体と、ゴミ箱の中のティッシュの山。
…諦めよう。どうせ自分は女になんてなれないのだから。どうせ叶わない思いなら、いっそ捨ててしまえればいいのに。
何度も何度もそう思い、けれども彼の顔を、名前を聞くたびに、ざわめく胸の鼓動を止める術は無かった。
それなのに。
捨てようと思った恋心が、向こうから降ってきた。
信じられない現実に、拓海は自分の頬を抓った。
「…藤原?」
「…ゆめ…じゃないんですよね…」
「え?」
「…いたい…ゆめ…じゃないんですか、これ…」
「藤原…」
「…こんな…ゆめみたいなこと…おれ…信じられない…ずっと…ずっと…おれ…あきらめなくちゃって…」
ボロボロと泣き出した拓海の肩を、涼介の腕がそっと包み込んだ。
「…夢じゃない。本当だ。俺は藤原拓海が好きだ」
ぎゅっとその腕に抱きしめられ、彼の体温に包まれる。頬に感じる彼の上質そうなシャツの布地。拓海には縁のない上品なコロンの香り。拓海は目のまえの身体に、自分の腕を巻きつけて同じように抱きしめ返した。
胸に頬を摺り寄せ、そして秘めた想いを解き放った。
「…おれ…ずっと…涼介さんのこと…すき…」
フッ、と拓海が大好きなあの顔が、艶やかな色を含んだ笑みを零す。そしてそっと顔が近付いて、唇に熱い熱が伝わった。
「…あ…」
「…拓海…」
耳元に、脳髄からとろけさせるほどの低音の美声が自分の名前を囁く。
それだけで拓海の股間が固くなり、恥ずかしさから拓海は涼介の腕の中で身じろぎをした。
「ダメだ。離さない」
涼介は含み笑い、そして己の股間を擦り付けるように押し付けてきた。
びくり、と拓海の身体が震えた。
「…りょ…すけさん…?」
涼介の股間も固くなっていた。布越しに、あつい熱が伝わりそうなほどの高ぶりが、拓海の腰に当てられる。
「…さっきからこんなのだ。お前がそばにいるってだけでな」
車だけの関係の時には、見せたことも無いような淫蕩な笑い。だが拓海だって同じだ。目が潤み、その先の行為を期待して、摺り寄せた腰を、促すように自分から動かした。
「…期待してる?」
「………」
俯く拓海。だが真っ赤に染まった耳と、恥じらいながらも動く腰がその答えを如実に語っていた。
「…期待には答えないとな…」
ペロリと、涼介が拓海の赤く染まった耳を舐めた。
そして器用な指先が腰の辺りから拓海のシャツに忍び込み、固く尖り始めた乳首を弄った。
「…身体…ハチロクに預けて…そう、いい子だ…」
乳首を摘まれた瞬間に、倒れそうになった拓海の身体を、涼介はゆっくりと促しハチロクのボンネットに乗せる。
そしてシャツをめくり、露になった拓海の白い胸の上のピンク色に輝く二つの果実に、わざと舌先を覗かせながら舐めた。
舌で、丁寧に舐め転がし、たまに吸い、そして噛んだ。
「…あっ、や…涼介さん…そこ…」
「ん?どうして欲しい?言って?」
「…そこだけじゃ…下も触って…」
「下?ここかな?」
涼介の指が、拓海のジーンズのファスナーの上をなぞる。布地の下の、拓海のペニスはもう膨らみはちきれそうになっていた。
「…すごいな、この分じゃ中はベトベトかな?」
「…や、涼介さん」
ジジジ…とゆっくり涼介がファスナーを下ろした。指が、悪戯するように何度もそこを往復し、そして布地の奥に隠された拓海の熱く張り詰めたペニスを取り出した時、涼介はそれをいとおしむような眼差しで見つめ、溜息を吐いた。
「…すごい濡れてる…可愛いな、拓海は」
「やぁん…」
きゅっと握り締められ、腰から甘い痺れが走った。
「…甘そうだ…」
フッ、と涼介の吐息が拓海の高ぶりにかかる。ぶるりと身体を振るわせた瞬間、拓海のペニスが涼介のあの形の良い唇の中に包まれた。
「…やぁ!涼介さんっ!ダメ…」
ぺちゃぺちゃと音をたて、舐め上げられる自分のペニス。
それをしているのは、あの涼介で…。
ちゅくちゅくと搾り取られるように吸い上げられ、堪えきれず拓海は涼介の口の中で達した。
ぶるぶると奮え、全てを出し切った拓海の股間から、涼介がやっと顔を離した。わざと拓海に見せるように濡れた唇を赤い舌でなぞる様に舐める。
「…拓海…俺のも…」
