ぴよ






妄想SS



 啓介は寝起きには牛乳を飲むことにしている。
 それはもう小学校からの習慣で、二十歳を過ぎた現在でも何となく続けていた。今では起きてすぐにこれを飲まないと気分が落ち着かない。
 朝方まで峠を攻め、昼過ぎに遅々と起きた啓介は、いつものようにキッチンに向かい、冷蔵庫の牛乳パックを取り出し、コップを使わずそのまま口に付ける。
「啓介さん、行儀悪いですよ!ちゃんと座って、コップで飲んで下さい!」
 そんな啓介に、厳しく叱責する声がする。
 リビングにいた拓海だ。
「…うっせぇなぁ。いいじゃねぇか。起きたばかりなんだよ」
「起きたばかりって、もう昼はとっくに過ぎてますよ。それに、そんな行儀の悪いことはしないで下さい。ぴよが真似するじゃないですか!」
 言われ、チラリと視線をやれば、拓海の隣にはぴよの姿がある。
 …そういや、昨日、藤原と出かけるって言ってたな…どうりで起きた時ものたりないと思ったぜ。
 いつもは傍らにいて、自分の脇で蹲りながら眠る存在が無かったことに、啓介は自分の寝覚めの悪さの理由を思い出す。
「けーすけ、おはよう!見て、新しいふく〜」
 ニコニコと小さな啓介の恋人は、ご機嫌で啓介に向かって服を見せびらかす。二人の足元には、よく見れば服の入っていたのだろうロゴの入った袋や箱の姿が見える。
「お?何だ、ぴよ。またお袋に新しい服を買ってもらったのか?」
「…ううん?ちがう。しらないおねえさん」
 …ブフゥ…!!
 その言葉に、啓介は口に含んでいた牛乳を噴出した。
「うわっ、啓介さん、汚い!」
「けーすけ、大丈夫?はい、タオル」
 ゴホゴホと咽ながら啓介はぴよからタオルを受け取り、それで口を無造作に拭う。
 そしてうっすら涙目のままでぴよを見つめ、そして問い詰める。
「…し、知らないお姉さんって、どういう事だ?!」
 その質問に答えたのは、ぴよではなく拓海だった。
「違いますよ。知らない人じゃないです。…啓介さんは知ってるかな?あの碓氷の沙雪さんと真子さんです」
「碓氷って…あのシルエイティか?」
「そうです。今日ぴよと出かけたら沙雪さんたちに会って、そしたらぴよを気に入ったみたいで、服を買ってくれたんです」
「ちがうよ〜。たくみがね、自分じゃかわいいのは着たくないから、おれに着せてやってくれって紹介したの」
「……お前、自分の身代わりにぴよを紹介したな…」
「…しょ、しょうがないじゃないですか!あの人たち、俺にゴスロリとか着せようとするんですよ?!イヤっすよ、俺。それに、いいじゃないですか、ぴよは可愛いし、似合ってるんだから!」
「…た、確かに……」
 目の前のぴよは確かに可愛いとしか表現できない。酒が入っている時に、こんなのが横にいたら、理性も何もかもかなぐり捨てて襲う自信が啓介にはある。
「ほんと?!けーすけ、おれ、かわいい??」
 小首をかしげながら、クルリと回転しながら自分を見つめる愛らしい姿に、啓介も笑顔になる。
「ああ。すっげぇ可愛い。俺の自慢の恋人」
「けーすけ、大好き〜!」
 ぴょん、と飛んで啓介の胸に飛び込んでくる小さくまだ細い体を受け止める。腕の中にぎゅっと抱きしめて、額をコツンと突き合せた。
「…可愛いけど、あんま知らないヤツからモノ貰うなよ?お袋とかは仕方ないけど、他のヤツはダメ。俺が嫉妬するから」
「うん、分かった。じゃ、今度けーすけが服選んでね?」
「…う〜ん、でも俺の好みだと、イマイチお前には合わねぇんだよな…」
「ダメなの。けーすけがおれに選んでくれなきゃ意味がないの!」
「は?何で?」
「恋人が服を贈るのは、それを脱がせたいからだって。おれ、けーすけに早く服ぬがされたいもん」
「…お前、それ誰言った?」
「アニキ〜」
 …やっぱり。
「その通りだ、ぴよ。それが男の心理というやつなのだよ。そして勿論、この俺も」
「アニキ!?」
「涼介さん?」
 ぽん、と拓海の肩を叩きながら登場した涼介。だがその手の中にはイヤな予感のする紙袋がたくさん抱えている。
「…涼介さん…それ、もしかして…」
「ああ、拓海に似合うと思ってね。プレゼントだ」
「…って、そのロゴ、ゴスロリのブランドじゃないですか!イヤですよ?!」
「大丈夫だ。安心しろ。俺もちゃんと着るから」
「…えっ?涼介さんもですか?」
「ああ。一緒にお揃いで着よう。見たくないか?俺のゴスロリ」
「………見たいかも…」
 …俺は見たくねぇぞ。こっそり思う啓介。
「フフフ…そしてその後は、お前の手で脱がせてくれよ」
「りょ、涼介さん!」
「フフフ、照れるなよ。じゃ、早速着替えてこようか」
「……はい」
 仲良く、腰に手を回しながら体を寄せ合ってリビングを出て行く二人の姿をじっと見つめるぴよと啓介。
 だが不意に、涼介たちを見ていたぴよの目が、じっと自分を見つめていることに啓介は気付いた。
 その縋るような視線の意味。
 理解しながら啓介は答えた。
「…ぴよ…俺は絶対にゴスロリは着ねぇ」
 ちぇ、と拗ねる恋人よりも、啓介は自分のプライドを取った。
 そして思う。
 …俺だけは絶対アニキみてぇにはならねぇ。
 だが、十分にゴスロリ姿の少年を愛でる姿は涼介たちの仲間入りをしていることに、まだ啓介は気付かない。
「けーすけぇ、だっこ」
「はいはい。お前は本当に可愛いなぁ。う〜ん…」
 やに下がった顔で、ぴよの頬ずりをする姿は、傍目から見たら、紛れも無く変態であることにも…。




2006.2.28

こんなヘッポコ御礼で申し訳ないです、ぴよ様。
それにしてもこの話の啓介は、書けば書くほど変態度が増してるなぁ…。目指せ、アニキ!
それと啓介の寝起きの愛飲が牛乳ってのは、噴出すこと前提で。今見返すと、あまり意味なかったかも。
そしてアニキのゴスロリ…みたいような見たくないような…。
あ、でもアニキの全身ヴィヴィアンとか見たいかも。マジゲイっぽくなるんだろうな〜。
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