涼介が自分のパンツのベルトを外し、ファスナーを下ろして自分のものを取り出した。
それは隆々と上を向き、長く太いそれからはもう先走りの液が零れていた。
ごくり、と拓海の咽喉が鳴った。
ゆっくりと身体を起き上がらせ、涼介と体勢を入れ替えて、彼の股間に顔を寄せる。
筋張ったそれに、舌を寄せ、味わうように舐め上げた。
どくどくと、彼の鼓動を感じる。
「…おいしい?」
彼の指が、彼を舐める拓海の髪の毛を撫でている。
拓海は夢中で舐めていた。子猫がまるでミルクを欲するように。
「咥えて…そう」
言われたとおりに口の中に含む。大きなそれは口に余り、唇が痛かったがそんな事は構わなかった。
「…動かして…そうだ、いい子だ」
褒められると嬉しくて嬉しくて、無我夢中で舐め続け、彼が限界を迎えるまで舐め続け、口の中に欲しいと思った精液は、咄嗟に腰を引いた彼により、拓海の顔に放出されてしまった。
ベトベトになった拓海の顔に、彼が嬉しそうな顔をする。
顔に付いた白い液体を、涼介は指でなぞって、拓海の唇に運んだ。指ごとそれを拓海は舌で舐め取った。彼の顔も眼差しも、指もそしてこの精液まで、何もかもが拓海にとって媚薬だった。
「…続き、したいけど、さすがにここでは最後までは無理だな…」
涼介の呟きに、拓海は残念そうな顔になったのだろう。彼は笑った。
「大丈夫。場所を変えるだけだから。…最後まで…して欲しい?」
彼の指が、自分の尻の狭間をなぞる。
男同士で、どう繋がるか拓海は彼を好きになった時点で調べて知った。
あの唇で味わった彼の高ぶりが自分に突き立てられる…それだけで拓海はイきそうだ。
「…ほしい…涼介さんの…」
「…いい子だ」
彼の車に乗せられ、近場のホテルまで走り、部屋に入った途端、服をむしり取られるように脱がされた。
そして己も全裸になり、意外と着やせするその逞しい裸身を晒した。
あまりにも彼と劣る自分の裸に、気後れし身を隠す拓海に、涼介は意地の悪い笑顔で微笑み、彼の四肢を抑えて全てをさらけ出させた。
「…綺麗だ…」
うっとりと自分を見つめ、そう呟く彼の顔や声に嘘は無く、拓海は歓喜から再度涙を流し、力を抜いて彼の前に全てを預けた。
足を抱え上げられ、尻の狭間を舐められ、指で頭がおかしくなるぐらいに弄られ、そして彼の高ぶりが入ってきた瞬間に、拓海はイった。
「…早すぎだ…拓海…お仕置きだな」
掠れた、快感に艶めく彼の声と表情。その言葉通りに、拓海はその後、彼に乱暴に腰を揺らされ、あまりの激しさに何度も嬌声を挙げ、涙を流した。
一晩で何回イったのか、もう数え切れないほどの情交を交わし、起き上がることもままならない拓海を嬉しそうに風呂に入れ、裸のままで食事をさせ、そして自分の膝の上に乗せたまま涼介が言った。
「…幸せだ」
拓海だって、あの時同じ気持ちだった。
だけど今は……。
「…敵が子供の俺だなんて…適うワケないじゃん…」
自分はもう二十歳。
涼介が子供が趣味だとは思っていないが、あの子が誕生してからの彼の目を見ると、拓海はいつも不安になった。
涼介の目が、もう自分よりも目新しいあの子に向かっている…。
そう察せられたから。
元から、自分はあの人の気まぐれから相手をされたようなものだと思っていた。
甘い言葉は何度も言われたが、それを本気にするほど単純にはなれなかった。
物慣れない、男の自分を、今は気に入ってもらっているが、この先はどうか?いつかきっと別の人にいってしまう。だって…あの人は頭も良いし、格好良いし、それにお金持ちだし、大きな病院の長男だし…。
理由を挙げると切りはない。
いつか別れが来るとは思っていた。
だけど、こんなカタチで、それもこんなに早くだなんて思わなかった。
「…涼介さんの…馬鹿…」
でも本当に馬鹿なのは、覚悟をしていたはずなのに、未練がましくこうやってメソメソ泣いている自分だ。
『拓海!』
自分を呼ぶあの声はもう聞けない。
自分を甘く蕩けさせる、時折意地悪に動く指も、固い胸も、爽やかなグリーンノートのコロンの香りも何もかも、もう拓海のものではない。
嫌いになりたい。
そうしたらもっと楽になれるかな?
零れ落ちる涙を、拓海は乱暴に拭い、走り去った。